
スクラムの思想を行動に移しやすくする道具(事例解説1)
最近、自社のシステム開発でスクラムに取り組み始めたという方がプロジェクトクリニックに来てくださいました。
カウンセリングでその方のプロジェクトの全体像をプ譜で明らかにしていくなかで、その方から「スクラムでプ譜が使えそうだ」というコメントをいただきました。
私はそもそもスクラムがどういうものかを知らず、プ譜がスクラムの何にどう使えそうなのかがわからなかったので、書籍を読むことから始めてみることにしました。
本書を読んだなかで、この概念・考え方はプ譜で表現できそうと感じたものをこのnoteに書いておきます。
このnoteでは『スクラム 仕事が4倍速くなる“世界標準”のチーム戦術』p173に書かれていた「ストーリーを書く」道具としてのプ譜の使い方について説明します。
p173ではこのような記述があります。
ストーリーを書くときには、必ず小さなストーリーにして、見積もりができるようにすることが大切だ。
アマゾンについてこんなストーリーを書いてみたとしよう。
「最大規模の利用者として、世界オンライン書店が欲しい。どんな本でも、いつでも欲しいときに買えるように」
この記述内容は、プ譜の「獲得目標」と「勝利条件」に収めることができます。
獲得目標はプロジェクトで目指すゴール・目標。
勝利条件はその目標がどうなっていたら成功と言えるかという判断基準・評価指標・成功の定義です。

本書の記述に戻ります。
確かにマゾンの意義をまとめてはいるが、このストーリーでは大きすぎて、実際にアクションを起こすためには具体的ではない。
もっと小さく分割する必要がある。
そりゃそうだ。
オンライン書店を開発するとしたら、こんなストーリーが考えられるだろう。
「利用者として、本はジャンル別に探せるようにしたい。自分が好きな種類の本を見つけられるように」
「利用者として、本を選んだら『買いものかご』へ入れてから購入できる機能が欲しい」
「管理側のプロダクトマネジャーとして、利用者の購入履歴を把握できるようにしたい。 そうすれば履歴に合わせておすすめの本を表示できるからだ」
こうしたストーリーがあれば、開発チームは議論ができる。実際にどうやって実行していくか話が進められる。
このストーリーをプ譜の「中間目的」と「施策」で表現できます。
「中間目的」はプロジェクトが成功しているときの各要素の“あるべき状態”。
施策はその状態を実現するための行動・作業です。「〇〇の機能を開発する」という作業も施策に入ります。

同書の記述では「状態」と「機能」が一つの文章になっていますが、プ譜では施策と中間目的を分けることで、「〇〇の機能を開発する」ことによって、「〇〇の状態になっている」という考え方をします。

上のプ譜には同書に書かれていない記述内容があります。
「利用者として、本を選んだら『買いものかご』へ入れてから購入できる機能が欲しい」
ここには利用者として「『買いものかご』へ入れてから購入できる機能」によって、どんな状態になっていたいかが書かれていません。ECを利用していれば誰でも感じることではありますが、「間違って購入していない」状態、あるいは「途中で買うのをやめられる」状態になるために、この機能を欲していると考えられます。

ただこの状態をどう表現するかによって、具体的な仕様及び開発の仕方が変わってくるので、「なぜそれが必要なのか?」「それによってどんな状態になっているべきか?」と問い、それを言葉で具体的に表現する必要があります。
こうしたストーリーがあれば、開発チームは議論ができる。実際にどうやって実行していくか話が進められる。
このようにストーリーをプ譜の中間目的と施策で分けることによって、より間違いの少ない開発を進められるのではないかと思った次第です。
実際のストーリーは例のように3つしかないということはなく、もっとたくさんのものがありますが、その場合は中間目的の数を増やしたり、入れ子構造で対応するといった方法もあります。これについては別の機会に記事にしたいと思いますので、まずはこの記事がみなさんのスクラムの取り組みやすさに少しでも貢献できれば嬉しいです。
いいなと思ったら応援しよう!
