子どもの絵、どこを見るべき?どう声をかけたら良い?
橋本善八(よしや)さんは世田谷美術館の学芸員として30年以上の間、多くの美術作品の収集や展覧会の開催に携わった後、副館長に就任。現在は美術館全体の運営を担っておられます。多忙な美術館での仕事に加え、毎週月曜日は大学で博物館学の授業も担当。
そんな橋本さんが審査員として参加する世田谷児童絵画コンクール(主催/伊佐ホームズ株式会社)は、今年で9回目を迎えました。
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子どもの絵は面白い!
「私は大人の絵の審査をすることもあるのですが、子どもの絵を見るのが一番刺激をもらって面白いくらいなのですよ」と橋本さん。
大人が応募するコンクールは、時代背景やテーマなど、審査の基準が複雑で難しい面があるそうです。
「子どもの絵は子どもたちが本当に描きたいものを一生懸命描いてきてくれる。私も純粋に楽しむことができます」と目を細めます。
大人の絵も子どもの絵も同じ
橋本さんは作品を見るとき、“どれだけ描きたいものに執着して描いているか”に着目していると言います。
「夢中になると、クレヨンで塗り込んだり、何度も描き直したり…。そんな頑張った痕跡が見えたら、それだけで十分!上手く描けているかどうかなんかは二の次で、どれだけ一生懸命だったのか?その姿が伝わってきたとき、私は心が動かされ、感動します。その点では、大人の絵も子どもの絵も同じだと思いますね」
1〜2分でいい、子どもの絵をしっかりと見てみよう
一つの作品を仕上げるのには、時間がかかります。それに比べ、鑑賞はそんなに時間がかかるものではありません。
「子育て中の親御さんは毎日お忙しいとは思いますが、短時間でも良いから子どもの絵に向き合ってほしいですね。その気になって見てみると、子どもの頑張った部分や工夫したところがきっと見えてくるはずです」
頑張ったところを見つけて、具体的に褒める。そうすると、子どもも嬉しいだろうし、“あなたのことをちゃんと見ているよ”という姿勢が伝わります。
「もし、不思議に思うところがあれば、これは何を描いたの?どうやって描いたの?と本人に聞いてあげましょう。喜んでたくさん話してくれますよ。表現にまつわることって、向き合ってあげることでしか伸ばす方法はないと思うんです」
子どもの成長過程において、どれだけ大人が本気で向き合ってくれたかはとても重要なこと。小さな積み重ねですが、子どもの作品の鑑賞は親子の関係を深めていくものなのではないでしょうか。
【インタビューを終えて】
橋本さんの子どもの絵に対する審査のコメントを読ませてもらい「どんな賞をもらうより、この文章は嬉しいだろうなぁ」と思ったことから、ぜひ直接お話を聞きたいと実現したこのインタビュー。コドモノミライエのトップページでも、“どの絵からも、まっすぐで真剣なあなたの顔が思い浮かぶ”と、子どもの絵を表現していますが、橋本さんも同じく、子どもの一生懸命描く姿を評価されています。また、個人的には橋本さんの言葉の端々からどんなことにも積極的に楽しんで取り組まれている姿が想像でき、とても元気をいただきました。貴重なお時間を本当にありがとうございました。
天野朋子/著
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