見出し画像

黄金ウサギはハイエンドナンバーの夢を見るか?:PowerColor Hellhound AMD Radeon RX 7900 GRE 16GB GDDR6

全世界16億人のご注文はうさぎの皆様こんにちは。ネタに出しておいてナンですが、私はアニメも原作もさっぱり知らんのです。可愛い女の子がワチャワチャしてるくらいしか知識がありません。アニメじゃなくて現実で可愛い女の子とワチャワチャしたい人生でした。香月です。

さて、今回は唐突にRadeon RX 7900GRE。どうしてこうなったかというと、TwitterとかXとかのアレでプレゼントキャンペーンに当選したのです。いつもbotよろしくリポストしまくってるので、いざDMで「当選しました」と連絡が来ると、まず最初にアカウントが正規のものか確認するくらいには疑心暗鬼になるものです。ちゃんと正規のPowerColorアカウントからの連絡だったので、改めてイヤッホゥイして諸々の手続きを完了、無事に手元に到着したのでした。

そんなわけで、せっかくの機材だしネタにしないわけには行かないと思いたち、今回の記事につながることになりました。


もともとは地域限定のリリースだった「Golden Rabbit Edition(GRE)」

ナンバーとしてはハイエンドの7900系

Radeon系は「RX+4桁数字+無印・XT・XTX」の組み合わせでラインナップが展開されており、「GRE」とつく製品は「ワールドワイド」としては非常に少数です。というのも、このGRE版は中国をはじめ一部地域の限定で展開されていた製品で、「Golden Rabbit Edition」を略したものです。中国ではウサギは縁起が良いとされているようで、その流れで「金色ウサギ」という名前がつけられたようなのですが、これが突如ワールドワイドで展開。どうやらWQHD解像度のゲームプレイ環境にぶつけたようで、これはGeForceでいう4070あたりのライン。Radeonでの上位モデルとなる7900XT、および同XTXに関しては、AMDとしては4Kゲーミング向けとなっており、元々は7800XTをWQHD向けとしてリリースしていたのですが、ベンチマークの数字的にGeForce4070や同Tiにぶつけるには少し役不足……という判断があったのか、結果的に上位モデルとなる7900GREに対抗馬を切り替えた、というそんな感じの出自です。

WQHD向けながら、全体的には7900系譲りのスペック、メモリと動作クロックは弱いか

AMD公式より、Radeon7000番台の比較

おおよそ7900XTと7800XTの間に入るスペックとなっていますが、すべてが7800XTより上位という事では無く、VRAMは7800XTと同一、ゲームクロックは7900GREのほうが低クロック(7800XT比で約12%減)となっています。また一覧にはありませんが、VRAMの帯域幅でも7800XTが上回っており(GREで18Gbps、7800XTで19.5Gbps)、単純な中間モデルとは呼べないスペックになっています。他のスペック周りに関しては全体的にGREが25%程度上回っているので、メモリ周りと実効クロック以外はとりあえず上位モデルと呼べる内容ではあります。一覧に載っているRX7000シリーズはGREを除いてすべて2000MHzを超えるクロックで動作するとされており、なぜGREだけが低クロックでの動作になったのかは今ひとつピンと来ません。

7900XT・7900GRE・7800XTの主要スペック比較

なお、上位モデルとなる7900XTと比較すると、全体的に5%程度の違いとなっており、またGREで使われているGPUチップレットが7900XT、同XTXで使われているのと同じ「Navi 31」ベースである事からも、基本的には7900系の末弟といった扱いになっています。その為、演算ユニット系の数字は7900系としてガッチリ積んである状態。クロック・メモリ速度以外ではしっかりと7800XTよりも上位、7900系からメモリ周りを7800XTに寄せたという点では位置づけも妥当な数値に見えます。

PowerColor製RX7800XTとの比較。メモリ速度は誤植のようで、正確には7900GREでは18Gbps

一方で今回の製品であるPowerColorの「Hellhound AMD Radeon RX 7900 GRE 16GB GDDR6」VBIOSレベルでオーバークロックされた製品となっており、OCモードでのゲームクロックは2013MHz(7800XT比で約10%減)、ブーストクロックは2520MHz(同・約7%減)となっており、GPUクロックはOCモードでも7800XTモデルより低くなっています。PCIeバスのバージョンはいずれも4.0。メモリバス幅(メモリー速度)はどうやら誤植らしく、手元でGPU-Zにて確認した所では18Gbpsでした。こちらは定格どおり。

そんな感じで、何かと位置づけ的に「ここ!」と指差せるようなスペックでは無いチグハグさもあって、最初は「これってどう扱えば……」と悩んだりしたものでした。強いて言うならばミドルハイクラス、といった所でしょうか。中の上あたりの感じ。

ちなみに本製品と同等のHellhound系に関して、電源ユニット(PSU)への要求は7900GRE・7800XT・7900XTが750Wとなっており、OCモデルだけに電源要求は高め。そうは言っても7900XTXのOCモデルでPCIe8ピン3発使うと400W以上消費、要求PSUは1000W以上である事を考えると、かなりの低消費電力です。ハイエンド帯としては扱いやすい製品である事は間違いないでしょう。

全体的なサイズも比較的コンパクト、2.5スロットで装着可能

コンパクトサイズで扱いやすい

製品外観もざっくり見ていきますが、今回のPowerColor製、HellhoundとRedDevilの2製品が出ていますが、いずれも2.5スロットサイズで、ボード長はHellhoundで330mmを下回るコンパクトサイズ。ミドルハイとはいえ、RX7900系としては扱いやすいサイズになっています。

ASUS TUF RadeonRX7900XTXとの比較
厚みはあからさまに薄め

比較として使用中のASUS TUF RadeonRX7900XTXを並べてみましたが、ボード長、厚みのいずれもかなり小型。3連ファンではあるのですが、中央部のファンが少し小さめに組み込まれています。かなりケースを選ぶサイズだったRX7900XTXと比較すれば、色んな意味で比較的「使いやすい」ボードである事は間違いないでしょう。出力ポートはDP*3、HDMI*1の計4ポート。PCIe電源は8Pin2発でこちらも省スペース化。同じ7900系、同じチップレット構成としては全体的に扱いは楽。

ファンのLEDは青・紫の固定とライティングオフ。基板上のスイッチで切り替え

ファン部分にLEDが入っていますが、PC上のユーティリティではなく基板上、バックプレート側のスイッチで切り替えるタイプ。色は青と紫、消灯の3パターンとシンプルになっています。尚、これを含めてPC上でのユーティリティは無く、前述の通りOCはVBIOSレベルで設定されているので、OCモードかサイレントモードのいずれか、こちらも基板上のスイッチで切り替えです。色が固定という事もあり、他のファンと色合わせをすると統一感が出る一方、その調整がちょっと大変といえば大変かもしれません。

他のファンのLEDを調整して色を合わせた所

ちなみにパッケージ内容物ですが、箱を開けるとVGAのみが入っており、ペーパーやアクセサリといったものは一切ありませんでした。PCIe端子のカバーもついていない状態で、最初は開封品かな? と疑ったりもしたのですが、一度開封したような跡は見られなかった為、一般流通でも同様と思われます。強いて言えばVGAホルダーが入っていたら、と思う所ではありますが、ボード自体が比較的コンパクトな事もあるので、価格に反映できているのであればこのくらいあっさりした感じでも良いのでしょう。とにもかくにも「ベンダーオリジナルのユーティリティ」が不要な事で、PC側に余計なリソースを食わせる事もないので、本製品の様々な面での「シンプルさ」は悪くないように思います。

ベンチマークスコアは順当、実ゲーム環境でもそれなりに安定

ベンチマークスコアはミドルハイクラス

さて、実際の使用環境でのチェックですが、まずはベンチマークから。3DMarkのSteel NomadでRX7900XTX・RX7900GRE・RX6700XTの3つを比較したものですが、順当にスコアが上がっている状態です。6700XTは一世代前の製品ですが、およそ倍近くスコアが伸びている点も踏まえると、このくらいのグレードから乗り換え・アップデートを行うにはちょうどよい製品といえそうです。一方で7900XTXとの比較で約40%減となっており、クロックの差異、および有効化されているチップレットの差異が反映された値になっています。これに関してもやはり妥当な値になっており、製品を選ぶ際に迷うことはなさそう。4Kで思いっきりゲームを楽しみたいならXTXやXT、解像度をワンサイズ落としたWQHD環境ならば7900GREといった具合。こうなってしまうと7800XTの立場が危うい感じもあります。今回は7800XT製品を用意出来なかった為、実際の性能差はハードウェア仕様から推測する事になるものの、VRAMをガッチリ使うようなゲームタイトルだと、GREは若干不利になりそうな感じもあります。

EA WRC。ゲームエンジンはUnreal Engine4
Assetto Corsa Competizione。こちらも同じくUE4

実際のゲームプレイでの差に関して、これまでの6700XTでは両者とも平均70fps、最大100fps、最小では瞬間的に60fpsを切るような場面がありましたが、7900GREではいずれも平均的に100fpsで描画。気になったのはいわゆる「プチフリ」なのですが、これはEA WRCでのみ発生が確認され、かつ以前の環境でも似たようなものなので、ゲーム側の問題かもしれません。

画面解像度はDFHD(32:9)の為、縦はFHD相当ですが、横幅が4Kクラスと同じになっています。このくらいのサイズだと、負荷としてはWQHDに似たような所もあるのか、基本的には100fps台に乗ったままなのでプレイ上の問題はありません。通常の16:9より横幅が広い分、路肩のオブジェクト(EA WRC)や他車(ACC)の映り込みは多くなりますが、そこでのドロップは発生しないか、しても70fpsは超えたところがドロップポイントになっているので、ディスプレイのリフレッシュレートが60Hzなら問題なし、120Hzクラスだと少し気になるかな、といった具合で、UE4のように少し前のゲームエンジンが使われたゲームタイトルでは充分な働きをしてくれています。

これに加えて、AMDドライバ側での新技術であるFluidMotionFrames2(AFMF2)などの機能も使用可能ですが、レースシムやFPSのような「1フレームが重要」なゲームタイトルでは使わないことが推奨される事もあるので、純粋なGPUパワーが必要な場面は少なくありません。中間フレームを無理やり挟むと遅延の原因になる事もあって、私の環境ではAFMFは使用しておらず、RSRのような超解像機能のみ使用しています。DFHD、3840*1080pxのディスプレイに対して、3200*900pxの解像度をゲーム側で指定、それをドライバが1080pまで引き伸ばして補完しているのですが、こちらに関しては遅延等も無く、低解像度の軽量さと高解像度化のグラフィック品質の双方が良い仕事をしてくれます。先に出したfps周りの計測もこの設定を有効にした状態。

シンプルで使いやすいミドルハイ、VRAM要求が低いならGREを選ぶ価値はアリ

シンプルな製品内容ながらパワーはしっかり

さて、そんなわけで当初は手を出す予定は無かったGRE、キャンペーンに当選した事もあって色々と見てきました。「もしレースシムPCも7000番代にするなら7900XTかなぁ」とはぼんやり考えていたのですが、使用用途から見れば本製品でも充分に対応出来る範囲で、7900のナンバーは伊達ではない印象でした。元々地域限定の製品だった事もあり、メモリ周りや動作クロックが控えめな印象こそあるものの、チップレット自体は上位と同じで一部を無効化したような構成で、それなりに余力はありそうな製品です。

今回はテストから除外したのですが、生成AIの運用や、VRAMをあるだけ食うようなゲームタイトル(VRChatとか)の使用時には厳しい可能性はありそうなものの、純粋にゲーム向けとして、かつWQHDという解像度での使用であれば、しっかりターゲット内に収まっているので、本製品の得意な範囲ではあります。それだけに、せめてメモリ周りは7800XTと同等だったらなぁというのは正直な感想。GPUクロックはOC済みで、さらにある程度盛って使用することも出来る部分なので、そちらのクロックが低いのは運用で改善できる点ですが、メモリ周りばかりはどうにもならず。そういう点では「あと一歩」が欲しかった構成です。

ちなみにPowerColor製品はおそらく初めて使用したのですが、質実剛健を地で行く内容になっており、他メーカーが専用ユーティリティを使ってOC設定を打ち込んでいる所、VBIOSのみでOCを完結させており、別途ユーティリティが必要ないという点は、PCリソースの削減という意味で良いものになっています。

LEDの点灯パターンが少ない事については、いわゆる「魅せる系PC」ではネガティブになりそうではありますが、上に乗せた通り「完全に単色で統一する」ような設定、あるいは2色か3色といった少ない色数で彩ってあげると、本製品の綺麗なLED照明が活きてくるかなといった感じ。この点は実使用における性能に違いがでる部分ではないので、完全に好みの問題となります。私としては繰り返しになりますが「ユーティリティ常駐無し」はかなり好みにあっていた、といった様子でした。

もうかれこれ新型の「RX8000シリーズ」の発表がありそうだ、という時期ではありますが、近年は「どうしても最新のVGAが必要」という場面が以前に比べ少し減っている感じもあるので、例えば現時点でRX5000系、あるいはRX6000系のミドルクラスを使用中のユーザはいっそ7900GREを含めた乗り換えを検討しても良いかもしれません。強いて言えば、生成AI等でガンガンVGAを回すような使い方に関しては最新・フラッグシップボードくらいしか選択肢が無いので、「ミドルハイクラス」という本製品にどこまで期待するか、次第になりそうです。

価格としては、大雑把にRX7800XTが7~10万、RX7900GREが10~15万あたりで推移しているので、プラス3~5万にどこまで価値を見出すか、という感じもします。WQHDクラスで充分にゲームプレイを楽しむには、価格帯としてはGeForceでも似たようなラインになるので、Radeon派としては選択肢が広がったぶん、予算をどこまで突っ込めるか、吟味する必要はあるでしょう。

私はRX5700XT、RX6700XTと乗り継いで、メインマシンでは余力が欲しくてRX7900XTXに激突しましたが、ゲームPCで使っていた6700XTからの乗り換えには見事に成功したような感想です。なんとも良いタイミングでキャンペーンに当選したようで、もう私には運が残されていないのではないか、と戦々恐々としている所です。