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個人が請け負う「つよつよPC作ります・売ります」を徹底的にオススメしない理由

※本掲載記事は2019年10月28日時点のものです。

 Twitterでも散々垂れ流している内容を今更なんで記事にするのかなぁと我ながら不思議に思いつつ、今日もまたタイトルのようなTweetが流れてきていい加減面倒になってきたのでまとめる意味で書き起こしました。これからPCを購入しようと検討している方は、一度目を通して頂ければと思います。

 さて、今回の話題はまさにタイトルにある通りなのですが、 #VRChat や #eSports などの普及・発展に伴って、「今使っているPCだと重たくて満足にプレイ出来ないんですよねぇ」と言った方へ、割と最初の段階で提示される「あの人(もしくは自分)、ハイスペックPCの組み立て代行やってるって言ってたから、聞いてみたらどう?」という謎の流れについて。昔はおろか、私がとあるeSports志向のゲームをプレイしていた頃からポツポツと見え始めて、VRChatを始めた頃にはあちこちからのテンヤワンヤ。実際にそういった方へ依頼する人も少なくないと言います。

 まず結論から言ってしまうと、「やめておきなさい」としかもう。オンラインでしか知らない、もしくはオフ会等で数回程度しか会ったことの無い個人相手に、場合によって10万以上のお金を支払って組み立てを依頼するくらいなら、ショップBTO(ドスパラ・ツクモ・パソコン工房・アーク等)やメーカーBTO(DELL・HP・Lenovo・場合により国内メーカー含む)へプラス2万出して購入したほうが、結局は圧倒的に安上がりです。どういう事なのかを、可能な限り「PCは欲しいけど正直あまり詳しくない」という方にご理解頂けるように解説していきます。

その前に:私のPC事情

 その前に……「そもそもお前さんはそんな記事を書けるほどお偉いさんなのかね?」という方もいらっしゃると思うので、すごくザックリですが私の経験知識や環境についてご紹介します。そもそも、本blogでも複数回PCネタの記事を公開し、それを読んで頂ければお分かり頂けると思うのですが、私は重度のPCヲタク、特にハードウェア寄りのヲタクです。「マザーボード(M/B)上のスロットの並びが綺麗」とか「M.2スロットが絶望的に酷い位置関係」とか「グラフィックボード(VGA)挿したらこの端子使えませんよね?」とか、パーツどころか基板上の各部品の配置レベルで宇宙語(とよく言われます)を話したりするクラスにはヲタクです。

 実際の所、単純にPC使用歴だけで言えば既に25年以上、最初にPCを自作してから20年以上になりますが、パーツを揃えきれないノートPCはともかく、デスクトップPCは自宅設置用のものに関しては全部自作です。メーカー製のBTOすら導入した事はありません。一方、勤務先で情報機器関連の管理を行っていた際には、量販店等で市販されているPC(いわゆる「吊るしのPC」)から選定したり、商社や代理店を経由して一定のスペックを指定した上で予算と構成の調整を行って10台単位でドンと導入、全部セットアップを行った上で使用状況の管理からトラブル対処まで一通り行う、という業務も行っています。使用する部門やユーザによって必要なスペックや、そもそもの形態(デスクトップなのか、ノートなのか)が違う事もよくある話なので、最終的に導入したPC類が全部スペックがバラバラ、なんて事もこれまたよくある話で、全部頭に叩き込んだ上でトラブル等があれば即時対処、その場対処が難しい場合は予備機を出して一時交換し、業務を停止させずに販売・製造元へ連絡の上で保証対応の依頼や、場合によりパーツ単位で発注して受け取り修理、までの事は一通り行っていました。

 一方、業務外でも先述したゲームの集まり(Discordのサーバだったり)の中でトラブル対処や新規PCの購入検討を打診されたことも多数あり、都度予算とスペックの希望を聞いた上で最も希望に近い製品を提示し、大体の場合そうして紹介した方の使用PCのスペックは頭に入っているので、トラブル対処の際にもそのままオンラインで解決させたりしていました。

 というわけで、ザックリこれだけ書いておけば、この記事が書ける程度には知識と経験がある事はご理解頂けたかと思います。というわけで本題。

オススメしない理由1(初級編):PCはどこで誰が作っていようが「絶対トラブる」

 はい、いきなり「みんなそう言うね」というネタから行きます。PCというのはトラブルの塊です。機械として(ハードウェア)のトラブルも、その上で動くWindowsやゲームとして(ソフトウェア)のトラブルも、また最近では常識的に使われているインターネットにまつわる(ネットワーク)トラブルも、ついでに言えばそれらが理由になる対人的トラブルも含め、何か一つでも不具合・トラブルが出るとあちこちに飛び火します。ましてやeSportsのような「プロライセンスがかかっている、賞金がかかっている」ような世界では、モロに強烈な実害が出ます。これはPC本体に限らず、キーボードやマウス、ディスプレイ、スピーカーやヘッドセット等、「周辺機器」と呼ばれる製品でも同様で、「周辺機器がトラブったせいでPC本体にも飛び火した」という本気で笑えない状況にも陥る事もしばしばあります。

 さて、誰かに、もしくはどこかのメーカーに組み立てを依頼する、もしくは既製品のPCを購入するにも誰かに相談する、という段階の方の多くは、ご自身がそのPCや遊びたいゲーム等の動作条件表などに詳しくない、という方であると思います。「自分で全部パーツも選べるし組み立ても出来るけど、面倒だし時間も無いから誰かに任せる」的な方はここでは除外します。そんな皆様の所でいきなりPCがトラブって動かなくなった、もしくは変な画面が出た、そんな状況になった時、即時対処で改善・回復出来るでしょうか? 誰かに聞こうにもPCが動かないのでスマートフォンなどを使うしか無く、身近ですぐに飛んできてくれる相手がいない場合にはオンラインか電話でのサポート依頼になるかと思いますが、まずはここで差が出ます。要するに「PC本体のお値段にサポート料金が含まれているか、どの程度のサポート体制か」というお話。

 仮に、あるゲーム(VRでもそれ以外でも)で動作確証が取れていると謳われた、全く同一の構成(なんなら単純数値だけでなく、パーツメーカーから型番まで全部一緒)で個人組み立て15万、ショップBTO18万くらい、と仮定しましょう。たかが3万、されど3万。個人組み立てのほうがお安いので、そちらに流れたい気持ちはよーくわかります。ここでAさんは個人から、BさんはショップBTOで購入しました。キーボードやマウス、ディスプレイからヘッドセットまでお揃いの仲良しさんです。流石に同棲はやりすぎなので、住んでる場所は別々にしておきましょう。

 そんな時、大変残念な事に、二人にトラブルが発生します。二人とも偶然に同じ現象で、ゲームは起動するもののオンライン対戦で画面がガクガクするとか、まぁそんな感じのトラブルだとしましょう。さらに残念な事に、二人ともPCの構造や仕組みはサッパリわかりません。何なら家庭用ゲーム機の延長線くらいにしか考えが行き着かない程度です。さてどうしましょう。

 二人とも、とりあえずネットには繋がっています。幸いにしてDiscordのようなオンライン上での集まりに参加しています。二人ともその集まりの中で詳しそうな人にヘルプを要請しつつ、結局解決出来ませんでした。ここで二人の運命が別れます。

 AさんはPC組み立てをしてくれた個人の販売者に連絡を取ってみました。時間帯は……一通り試行錯誤して日が明けた、くらいの時間でしょうか。幸いにして、メールはすぐ返ってきましたが、平日ど真ん中で販売者も仕事がある為、詳細は夕刻以降との事でした。解決できるかどうかも不明確なまま、悶々としてAさんはお仕事に出かけます。残業が無いことを祈りましょう。

 一方、BさんはBTO販売していたショップのサポートページを見に行っていました。プレイしているゲームで動作確証が取れているだけあって、ゲーム別のトラブルシューティングが用意されていましたが、どうにもしっくり来ません。そんなこんなでBさんも出勤の時間になり、お仕事へ。残業が無いことを祈りましょう。

 二人が帰宅した後、Aさんはメールをチェックしましたが、お相手がまだお仕事中なのか、お返事がありませんでした。やむなく待ち続けます。一方、Bさんは「もう無理! こんなん文字読んでも何書いてるか分からない!」となり、サポートセンターへ電話する事にしました。半分怒りに変わりつつあるこの気持をなんとかなだめつつ、「ネット対戦でガクガクになる」という内容を担当者へ伝え、聞き返された事にひとつずつ答えていきます。最終的に「ゲームの設定を初期状態へリセットする為に、ゲーム自体を一度アンインストールし、再度インストールしなおす」と提示されました。メモしておくべきIDなどをメモして言われたとおり再インストールした所、アッサリ治ってしまいました。おめでとう、Bさん。原因は接続先サーバをアジアサーバからアメリカサーバに変更していた事。それが恐らく可能性としてもっとも高い原因であると教えてもらった上で、21時頃に一番にぎやかになるオンラインゲームの対戦プレイに復帰し、思う存分遊びまくるのでした。

 一方Aさん、お相手が残念ながら残業だった為、20時過ぎにようやく状況確認のメールが来ました。来たのは良いのですが、「これとこれとこれとこれとこれとこれとこれをチェックして教えてくれ、もしくは画像を送ってくれ」と言われ、何を言っているのかわからないのでそれっぽい部分を確認しつつ返信に「確認の仕方を教えてくれ」と付け加えて投げ返し、メールを待ちます。15分くらいで返ってきたメールでようやく確認方法がわかり、必死の思いで確認をしてなんとか全部返答しました。15分後改めて返答があり、ゲームは立ち上がっているしガクガクとはいえ接続も出来ている、ネット回線に異常があるのではないか、Youtubeは見られるか? 他のゲームは動くか? PCに繋いでいる機器は何があるか? さぁ、確認の嵐です。そんな事を数回メールでやりとりしている間に、パタッと連絡が来なくなりました。相手は寝たのでしょうか。なんやかんやでこの時点で23時くらい、とかそんな感じでしょう。

 返事が来なくなったAさん、Discordの様子を泣きながら見に行くと、とても楽しそうにゲームの話題で話しながら時々遊びに行っているBさんの姿が目に付きました。治ったの? と聞いてみると、「ゲーム入れ直したら治った。サポートの人が言うには、サーバ変えたのが原因だったかもしれないってさ」とアッサリ。Bさんと一緒に対戦する為にサーバを同じく変えていたAさんはサーバ設定を元に戻すと、ほとんど問題ないゲームプレイが出来る状態にまで回復しました。一応ゲームを再インストールすると完全に治りました。日付が変わりました。

 その時間差、実に3時間。「たった3時間じゃん、しかもたまたま販売者の当たりが悪かっただけじゃん」と思われそうですが、これ、かなりの確率で頻発します。特に海外発のゲームで日本人プレイヤーが少ないタイトルの場合、意図的に遅くなることを覚悟して海外サーバへ接続する場合も少なくないのですが、そういった部分を確認できるか否かで解決までの時間が大きく変わります。そんな内容をTwitterにでもポロッと書いてみてください。RTがRTを呼び、Aさんが購入した個人販売者の評判はどんどん落ち、終いには「余計なこと書かないでくれ、お前が設定いじったのが悪いんだろうが」とDMが飛んできました。因縁をつけられた結果、「保証期間1年」と言われていたはずが、半年後にうんともすんとも言わなくなった時には「有償で修理する」と言われてしまう始末。15万円で買った魔法の箱は、半年で鉄の塊になってしまい、オークションあたりで「ジャンク」として捨て値で売り払って、結局Bさんと同じショップで買い直しましたとさ。

 ……さて、かなり大げさな表現で書きましたが、実際に発生しうる、もしくは発生した事例を見た上での例です。ショップに限らず「企業」が「商品」として販売しているPCであれば、一定の動作検証基準があり、逆に起こりうるトラブルのリストもそれなりに蓄積があります。むしろそれがあるからこそ、「動作検証済みゲームタイトル」を謳って販売が出来ます。サポートセンターにしても商売の一環、商品のひとつなので、相手の練度や知識レベルに合わせて必要な確認方法を指示出来ます。ゲームプレイをする時間帯が夜間に偏りがちな点を考慮して、夜間帯まで電話窓口を開けていたり、24時間体制のショップやメーカーもあります。もちろん販売契約に付帯しているサポートも「契約」なので、1年なら1年しっかり面倒見てくれます。一定範囲での改造(メモリ増設等)なら保証範囲内で対応してくれるケースもあります。

 こうした点から考えておさらいしていくと、「まずトラブルは絶対いつか起きる」「そのトラブルに適切な対処をしないと更にトラブルが広がる」「あちこちに飛び火したトラブルの結果、改善までに時間・データ・労力・場合により追加料金を消費・喪失する」という事を考えると、最初の3万円の差が大きく意味を持ってきます。個人で組み立て代行をを謳って販売している場合、「あくまで組み立て代行だけだから、初期状態で動けば他のトラブルは知らん」というパターンすらあります。Bさん、良かったですね。Aさん、ご愁傷さまです。
(おまけ:私、元サポートセンターの教育担当です)

オススメしない理由2(中級編):安いには理由がある

 その1では「保証とトラブル対応」について記しました。いわゆる「初心者・初級者」の最初の鬼門とも言える部分である為、結構長くなってしまいましたが重要な項目として最初に書いておきました。続いて少し知識がある方向けの地雷となる部分について。

 あなたは数年前からPCゲームを通じて色々なPC系サイトの記事を読み、パーツの意味や特徴、バリエーションの見分け方などがある程度わかるようになってきました。ただ、どうしても自分で組むのはちょっと怖い。そうだ! 代行してもらおう!

 京都へ行こう的なノリで組み立て代行を探していると、ショップだけでなく個人でもやっている様子。しかもお安い! 去年あたりの上級パーツで組んでくれればゲームは充分動く! よし依頼! レッツゴー!

 ちょっとお待ち下さい。パーツの名前を知っていて、スペックも知っているあなたですが、組み立てをしている相手がそのパーツを「どこから」「どういう流通経路で」入手しているか、確認できるでしょうか? 身も蓋もなく言ってしまうと、中古品使ってるから安いんじゃないですか?

 よくある個人組み立て代行や、オークションやフリマサイトなどでは、「ストレージ(SSDやHDD)」「ケース」あたりは新品と書かれています。それすら書いていない場合は完全に論外として、それではM/Bは? メモリは? グラフィックボードは? そして一番見落としがちな「電源ユニット」は? さらに見落としがちな「Windowsのライセンス」は?

 ストレージやケース、ついでに言えば冷却ファンの類はここ数年を見る限り非常に安価で、新品を入れ直してもメーカーも何も気にしなければ1万円にもなりません。下手をすると5000円程度の小容量SSD一本というケースもあります。ケースに至っては3000円くらいから新品が手に入り、冷却ファン類は3000円あれば5本は手に入ります。

 逆に、相対的……というより単体で見てもそこそこの価格になるM/BやCPU、そして一番の鬼門であるグラフィックボードあたりは、相応のゲームがプレイ出来るPCと前提して選択すると相応のお値段になります。第一のお値段削りポイントです。ここでバッサリ削ることが出来るのは特にグラフィックボードで、一時期流行った「仮想通貨マイニング」で24時間フル稼働を半年~1年続けたボードが中古市場でダブついています。相応のスペックを持っていながら安いのは、「稼働時間が長すぎてファンがヘタっている」「基板上の電源部分などが妙な音を出す(コイル鳴き)」といったパターン。分かる人が少しチェックをすれば「あ、これダメっぽい」とすぐわかるレベルまでヘタっていても、組み立て済みでケースの中に入ってしまうと、フタを開かない限り(仮に開いても)そう簡単にわかる部分ではありません。

 そして「電源ユニット」。大体どっかに隠れて配置されるパーツなので軽視されがちですが、「これが壊れると全パーツ引きずって壊れる」と思ってもらって構いません。一方、自作しまくりな自作erの部屋には、アップデートに伴って使わなくなった電源ユニットが結構な数転がっている事があり、「余り物の有効活用」とばかりにそれを突っ込めてくるケースもあります。オークションやフリマサイトであれば写真で事前に確認できる場合もありますが、文字とスペックシートだけの個人組み立て代行では難しい部分、もしくは「突っ込まれない限り言わない」という悪質なケースも見られます。仮に「電源:新品」となっていても、ピンキリな電源ユニットの中から「ギリギリそのPCが動く範囲で一番安いヤツ」を選んだ結果、少し負荷をかけるとポンポンPCが落ちるという不安定な環境にもなりえます。100Vの電流を最初に受け取る部分である以上、電気事故の危険性が最も高い部分であり、非常に極端に言えば火災の原因にもなりうる部分です。

 最後に「Windowsのライセンス」。こちらは単体販売でWindows10のPro版だとすると28380円(Microsoft公式)、「DSP版」と呼ばれるパーツセット版だとおよそ18000円(価格.com確認)で販売されています。つまるところ、本来Windowsを付属させようとすると、それだけで2万円は上乗せになるのです。
 一方、組み立て代行での「全体価格(PC1台分の価格)」からパーツ単位で逆算していった所、どうやってもOS代で2万円も残らない場合があります。かといってゼロ円でもなく、5000~1万円くらいという微妙なライン。ここにもカラクリがあり、オークションサイト等では1円からライセンスの入手が可能です。もちろん正規版で、ちゃんと認証も通ります。でも1円って。1円で入手したOS代として、5000~1万円上乗せしているとなると穏やかではありません。

 この「1円ライセンス」ですが、企業などが数十台単位で大量にPCを購入した後、買い替え等で古くなったPCを売却、もしくは引き取りに出したものから、「OSだけ」を引き抜いて販売されているものである事がほとんどです。本来このようなタイプのライセンスは「特定のPCと組み合わせてのみ使用可能」という条件がつき、上記DSP版の「特定のパーツと組み合わせてのみ使用可能」よりも条件がキツいものなのですが、パーツアップデートが容易なPC事情の関係から、Microsoft側としてもライセンス認証がかなり緩い為に、最終的には「事前に前のPCからライセンスを外しておけば通る」という状態にあります。
 ライセンス違反云々はもちろんですが、この体制がいつまで続くのかわからず、ある日突然Windowsが使えなくなったという笑えない現象も起こりうるのです。その意味では、この手段で価格を落としているタイプの組み立て代行者は2重の意味で悪質であると言わざるをえないでしょう。

 ……というわけで、このように「購入者にわかりにくい、あるいは全くわからない状態で削るだけ削る」事が出来る部分というのは、実は結構な数あるのです。あくまでシミュレーションではありますが、「VRが充分に動かせて、ある程度重たいゲームもプレイ出来る」というPCを、「悪意むき出し」で組んだ場合、以下のようになりました(価格はショップチェック時の一点物を含めた参考価格)。

・CPU:AMD RyZen 7 1700:13000円(「8コア/16スレッド!」を謳えるCPU)
・CPUクーラー:CPU付属
・M/B:適当にB350チップセットが載っているもの:5000円
・メモリ:8GB2枚(計16GB)でも新品8000円
・HDD:自分のPCをSSDに置き換えて余ってたヤツ
・グラフィックボード:箱なし中古RadeonRX580:13000円
・電源:部屋に転がっている、もしくは現在自分で使用中の600Wくらい
・ケース:新品4000円でファン3つ付き
・OS:1円
・梱包:ケースが入っていた箱そのまんま・送料ご負担ください
・計:43001円

 適当にザックリ出しただけでしたが、まさか5万切るとは思いませんでした。ちなみに電源は新品でも600Wだと5000円程度から買える事があるので、少し良心的に電源を新品にしても5万を切ります。これが原価です。なお、ほぼ同スペック(流石に新品で揃えましたが)のPCを私自身も自分で組んで使用し、今はサブや部品取りに降ろしましたが、このスペックでもVRChatはおろか、よほどでない限り、フルHD解像度であれば多少重量級のゲームでも普通に遊べます。世代的には現時点から2世代~3世代前の構成です。

 さて、こんな感じのスペックで某フリマサイトで販売されているものを見てみた所、5万でも「激安」で売られていました。おおよそ6~10万円が相場のようです(詳細の概要ページへのリンクは避けます。特定されるのも面倒なので)。

 以前、Twitterでボソッと「オークションやらフリマサイト見ると粗大ゴミが売っている」と呟いたことがあったのですが、「具体的なパーツの状態を表示しないまま(中古・新品等)に販売している」場合、上記のように「悪意むき出し」で販売すると、「1台売れたら2台組める」が割と冗談抜きに実現してしまうのです。ポケットを叩いたらビスケットがとかいうレベルじゃありません。ちなみにサポート無しと明記している出品もあり、もう完全にダメなヤツです。

 さて、ここまでが二つ目の理由。「悪意を持っている」か、ヘタをすると「それが代行を謳う人間としてやっちゃダメな事」だと理解していない個人代行者の場合、こんな状態にもなりうるのです。そして、3つ目に少し掠る感じで次へ進みます。

オススメしない理由3(上級編):そのパーツ、もう手に入りませんよ

 その2では、「個人が組み立て代行をするのであれば、いくらでもダンピング出来る」もしくは「激安で組んでしれっと高値で売れてしまう」という事を記しました。具体的なパーツ構成も出しましたが、中身は当然酷い有様で、ショップBTOでこんな状態で出そうものならTwitterも社屋も炎上するレベルです。最後に3つ目として、「パーツの入手性」について。

 ショップBTOではよほど特別モデルでない限り、同一型番の製品で同じカスタマイズオーダーを出せば、同じパーツが使用される、もしくは同じグレードの別パーツであっても動作上問題のない事を確認した上で販売・サポートを行います。これにはいくつかの理由があるのですが、BTOメーカーが一定数同じパーツをまとめて買い上げ、製品向け、サポート向けとして在庫してある事が理由の一つでもあります。その為、現在使用中のPCでパーツトラブルが発生した際、修理となった場合でも同一パーツ、もしくは仕様上トラブルの発生しない(「相性問題」の無い)パーツが使用されます。その他、ノートPCでのBTOに多いパターンとしては、「ODM生産」と呼ばれるものがあり、PC外装にショップ名やブランド名のエンブレム等が入っているものの、実際には「製造を請け負うメーカー」で一式を製造し、マーキングだけ、あるいは外観の微妙な変化だけを変えて販売するというスタイルです。実はこれに近い事は国内メーカー製PCでも行われており、代表的な所でいうと富士通やNECのPCの一部、特にノートPCは中国Lenovoでの製造を行っています(ACアダプタ挿し込み部が共通パーツ化されたあたりから)。
 こうした形態の場合は、ODMを請け負ったメーカーが大量にパーツを保持しており、一定の期間は同一のパーツ構成で販売を行える前提で各販売者に提供しています。この為、前述の通り「パーツトラブルが出ても極端な環境変化を伴わずに修理が可能」という保証を持てるのです。

 一方、個人組み立て代行の場合はどうでしょうか? 基本的にはサンプルとなるメニューを提示して、「この部分を変えたい」「このメーカーのものにしてほしい」という具体的な注文から、「このゲームが動くスペックが欲しい」といった大雑把な部分を聞いてから部品を調達し、組み立てて引き渡し、となるのが、まぁ一般的なものでしょう。前述した「企業が商品として販売する」時のように、同一パーツを一度に10本も100本もストックして販売をするのであれば、それはもはや「個人の組み立て代行」の域を超えています。販売者としての法的手続き(消費税など)も必要になってくるでしょう。

 そんなわけで、一般的には都度パーツを調達して組み立て、となるのでしょうが(前述の悪意むき出しは別として)、そのような形で組み立て、その環境で安定して正常動作をする事も確認して引き渡し、保証期間1年だったとします。その購入時期にもよりますが、何らかの形でパーツ単位でトラブルが発生した場合、組み立て代行者に保証を求めても、同じパーツが既に流通していない(販売終了)ケースも出てきます。そうなると代替となる同スペック系の別パーツでの修理、場合によってはパーツ提供で自前で組み替えてもらう、となるのでしょうが、その環境が元々の環境と異なる以上、安定動作を保証出来る要素が無くなります。場合によりドライバ、OS含めシステムの再インストールが必要となり、データ損失の可能性も大きくなります。

 「データ損失」という点については、ショップBTOやメーカーBTOでも充分に起こりうる事であり、それゆえ「バックアップは確実に取っておけ」と言われる所以でもあるのですが、「安定動作するかどうか」は完全に「賭け」の世界になります。

 一度でもPCを自作したり、既存PCのパーツ交換を行った事がある方であればお分かり頂けるかと思いますが、新規パーツを一本入れ替えた、あるいは追加した時に、システムを安定して動作させるまで様々な設定やチェックリストがあります。ショップBTOであればそれらの点は事前に用意され、手順も明確になった上でのパーツ交換が行えるでしょうが、個人ともなればそうは行きません。十人十色状態で組みまくって売りまくったPCのそれぞれの安定性を全部1時間以内に確保させる方法があるのなら、むしろ教えて欲しいくらいです。メモリの相性でPCが立ち上がらない、なんて事になったら目も当てられません。

 このように、ショップやメーカーのBTOであれば「保証期間内であれば相応に対応出来る」のに対し、個人組み立て代行の場合はそれを実現すると利益どころか損失すら出る可能性もあるわけで、誰が他人の為にお金を払ってPCを安定させてあげるのでしょう。そんな天使様、私のところにも来てほしいです。

 ちなみに「組み立て代行」という形であれば、ショップ自身でBTOとは別にサービスとして行っている会社が増えてきました。店員や担当の方と相談しながら好きなパーツを選定して一式そろえ、組み立ては「PCパーツの取り扱いのプロ」たるショップ店員、もしくは担当者が行う、というもので、パーツ代+αで受けられるようです。この場合、不具合発生時の保証はパーツ単位、という所が多いようで、それぞれのパーツメーカーの保証内容に準じた対応となるようです。

結論:自分で組めないなら素直にショップかメーカーに相談しましょう

 「だってショップとかメーカーって利益ばっか重視して無茶苦茶なプライス出してくるじゃん」と思われそうですが(よくそう言われましたが)、実際にショップBTOやメーカーBTOを見ると、一昔前はともかく、現在はとても良心的な価格と構成で出してきています。また、「必ずしも最上位モデルが必要ではない」というのが昨今のPC事情でもある為、ショップやメーカーでのBTOでは「スペックはそこそこだが、動作確認ゲームタイトルが多岐にわたる」というシリーズも存在しています。安定動作も確認され、冷却面も考慮され、内部配線も綺麗に整え、OSも有無を選ぶことが出来る、という「ベースモデル」を用意した上で、そこから一定の範囲でカスタマイズメニューを提供するスタイルがほとんどで、「このモデルで全部上位にカスタマイズするなら、ワンランク上のベースモデルで部分カスタムしたほうが安価」というパターンもあります。ご自身でPCを組み立てる事が出来るほど知識が無く、他人に聞きながら「とにかく安いの」を求めて個人の組み立て代行に依頼すると、上述したようなリスクがドカンと載ってきます。それならば、おとなしく「動作確認も取れているしサポートもちゃんとついているショップ・メーカーのBTOで選ぶ」という選択肢を取っておくのが、私はベストだと思っています。趣味の延長で「組み立てるの好きだし」みたいなよくわからない人に組み立ててもらって、それがちゃんと動けば良いですが、いざ何かあった時にだーれもなーんにも対応出来ません。何でもかんでも安く上げたい気持ちはわからなくもないですが、万単位の費用が発生するPC購入で雑な判断をすると、後々ひどい目に合うものです。

 最終的な判断は購入する、お金を出す皆さんの自己責任に委ねますが、私は「個人の組み立て代行」に依頼する事は全くもってオススメ出来ない、と明記しておきます。仮に私に「PC組んで」と頼まれても、必要条件を聞いた上でBTOメニューを提示するだけです。だって、そんな責任持てませんもの。というか持つ必要を感じませんもの。

おまけ:「知ってる君」は無駄な知識で「知らない人」を混乱させるな

 もう大分前になりますが、私がTwitterでこの記事に類似した内容でブチギレしていた事がありました。たぶん今でもどこかにログは残っていると思います。VRChatの某Discordサーバで「つよつよPC」を買いに行く、と言いつつパーツ構成の相談をしていた様子を見て、他人事ながらカチンと来たからだったわけなのですが。
(ちなみにこの「つよつよPC」という呼び方、やめたほうが良いと思うんですよ……「何に対して」「どこが」「どう強い」のかまるでわかりゃしません)

 自作とBTOの狭間で迷っていた様子だったと記憶していますが、やれ「グラフィックボードはこのメーカーはここが強いけどここが弱い、こっちのメーカーだとそこは強いけど価格が微妙」だの、やれ「電源はプラチナとかブロンズとかいっぱいある。でも大事」だの、「同じ役割のパーツ一つに対して細々とズラズラ喋り続ける」状態が続き、当の本人が全くついていけなくなった所で、「混乱してるみたいだからまとめるけど」みたいな流れに。

 混乱させたのはアンタたちですよ。

 そこに首を突っ込んで巻き込まれるのもイヤだったので見ないフリをしつつ流れを見ていて、最終的には「ショップ店員に条件を提示して相談する」とかで収まっていた気がするのですが、「最初からそれを薦めなさいよ」としか言いようがないんです。「自分が知識を持っていて、相手が教えを乞うているのであれば、相手にわかるように話しなさい」という事です。TwitterでPCパーツメーカーの広報担当者が「うちはここ(基板上のパーツ単位等)にこだわりがあるから強い」と話しているのを見て、そういう似たような流れに持っていたのかもしれませんが、パーツメーカーの話している相手は「そういう内容がわかる相手」がメインで、もっとラインの低い部分での相談を受けた場合(「Intel系とAMD系どっちが良いの?」的な)には、ちゃんとその人にわかるように解説しています。だからこそ広報担当を任されているのでしょうが、そういった「説明の使い分け」が出来て初めて他人にアドバイスが出来たり、自社製品のプロモーションが出来るのでしょう。「メーカー担当者が小難しい内容ばかりTweetばかりしているからそれで良いんだ」は、まさしく「木を見て森を見ず」の例で、大変な大間違いです。余計な事をベラベラ言って混乱させる前に、相手が分かるように話す事を考えましょうね。PCを買いたい本人だってワクワクしながら相談しているはずなのに、却って不安を煽って混乱させてどうするんですか、っていう話でした。