月1ネトフリ〜『夜明けのすべて』と『地面師たち』
パラサイトネトフリが月に1度だけ運良く繋がるって話を前noteに書いたのだけど。
それは今も続いていて、こないだの3連休、たまたまネトフリが繋がったので『夜明けのすべて』という映画を観た。
PMSの上白石萌とパニック障害の松村北斗が出会って互いを認め合いーの助け合いーのって話なんだけども。
予告で上白石萌が松村北斗の髪の毛を切るシーンがあったから、『花束みたいな恋をした』的な恋愛映画なんかなと思ってたんだけど、そんなことはなかった。
二人が恋愛関係にならない。その距離感がとても心地よかった。
男と女が一緒におったらなんも起こらんわけがないやろみたいな風潮にうんざりしていたので、なんだかとても安心した。この映画を絶賛している人たちも、その点を褒めている人が多かった。
関係性を丁寧に描いているという意味でとてもいい作品だったと思う。
料理でいうなら薬膳料理みたいな作品だった。
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ただぁ!(粗品か)
薬膳料理を食べた反動でめちゃくちゃジャンクなもん食いてえなってのと同じ気分になってしまい、その気分がどうにもおさまらなかったので、そのまま『地面師たち』を観た。
途中でデバイス連携エラーになっては困るので、全話イッキ見した。(連休でよかった)
『地面師たち』は、不動産詐欺を行うグループを描いた作品。
交渉役、法律屋、なりすまし教育係、書類偽造職人といった具合に、それぞれその道のプロが結集して被害100憶を超える壮大な詐欺を仕掛けて実行するまでを描いたクライムエンタメ。
役者も綾野剛、トヨエツ、ピエール瀧、小池栄子、リリーフランキーなどなど錚々たるメンツ。
基本的に悪い奴らが集まって悪いことする作品が大好きなので、面白くないわけがなかった。『夜明けのすべて』のまるで対極にある、これぞ求めていたジャンクなエンタメ。
もう袋麺にソーセージぶち入れたみたいな。
面白いと感じたところはたくさんあったけど、とにかく小池栄子が最高だったってことを1番言いたい。
私は小池栄子が出ている作品は映画『パーマネント野ばら』くらいしか観たことがないんだけど、この作品の最後のシーンで、女優としての小池栄子が好きになった。
今回の『地面師たち』で改めて女優小池栄子の素晴らしさが日本全土に伝わったのではないだろうか。とても嬉しい。
小池栄子が演じるのは、地主になりすます人を選定し教育する、なりすまし教育係のレイコさん。
なりすましを見つけるために熱海の旅館で働くわ、最終的に尼さんにもなるわでとにかく小池栄子の変身っぷりは峰不二子だった。
このドラマ、主演の綾野剛の過去は語られるものの、詐欺仲間の背景はほとんど描かれていない。
小池栄子演じるレイコの過去やプライベートもほとんど語られることがなかったが、熱海でなりすましにふさわしそうな女性を見つけた際に、彼女と親密になるために「生きていれば10歳になる息子がいた」という話をする場面がある。
当然、詐欺を実行するための嘘だと視聴者はわかるのでニヤニヤするシーンなのだが。
最終話、レイコさんの最後の登場シーンで「あの話、もしかしたら嘘じゃないかもしれない…」と思わせる演出がある。
レイコさんは熱海の旅館で出会った幸薄の谷口さんを説得し、なりすまし役を引き受けてもらうことになる。
しかし詐欺実行の前日に谷口さんの息子が病気で亡くなってしまい、谷口さんはなりすまし役を降りることになってしまう。
それで結局レイコさん自身がなりすまし役をやることになり、尼さん姿の小池栄子が拝める大変尊い展開になる。尼さん姿でも美しい小池栄子について語り出すと話が大幅に逸れるので別の機会に。
レイコさんは詐欺計画が無事終わったあと、谷口さんの家のチャイムを鳴らし、顔も合わさずお金だけ置いて帰っている。
谷口さんはなりすまし役をやらなかったのだから、渡す必要はなかったはず。
しかも、これから息子の手術が控えているなら「手術費渡しちゃっても〜〜〜優しいんだから〜!」ですむけど、これもう息子のいなくなった谷口さんに渡しているのよね。
このシーンで「もしかしたら息子がいたという話は本当で、自分と同じ思いをした谷口さんに思うところがあってお金を渡したのか…?」という妄想を膨らませることができる。
『地面師たち』は日本では流行ったものの、海外での評判はそこまで高くないらしい。その理由に「話の数が少なすぎるからでは」という意見があった。
綾野剛以外の詐欺仲間たちの過去やエピソードで、いくらでも話膨らませられるじゃんって。まあ、言いたいことはわかる。
でも私はあえて想像させる、最終話のレイコさんの描き方がめちゃくちゃシビれたのよね。
レイコさんが詐欺の時以外何をしていて、どんな過去があるかとか、ほとんど描かれていないからこそ、こういう想像ができるわけで。
地面師のメンバーたちは、詐欺以外の場での繋がりは全くといっていいほどない。
とはいえ、(トヨエツだけはみんなから恐れられていたが)四人の地面師は互いの仕事へのリスペクトがあったし、シャブ中の北村一輝のことをみんな気にかけていたし、見ていて気持ちのいい関係だった。
特に後半のピエール瀧と小池栄子が憎まれ口を叩き合い、綾野剛がそれをなだめる様は最高だった。
あとあれ。尼ちゃんレイコが重要文化財の前でファインプレーをかまし、こっそりピエール瀧とハイタッチするシーン。
ええでしょすぎるって!!!!!!←
『地面師たち』と『夜明けのすべて』に唯一共通するのは「距離感の心地よさ」なのかもしれない。
描こうと思えばいくらでも描ける地面師メンバーたちの背景をあえて描かなかったことで、視聴者と地面師たちの間にも、ちょうどいい距離感が生まれた。
少なくとも私にはそれが心地よかった。スピンオフなど作られたら、逆に冷めるかもわからない。
そんなことを考えるなどした。
終わり方迷子になってきたので、最後に悪い奴らが集まって悪いことする作品がだいすきな私の、おすすめ悪い奴ら映画を紹介して終わる。
・しとやかな獣(川島雄三監督作品)
・果てしなき欲望(今村昌平監督作品)
・レザボア・ドッグス(タランティーノ監督作品)
・現金に体を張れ(キューブリック監督作品)
↑どれもこれも絶対に面白いぞ〜〜〜 終