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かえるくんは かえるくん -絵本-
昨日とは違う今日の自分に出会う時
9歳頃の子どもは、大人への階段というか、ある日、これまでの自分とは違う自分に出会います。9歳まではなんとなく、みんなと一緒というか、まわりに溶け込んでいるわけではないけれど、あまり”自分”を強く意識することがないというか、適した言葉が難しいけど、まどろんでいる感じ。他人と自分とはっきりと分離していないように感じます。
でも身体はどんどん大人への変化をしていて、実は脈拍とか呼吸数も大人に近づいているのだそうです。この頃から周囲の友達と一緒という感覚よりも、”自分”というものを強く感じるようになりはじめます。
みんなと一緒、というより、自分の考えが少しずつはっきりしてくる。もしかしてこう考えるのは自分だけなのか?こう思う、感じるのは他の子にはない?どうなんだろう、そのもやもやを感じ始めるのもこの頃かなと思います。昨日までの自分とは違う、今日の自分。そういう内面がわかる絵本で良いのがあります。まず今日はその1冊目を紹介します。
実際、3年生の男子くんのいるご家庭に薦めたら、家でなにも言わず、黙々と何度も開いて読んでを繰り返してたそうです。
『かえるくんは かえるくん』
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マックス・ベルジュイス 文と絵
清水 奈緒子 訳
セーラー出版
1997.6.30
ベルジュイスの”かえるくんとなかまたち”のシリーズの1冊です。作者はオランダの人で、とても国民的人気が高いんだそうです。たしかに、このかえるくんは、ちらっと見ただけでも素敵なのに、じぃーと見てるとなんとも愛しさが増してきます。
かえるくんは、ぼくしあわせだなぁと川面に映った自分を見ています。
「かっこうはいいし、およげるし、だれよりもたかくジャンプできる。
それに、ぜんしんみどりいろだ。ぼくみどりってだいすきさ。ほんと、かえるでよかったよ。ぼくは、せかいいちのしあわせものだ」
ね、めちゃんこ出だしから、心をわしづかみにされません?!すっかりかえるくんの大ファンになってしまいます。
そこへ、あひるさんがやってきて、白の方が綺麗だといったり、自分は空を飛べるけど、かえるくんは飛べないなどといって飛んで見せたり…。なんともいじわるです(でも、いじわるで言っているつもりもあひるさんにはありません)。
でもかえるくんはピュアなので、感動し、ぼくも飛びたい!と言っても、あっさりつばさがないからダメと否定されてしまいます。そこですごいのはかえるくんはめげないことです。それどころか、落ち込んでもいません。すぐ飛ぶ練習を始めます。でも全然浮きません。そこで、かえるくんはふるいシーツを使って自分でつばさを作ってしまいました!それが表紙の絵。でも、お読みになっている方が想像の通り、それでも飛べません。(こういう似たようなことを何度もなんども繰り返して成功させた兄弟のことはまた別なお話)
さて、このあとかえるくんはどうしたと思いますか?飛ぶ様子を見ていたねずみくんには、かえるは空はとべないと諭され、じゃ、きみはとべるの?とかえるくんは聞きます。ねずみくんは飛べないけど自分には他に得意なことがあるといいます。
このあと、かえるくんはこぶたさんやのうさぎさんにも会います。それぞれにできることを持っていて、その得意なことは飛ぶことよりも素敵には感じられなかったのですが……。
そうして色々試すうちに、また気づくのです。自分が持っているものについて、それはかえるくんしかもっていない、かけがえのないものだと。
自分の9歳の頃
小さな時に感じた思いを少しだけ覚えています。自分があまりにもちっぽけで、まわりにいる子たちはぐんぐん成長していて、おいてけぼりになるというか、すごくちび感を持っていました。みんなと一緒じゃない、なんか違う。ひとりぼっちかもしれない。
”自分は自分のままでいい” そういう言葉が欲しかった3、4年生でした。また、みんなと違って目立つようなことをするのも嫌でした。難しい年ごろだったことは覚えています。
似たような感じでもんもんとしている子に読んであげたいと思ったら、あまり力こめないで、さらっと読んでくださいね♪