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逆噴射小説大賞2023ピックアップ

※前置きは去年と95%同じ※

今年はアッチもソッチもアレコレありすぎてタイム&パワーがピコンピコン赤点滅して……皆勤賞の逆噴射小説大賞に参加できないかも……みんながドンパチやってる荒野の決闘場……そのヨコを通り過ぎるときにワシは……マブシイ彼/彼女たちを見て小さく溜息をつき……などと覚悟していましたが、なんやかんや2作品、投稿できました。

●1作目:悪魔の風の軌跡
●2作目:
贖命のダイヤモンド

なんでこの内容にした、とか、こういうこと意識した、苦労した、みたいなワシのハナシは横っちょに置いといて……他の人の作品で、いいな、これ好きだなぁ、ゴイスーだなぁ、と強く記憶にのこったものを勝手にピックアップしたいと思います。
今年は前編・後編に分けず、まとめて30作品。

※注)
これは大賞予想云々ではありません。
個人的に「好きだな」と思ったものや、「こういう物語を発想できるっていいなぁすげぇなあ」と憧れたもの、「文章がスルスルと頭に入ってきて滑らかに絵が浮かびまくるフデチカラがSUTEKI」など、ワシの嗜好と志向にブスリと刺さったものを選んで(さらに絞り込んで絞り込みまくって)おりますんで、これ最終選考行きじゃね……? みたいなワザマエ作品がピックアップから漏れていたりもします。



01.おかみ様の遣わすもの

特殊な舞台設定について、日常会話や内心の描写でスララっとさりげなく表現してあり、スルスルと理解しながら読み進められる工夫にazitarouさんのWAZAを感じる。
そんでもって日常生活をスイスイと進んでいくと突然訪れるドキドキさせるよドキンちゃんな展開がワシの胸をワンパンチし、シロ狩りでニコッとしちゃうお隣の中村さんというヤバめのキャラ(これが文化保護区レベルDの大人たちの当たり前っぽいところがヤバい)の登場でツーパンチ、これってどういうことなの、どうなっちゃうの、という絶妙なところで800字(文字通りジャスト800字)が終わってしまう。
中村さんの狩りの成果にかーちゃんはどういう反応をするのだろうか。続きが読みたい。

02.良い子の灯

3年B組初日0時ブッコミ先生たちの作品のなかで最も(こ、これは……!)となった作品。
開幕・謎めいた川柳で(む?)とひきつけたあとは、「逆噴射800字で勝負してやるぜ!」「逆噴射では会話やアクションで話を前に進めねば!」みたいな前のめり感がいい意味でまったくない……地に足ついた……落ち着きのある……ハイレベルな文章力で表現される私の語りが……ワシの脳に入り込み……ちょいちょいさらなる(む?)的な疑問も植え付けられ……最後は灰島氏の一言でゾゾっとする。
なんだかこう、面白そうだなーと買ってきたミステリ小説の1ページ目を読んでいるようなキモチ。
SUGOI。

03.夜山踏み

つのさんの作品は毎年独特のAJIWAIがあって面白く、勝手にピックアップする機会が多いんだけども、本作は歴代つのさん作品のなかでも一番唸りまくり、3年B組初日0時ブッコミ先生たちの作品のなかで(こ、これも……!)となった。
丁寧に研ぎ澄まされた描写と台詞によって語られる ”普通ではない狩り” の背景と恐ろしさ、闇、物の怪の狡猾さ、ウカツ=死の緊張感……ハッと気づけばワシも夜山踏みの一員として山に入っていたこの没入感。moromoro丁寧に描きつつも、800字のなかでしっかりと展開が進んでいるあたりもさすがであります。

04.秘密結社ゲーム

開幕140文字くらいでさっそく&容赦なくはじまる秘密結社ゲーム、このアッサリ感がすごく好き。
そして300文字くらいでいきなり吸い込まれるお母さん。このスピード感もすごく好き。
アッサリ&ハイスピードだけかというとそうではなく、チョー必要最小限の描写でその場の状況をうまく伝えているあたりゴイスーだったりする。

>どうやら中から開けることは出来ないようだ。
>ぼくは一気に血の気が引き、焦って扉をこじ開けようとするが、ビクともしない。
>そうしている内に謎の液で満たされ、お母さんへ無数の管が刺さる。

とか。
加えて、ちょっとコーフンしちゃう”ぼく”というキャラの見せ方も上手かったり。
ワシは『ザ・フライ』が苦手というかトラウマで、ソレ系の話には近寄らないようにしているんだけども、この作品のスゴイ勢いに半ば巻き込み事故のように転がされて一気に読み進め、チーンと出てきた(元)お母さんのあまりにド直球のセリフがツボで深夜に声を出して笑ってしまったので完敗です。

05.埼玉湾に沈む

埼玉湾とは……というワシの疑問は2行目でしれっといい感じに解消されつつ、ベテランであることが伺える釣り師・灰原がどんな獲物を釣り上げるのかと読み進めると……まったく予想外のアレが釣れる(しかもアレなのに食いついている!?)展開に、ワシは軽く失禁した。
あまりにも突飛なアレだもんで一発ネタっぽくなるのかなと思って読み進めるとぜんぜんそうはならず、手に汗握る瞬間的な命の奪い合いはガッチリ描かれ、この世界で生きる灰原とアレのREAL、そして作者の作品に対するREALが伝わってくる。
発想力と、その摩訶不思議をREALアドベンチャーに仕上げるゴイスーさ……脱帽です。

06.一方そのころ、残りの1/2は

最初から最後までずっと面白い。
面白すぎて読み終わったあとタイトルをもう一度見てさらにコーフンし、勢い余って某Sげんじゃさんに「榎本1/2いいっすね…」と唐突CHATTOしてしまったほど。
(このノリと勢い、いいな~。ワシもこういうの書こうっと)と狙って筆を握りしめてもすぐに無理だと気づいて筆を置いて不貞寝するレベルのセンス。逆噴射小説大賞はこういう逸品に出会えるからついつい全作読んでしまう……。

07.行動を決め、賽を振れ

むかしの日本を舞台にした作品、ワシは書ける気がしないのでビシッと書いている人をソンケーするのです。本作はそのワザに加えて、あの歴史的なIKUSAが第三者の賽によってアレコレされていた? というあたり、ボードゲームやTRPGにも似た要素×歴史ってことでめちゃんこワクワクキニナル感じで好きです。逆噴射っぽい急ぎ足な文ではなく、ラストまで地の文で丁寧に進む読み味もネタとのバランスが良くて好き。
しかし喜兵衛、この遊戯の味を知ってしまったら……どうなるんだろうか。続きがキニナル。

08.1999年、夏、悪魔退治

あのときのときさんは、少年~青年(ギリ手前くらい)たちの描き方が本当にうまい(個人的に大好き)。さりげない台詞や地の文がKIRARIと光りまくり、ワシはいつもいい物を読んだ気持ちでいっぱいになる。
本作で特に好きなのは、

>健ちゃんは7月に空から大王が来ただけであり、これから地の底にいる悪魔たちを復活させると熱っぽく語った。

こういうところ。
なんかこう、健ちゃんの性格がよくわかるし、あるあるいるいる(いた)よねこういう子(ワシもそんな感じでした)、みたいな。
祭りの手品ショーとか、DQ・FFではなくメガテンでのところとか、読者のワシも子供のころに戻って本当に「私」の目線で物語の中にいるような気分になる。
去年の作品『石川ダイナマイト』も大好き。

09.謝肉祭のモンド -Mondo Carnevale-

スロカルさんらしさあふれる作品。今作で選ばれた銃は……東独の香り。息を殺してステンバイする狙撃手と無線相手の、言葉のやり取り(駆け引き)。やっぱこういうシチュエーション最高ですよね……。スコープ越しに目の当たりする残虐な現場、トラウマのフラッシュバック、なんとかステンバイしようと思ってもステンバイできず……静かなシーンから一転、感情も現場も爆発的に動き出すシーンの緩急にシビれました。

10.トマーラ

逆噴射の「おかしな話は登場人物と作者が真顔でキメないと実際すべる」みたいな教えは過去参加者の大勢が知っているものの、「じゃあその危うさをぶっ飛ばすようなガンギメ作品を書けますかアナタ?」と問われると正直かなり難しく、成功した作品も少ないように思う。
いくらワシがパ・ソ・コ・ンの前に座り白目を剝きながら真顔で書くぞ書くぞとキーを叩いても、アウトプットされる文章が真顔になるとは限らない。
読者に「これはマジだ」と思わせるには、作者の脳が「これはマジだ」とマジで思い込むことと、マジを伝えるための冷静さ……巧みな工夫、表現力やセンスが必要になってくる(とワシは勝手に考えている)。
『トマーラ』はどうか。もう冒頭から超絶センスのグーパンチがキマっている。その後も主人公の一挙手一投足がぜんぶキマっている。読者と一部分シンクロする少女の「うわぁ……(2回)」の使いかたもうまい。
ワシもトマーラにシゲキックスされて(1本だけでいいと思っていたけど2本目書くかな、いっちょ真顔キメでいくか!)などと一瞬ウンウン考えてみたけど無理でした。

11.シエラの帰還点

飛行機という閉鎖された状況で事件が起きたり飛行機ごと時空を超えたりする作品はときどきあるけども、本作では”常に乗客は十二人(しかも減ったら補充される!)という異常で強力な条件やコブシの序列まで加わっていて、さらにWAKU-WAKUした。
十二人ならワシの脳味噌も追いつく感じで、
こんなキャラが出てくるかも……
こんなこと考える奴が出てきそう……
こんな衝突が起きそう……
飛行機ならではのこんな部分は十二人でどうしてるんだろう……
とあれこれ想像妄想が楽しくなる。
舞台は飛行機なんだし、乗客はもっと大勢いてワチャワチャのほうが~と思う人もいそうだけど、個人的にはシュッとしている本作に飛行機ならではの要素が加わっていく形のほうが好きだな……と思った次第であります。

12.土蔵は下へと旅を紡ぐ

Twitter(X)での感想行為とかぶるけども、大事なことなのでもう一度書きます。復路鵜さんの「現代×ファンタジー」、いつも掛け算の塩梅や作中のバランス感覚が絶妙で、大好物です。
安心&安定感アリアリの文章力に今回はラップばりの心地よいリズム感も加わり、主人公とエルフをしのぐ魅惑のじじいソードもいて、みんなでダンジョン(土蔵ってのもまたイイ)探索。これはもう800文字の先も面白くなることが確定しました。

13.遺物混入

逆噴射小説ババア大賞2023 大賞候補作品。
ケツガン見ホーミングシリアルキラーの犯罪行為をあっさり上書きする謎のババア(しかも2回登場)。
「眠る木の下…目を開ける前にぺろぺろしたんか?」
この台詞一点でババア大賞ノミネートです。


14.75年ぶりの挑戦者《チャレンジャー》

開幕から浴びせられるへるまさん節が心地よく、主人公のハングマンがどんな男かもバチコンと伝わってきて、その個性が彼の仕事につながっていくという自然な流れ。妻の一言もハングマンの性格と夫婦の関係を端的に表現していて、上手いな……と唸る。最後のハレーでマジカーとなることまで含め、へるまさん作品の魅力がギッシリ詰まった逸品。あとタイトルも好き。

15.俺と老博士のDead or alive

サイコカワイイ南博士というキャラクターだけで白飯どんぶり10杯くらいいける。
冷静にゾンビを倒し、冷静に名前を訂正する ”俺” というキャラとの対比も面白いし、淡々とした俺の視点の文章力には無駄がなく不足なく読みやすさX-GUN・テンポもX-GUNのダボーX-GUNになっておりゴイスー。二人の物語をもっと読みたいです。

16.長腕の剣 新当不動流事始

全編シブカッコいい。尋常ではない ”場” を描くと、読者にその場のイメージを伝えるのが難しかったりすると思うんだけども、本作の冒頭で示される場の光景はススッと頭に浮かんでくる。ありきたりな単語(地獄とか餓鬼とか……)で胡麻化さず、短い描写ながらヤベー場だということを一発で伝えてくるワザマエぶり。お不動さまがいきなりウオーって登場して剣でバッサバッサするのではなく、静かに直立した姿で登場→縄→剣という一連の動作の重みや凄まじさについて気合を入れて描写しているあたりもゴイスーで、ワシも主人公と一緒に見とれてしまった。この主人公は何者なのか。お不動さまはなぜ技を授けたのか。気になる要素も多く、ワシも左腕に力を籠めてみたりした。

17.お一つどうぞの続き

ばあさんの握り飯にワシの心は奪われ、その後もゆっくりなようではやいようで気づけば先へ先へと読んでしまう独特なリズム感と語り口の文章に、ワシの読書行為は止まらなくなっていた。
もうどうにもならん ”おれ” は銃を掘り起こしてヤブレカブレ行為を考えたり、自死を想像したりするけれども、そこまで意思を固めているようにも思えないし、

>おれに残った最後のおひとつなのだ。いくらだってあるものだが、そいつを大安売りして歩くつもりはない。最後に残ったものだから、大事にだいじに分けると決めたのだ。

こう思える ”おれ” は、このあとどうするのだろうか……想像すると、続きが読みたくて仕方がない。

18.久子

静かで焦りの感じられないはじまりが、ホラー/ミステリ小説の完成原稿の1枚目に目を通しているような感覚になる。動作としては屋敷の中を会話しながらちょっと歩いているだけなんだけど、中年女性の返答のひとつひとつが普通じゃない。主人公が何気なく会話のキャッチボールをしようかと球を投げると、返ってくる球は必ず血や煤でベットリ汚れているような……。白川家のヤバミ、当主が少女、犯人はもうわかっている、SATSUGAIされかけた主人公の記憶喪失……いろんな要素がこのあとどう絡み合っていくのか、腰を据えて続きを読みたくなる作品。

19.陰膳

逆噴射小説ババア大賞2023 大賞候補最有力作品。
まずは去年『会長の犬』をピックアップしたときとほぼ同じコメントになりますが、この御方の文章センスは、いつもスゴイ。絵も好み。場面の描写も上手くて「いったいどういう状況なのか?」と戸惑うことがぜんぜんない。しずしずと行われるおカツばあさんのモーニング・ROUTINEを通じて、おカツさんの人柄が少しずつ伝わってくる。
外に出てみれば、朝の陽ざし……鳥の囀り……涼しい風……田舎のあぜ道……。
鳥居にペコリ。
田舎ののどかな風景が目に浮かぶ。畑仕事かな?
足腰はしっかりしていそうなイメージ。がんばって!
ワシはホッコリした。
でもタイトルがちょっと不穏だな……いやもしかしてこれは死んだ誰かに向けてではなくどこかにいる家族の無事を祈るおカツさんのYASASIIを表しているとか……きっとそうだ。
ワシはホッコリしなおした。
一行あいた。
次の一文と、直後のおカツさんの(これもモーニング・ROUTINEですがなにか?)といわんばかりの平然とした対応にワシは脱糞した。
……続きをお願いします!
※今年はババアパルプが少なめなのでさみしい(というワシも書いていないので人様のことは言えない)。書いてくださったことに感謝したい。

20.サナと骨男と偽ゲルググ

ストーリーの運び(後半の事件性)も気になるところですが、本作の特に好きなところは ”12歳のサナちゃんはどういう子なのか” という部分の描き方。800字のうち500文字くらい、担任のオナガ先生が割って入るまで、物惜しみせずにサナちゃんの人物描写に使っている……これは逆噴射的には不利かもしれないけれど、余計だとはまったく感じなかった。サナちゃんという子を知ってもらうための工夫がたっぷり(しかもチョー上手い)で、最初にこれがあるからこそ、このあとに続く事件に向けてワシもぐっと感情移入できたので、すごい冒頭だな……いいな……と、脱の帽です。

21.真夜中の檻

夜の山道のど真ん中に、護送車が横転している。
主人公は車を降りて、護送車に近づいていく……。
(ちょっと待ってほしい。ワシなら絶対に車から降りずに即バックしますご注意くださいでサヨナラする。なんでわざわざ近づくんだこの主人公は! 前進しなきゃいけない理由があってもINOCHI-ATTEKOSOだろう! ドントさんいったい何考えてるの!)
食いしばったワシの奥歯が砕けた。

しかし「まあ落ち着けよ」と、作品はワシに語り掛けた。

テーザー銃を向けられても「あぁ」と冷静な主人公。
(こ、こいつ……所さんのただものではないバリにただものではないな? だから余裕こいて護送車に近づくんだな?)
ワシは少し安心した。
しかし、護送車に乗っていた青年はもっとヤバかった。
腕をMUKI-MUKIにして護送車を谷に落とす超人です。
(ホレみろ! やっぱり近づかなきゃよかったんよ! ただものではない風の余裕カマしといて相手がもっとヤバくてピンチになってますよ!)
握りしめたワシのスマホも砕けた。

しかし「いいから落ち着けよ」と、作品はワシに語り掛けた。

ムキムキパワーを目の当たりにしても動じない主人公。
(ナンデ? あんた、自分の立場を──)
青年と同じ台詞を思い浮かべていたワシは──
作者の手のひらで転がされていたワシは谷へ落ちて、数秒後にかすかな衝撃音がした。

22.オーバーライト・トレジャー・ランド

逆噴射小説「そんな!」大賞2023 大賞受賞作品。
ラストのあまりに「そんな!」なアレにワシは「そんな!」と声を出してしまった。しかしこの「そんな!」、ラストの一文でDONDEN返しぽいことを書けばいいんでしょ? という簡単な話ではなく、森戸さんの本作のように、冒頭から確かな文章力でしっかりとこの物語の世界に入りこませてから……という前提があるからこそだと思います。
山間にある自然がたっぷりのレジャーランド、ハイ・テクというエッセンス、どこかポンコツ感の漂う主人公、楽しそうな親子……力まずに引き込まれる世界。なんだか楽しそうだな。このまま読み進めたいな。そんなワシ奈落に突き落とすあまりにドイヒーなラストの宣言。ランボーすぎませんか森戸さん! とツッコミたくなる点も含めて好き。ありがとう、いい薬です。

23.路線バス 魔王城行き

プラナリアさんはいつもタノシイの発想力がゴイスーで、ワシには真似できない才能だもんで憧れる。タイトルで既に勝利している気もしつつ読みはじめると、さっそく二段落目からかまされる旅ブロガーみたいな秀文にニヤニヤしてしまう。四天王が普通に乗っているとか、マナー重点の会話とか、全部にニヤニヤしてしまう。通勤にも使われるバス、そんなに時間をかけずに魔王城に着いてしまうのだろうか。このまま色んなバス停を巡って、いろんな客が乗り降りして……をずっと読んでいたい。

24.VS暗黒サメ大名

サメパルプ。ワシはサメが嫌いです。
顔も怖いし、不自由な海中でロックオンされたらお手上げでヤブレカブレの鼻づらパンチを狙うとかで足掻くしかないので、嫌いです。でもサメムービーはけっこう観るのでサメパルプも読みます。
もうヘッダー画像からして顔がチョー怖いんですが……しかもなんか服を着てるし……URASHIMAの竜宮キャッスルみたいな感じなのかな……と読みはじめたら2文目で日本上陸して半島制圧してバビロニア。
(ホッ、ワシ深海とか嫌いだし地上なら人間だってガンガン動けるし、これは大丈夫なサメパルプっぽいな……)
などと思ったワシがバカでした。こいつらは陸上でもめちゃめちゃに強く、未来からきた光線銃の使い手ですらあっさりやられてしまう。ツヨイ! ヨウシャナイ! コワイ! 
これまでに目にしてきたサメパルプのなかでも本作は単にサメをネタにしただけでなく、サメの新境地地上殺傷攻撃、和のテイスト、SF要素、暗殺、いろいろな面白さが絶妙にミックスされているあたりがゴイスーだ……!ということでピックアップ。

25.銀河剣豪星詣

冒頭わずか三行、短く読み心地のよい文章だけで、
・かつて天から刀が降ってきました
・主人公はそれを所持していて、強くて、天にいる者と戦いたいです
・待てど暮らせどしていたらついに天から何者かが降りてきてテンションUP
というセットアップが済んでいる点にまずワザマエを感じる……。
主人公の甲之助、俺より強い奴に会いに行くばりの猛者で、つえぇ奴がきてワクワクすっぞ、こういうキャラは読んでいるこちらもワクワクしてしまう。しかもヤバそうなメタル絡繰三体を前にしても(逃げられなくて、よかった)とかもう強者のホッまででて甲之助さんどんだけ強いのよ、と期待値が上がる。戦闘シーンもテンポよし迫力よしカッコよしでコーフンするし、

>ぎ、ぎ、ぎ。金切り音と共に一時に、刃が狼の鉄肌を捉え、吹き飛ばす。

こういう斬ったときの重い手ごたえなんかの表現も絶妙。
さすが逆噴射小説大賞2021で奨励賞を受賞したツワモノ……!

26.夜を突き抜けろ

逆噴射小説「か、か、かっこよ……!」大賞2023 大賞受賞作品。
逆噴射小説スピード限界突破フルMAX大賞2023 大賞受賞作品。
餅辺さんの作品は毎年の楽しみのひとつなんですが、これはもうとにかく一言一句格好良くて、ノンストップ爆速で、ちょっぴり悲しくて、クールにキマってる感でいうとワシ的には間違いなく今年一番じゃないでしょうか。バリケードを爆発ジャンプで木っ端みじんになりながら突破して肉体再生しながら着地とかもうマッハライダーかよ! とコーフンしまくり。これ小説のあと実写化されないかな……映像作品としてもサイコーの出来栄えになりそう……などと勝手に期待が膨らみまくり。

27.ヒュドラを運ぶ

大事なことなので今年も繰り返しますが、ワシが小説を書く上で(こうあらねば)とHISOKAに目標にしているパルピストのひとりがこの御方です。
そしてワシは知っていました。大塚さんは毎年必ず最終日の夜に2連発する……と。
なので31日の夜も(まだかな、まだかな)とこまめにブラウザリロードを繰り返し、21:28。ついに1作品目が投稿され、ワシは居住まいを正し……冒頭100字くらい読んだところでもう心が締め付けられ……辛いけれど目を背けることはできず……なんとか最後まで読み切った。
すごい800字を読んだ、という満足感もあったけれど、それよりも、800字でこんなに気持ちが疲れて息苦しくなる(物理的に呼吸が苦しいとかではないです)冒頭を生み出せる大塚さんの人間力(去年の作品も凄かった)と、それを文章にする筆力に脱帽の帽の帽帽の帽の帽帽帽くらいに脱帽して頭がズル向けになった。やっぱり大塚さんは凄い。

28.Loki 'n' Roll

寿司を愛する独居老人とヒューマノイドロボット、という組み合わせの時点でもう、ワシ的には色んな妄想が膨らんで楽しすぎる。そしてなによりこのヒューマノイドロボット ”ロキ” がイイ。なんとなくこう、役立たず感が漂うんだけども、そこにおかしみと愛嬌があって、老人もとても大事にしている。中盤からは一気に話が転がりはじめて、じいさんさんざん語っておいて不法滞在なのかよ! しかも36年て! とか、任せてくださいのスモークとか、ラストの金属Sushi Rollの盾ってなんだよとか、弾倉はやはり金属Sushi Rollのやはりってなんだよとか、躊躇いなく入るんかーい! とか、もうイイ意味でツッコミたくなる要素の連発で、読んでいてとても楽しかった。

29.バキラが首都にやってくる

逆噴射2020でダブル大賞という偉業を成し遂げたチャンプ・摩撫さん……今年1作品目『非合法無人傭兵』はまさに摩撫さん流のパルプ満点な感じでゴイスーでしたが、ワシ的には2作品目のこちらをピックアップ。
チョー勝手で一方的な想像ですが、なんかこう、摩撫さんが肩の力を抜いて、楽しくキーを叩いている姿が浮かんでくるような作品で、読んでいるこちらもウキウキワクワク読めて、巨女バキラも可愛いし、ほかの登場人物も味わい深いし、テイストが変わってもさすがの筆力だし、最後はやっぱりちょっと痛々しいけど、なんだかホンワカパッパする……素敵な作品だと思いました。

30.SUGB 因果巡

去年シーフードグルメパルプで逆噴射界を席巻した作者が、今年もやってきた。今年は野球!……ではなくベースボール!……でもなくSUGB(スーパーウルトラグレートベースボール)だ!
800字しか使えないのに2回もSUGB(スーパーウルトラグレートベースボール)を使う大胆さと無茶苦茶な展開にワシの脳は煙を噴き、コ・ロ・バモの身体が発光して球場がいきなり消滅した瞬間にワシの脳は爆発した。
しかしネタの連発だけで終わらないのがこの作品の面白いところ。終盤は一転静かな調子で先の展開の方向性を匂わすシーンが描かれ、消失していたワシの脳も元通りになって続きが読みたくなった。

以上です。

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ジョン久作
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