【第2部活動団体報告:チャイボラ 大山遥代表】ベネッセこども基金MeetUP2021#2 ― 社会的養護のもとの子どもの現状と課題 ―
本記事は、2021年12月6日(月)に行ったベネッセこども基金MeetUP2021#2イベント 第2部:活動団体報告 NPO法人チャイボラ 代表理事 大山遥様の講演内容のレポートです。
ご経歴
みなさん、こんばんは。
NPO法人チャイボラで代表をしております大山遥と申します。
私は元々ベネッセコーポレーションで働いていました。
リニューアルに際して破棄されてしまう教材を児童養護施設に寄付できないかと考え、児童養護施設に連絡をしました。
その時、
『欲しいのはモノではなくヒトなんだよ』
と言われました。
その出来事から1週間後には会社に辞表を出しました。
現在は、児童養護施設の非常勤職員(5年目)として勤務しながら、職員の確保と定着を事業としているチャイボラを運営しています。
今期で4期目になりました。
児童養護施設の一日
児童養護施設は普段どのように過ごしているのか、イメージしにくいかなと思います。
まずは児童養護施設の具体的な一日の様子をご紹介します。
6:00 子どもたちを起こして朝食準備
大体朝6時に宿直明けか早番の職員が子ども達を起こします。
私も昨日宿直明けでした。私は現在、幼児ユニットを担当しています。
小・中・高校生のユニットは、昼間は8人、夜間10時以降は15人の子どもを職員1人でみています。
7:00 朝食
8:00 子どもたちを見送り
朝食は、調理さんが作ってくれる施設もあれば、職員が作る施設もあります。朝食後、いってらっしゃいと子どもたちを送り出します。
8:00~15:00 家事・事務作業等
15:00 引継ぎ
送り出した後は、基本的に子どもたちは施設にいないため、その間に家事、事務作業、会議、買い出しなどを行います。そして、午後の職員に引き継ぎを行います。
15:00 子ども達帰宅・宿題等をみる
16:00 おやつ・遊ぶ
15~16時に子ども達が学校から帰ってくると、おやつを食べたり、遊んだりしています。職員も余裕があれば一緒に遊んでいます。
17:30~19:00 夕食準備・夕食・片づけ
17:00~21:00 お風呂
夕方は夕飯の準備が始まります。
また、小さい子どもたちは、職員と一緒にお風呂に入り、夕食を食べます。
中・高校生は、バイトや部活があるため、帰ってくる時間がバラバラです。
夜遅くに帰ってくる子どもには、ご飯を温めて出してあげます。
小学生と一緒に夕食を食べても、夜遅くにお腹がすいているときは、高校生と一緒にまたご飯を食べたりすることもあります。
19:00~22:00 リラックスタイム・就寝
就寝時間は年齢によって大体決まっています。
24:00 記録・就寝
子どもたちが寝静まった後に記録を書いています。
遅番の職員は、ここで帰ります。
泊まりの職員は、このまま泊まるという感じです。
児童養護施設職員のお仕事
児童養護施設職員のお仕事内容は、本当に様々です。
子どもに直接かかわる業務を具体的に挙げると、
ご飯を作る/掃除/洗濯/お風呂に一緒に入る/夜寝るときに背中トントンをする/学校や習い事の送り迎えをするなどです。
運動会ではパン食い競争にも出ますし、キャンプにも一緒に行きます。
それ以外に事務作業が実は大量にあります。
私も施設職員になってすごく痛感したんですが、想像以上の事務作業の量と関係機関との会議があります。
児童相談所から連絡がきたり、お母さんとの電話が長いときには数時間になることもあります。
そのため、子どもたちとずっといることができるわけではありません。
圧倒的な職員不足
現在、チャイボラが立ち向かっている課題は『職員不足』です。
先ほど申し上げたように、私が勤務する施設では、昼間は8対1、夜間は15対1で、小学校1年生から大学生までの子ども達をみています。
チャイボラがバックアップサポートさせて頂いている施設では、基本は10対1で子ども達をみているとおっしゃっていました。
施設によって大舎制などいろいろな形態があります。
基本的に大舎制では、20人の子どもを職員1人で見る時間帯が大半を占めています。
自己肯定感の回復
子どもたちに必要な事は『自己肯定感の回復・醸成』です。
「自分を大事に思う力」を育んであげたいと思っています。
そのためにはどうしたらいいか―。
自分が大切に育てられる経験を、施設で過ごす期間にちゃんと育み、体験してもらいたいなと思っています。
人間には、3つの生理的欲求があります。
うんちおしっこがしたい/ご飯が食べたい/眠りたいです。
この欲求を赤ちゃんが発する時、泣くことでしか表現できません。
泣いた時にきちんと対応してくれることで、「自分は大事な存在なんだな」と0歳のタイミングで思うことができます。
逆に、泣くことで表現していても、放置されたり、虐待を受けたりすると、なかなか自分を大事に思う気持ちが育みにくくなってしまいます。
大事にされる経験をすると、
「自分を大事にしてくれる、この人たちが大事だな」
と、はじめて自分以外の誰かを大事にする気持ちがうまれます。
自分を大事にしてくれる人たちが周りで見守ってくれるから、心に安全基地ができ、それが踏み台となって、挑戦意欲がわくと言われているんです。
そのため、一番はじめに『私は大事なんだ』と思えることがとても大事です。
自分を大事に思ってくれる人、そして出来ることなら継続して関わっていくことがとても大切になります。
だからこそ、私たちの団体は
『子どもたち一人ひとりが大切に育てられるような環境をつくること』
を理念として掲げて活動しています。
チャイボラの主な活動内容
現在、<人材確保事業>と<人材定着事業>を実施しています。
<人材確保事業> 「チャボナビ」の運営
施設情報をポータルサイトにまとめて求職者に届ける事業です。
この活動を始めたきっかけは、私が保育士の専門学校に通っている時に、施設に就職することに興味はあるけど、就職につながらない現状があったためです。
理由を探るために158人の学生にインタビューしたところ、
・オンライン上での情報が非常に取得しにくい
・見つけたとしても、施設内の様子を見る機会がない
ということが分かりました。
広報費が施設の予算にはなく、広報を実施することが難しい現状なのです。
求人サイトに多額のコストをかけて掲載したり、ホームページを改定したり、広報担当がいないため施設側ではできません。
この部分を誰かが実施することで、求職者に情報が届くんじゃないかー
その思いで、2年前にクラウドファンディングを実施して、「チャボナビ」を立ち上げました。
現在、東京都の9割の児童養護施設が登録している状態です。
また、関西支部を立ち上げて、関西も3割が登録準備中です。
今後、全国展開するために再びクラウドファンディングを実施しています。
先ほど800万円達成しました!
次は、1,000万目指しておりますので、よかったらご協力をお願いします。
<人材確保事業> 施設の見学会や運営のサポート
興味関心層を増やすために、施設の職員さんと一緒に学校へ出向いて出張授業を行っています。
<人材定着事業> 施設職員向け相談窓口
コロナの影響で職員が大量に離職してしまった施設もあります。
とても思いがある私の知り合いの職員も何人か去っていきました。
職員自身、そして職員の家族も感染リスクがある中、365日24時間踏ん張って子どものことを思い、職場に行く職員がいます。
そういう状況の職員が長く元気に働けるためにはどうしたらいいか。
そこで、約3ヶ月でアプリを開発して相談窓口を開設しました。
24時間365日、専門家から相談が受けられるアプリです。
その他に、研修の運営も実施しています。
組織形態
5名のメンバーと私の6名で運営しています。
サポート状況
チャボナビ経由で施設とつながった人数は1,400名になります。
約2ヶ月前の数字なので、現在は1,500名位になったと思います。
あと一人いれば…
あと一人職員がいればできたかもしれない・・・
そういうことが日常的にあります。
職員が子どもに与える影響は計り知れません。
日本で唯一施設職員の確保・定着を行っている私たちの団体は、子どもへのダイレクトな支援をしているわけではありません。
しかし、職員が子どもに与える影響は計り知れないがゆえに、職員がきちんと確保でき、安定的に元気に働ける環境を目指して活動していきたいなと思っています。
少しでも私たちの取り組みにご賛同いただける方がいらっしゃいましたら、クラウドファンディングへのご協力や、チャイボラの記事をシェアしていただけると、とても嬉しいです。
発表は以上です。ありがとうございました。
MeetUP2021#2アーカイブ動画視聴はこちら
当日の投影資料や質問へのご回答はこちらからご確認いただけます
また、以下のテーマごとに随時noteを発信していきます!
第1部 基調講演 児童養護施設子供の家 施設長 早川悟司氏
第2部 活動団体報告 NPO法人 HUG for ALL 代表理事 村上綾野氏
第3部 質疑応答
第3部 トークセッション