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雪が降ったら…


おかしなゆき ふしぎなこおり
写真・文 片平 孝
ポプラ社
2012.11.6

 昨夜寒いなと震えながら寝た。今朝窓の外を見たら雪が降っていた。
普段見慣れない光景を見ると心が躍るのはなんでだろう。
見知らぬ、昨日とは違う何かに出会う予感がするからだろうか。

 この絵本は、銀座の教文館ナルニア国で本の物色をするために時間をたっぷり取った時に、Yさんから強く薦められた絵本。
どのページを見ても、おぉ!おぉ!と驚きをくれる。
初めて読み聞かせで読んだ時の、子どもたちの表情が忘れられない。わたしも早朝のスキー場で見た樹氷の美しさや、こんもりと盛り上がったありえないほどの雪の帽子に見とれたことを思い出す。
一晩で様変わりすることもあり、小さかった子どもたちも雪国では驚きの連続だった。
 雪で推し潰れないように斜めになっている雪国の屋根。たまりにたまったものが、雪しぶきと音を立てながら、ざざざと落ちて来るのを見ると立ちすくんでしまう。近くにいようものなら驚く。同時に子どもたちは気づく。自然は美しくもあり、怖いものでもあると。

 今日も偶然この絵本を用意している読み聞かせの仲間が何グループもあり、それぞれでの子どもの様子を聞くことができた。
見たこともない雪の光景に「ヤバイ」を連発する子どもたち。ヤバイの一言の連続なのに、どれひとつ同じような「ヤバイ」の発音がなかったとか(笑)
それを娘に話すと、最近の外国人は日本を旅行する時に「ヤバイ」で過ごすことができるという。まるで日本人が「イエス」と「ノー」だけで外国を回るようなものが「ヤバイ」らしい。

 この目を見張る雪と氷の世界は、年に2~3回しか雪を見ない子どもたちからすると、平時のものではない。この絵本を雪国の子どもたちが読んでもらうのと、名古屋の子どもが読んでもらうのでは、ずいぶん印象が違うのかもしれないとも話が出た。

 私自身、一年ぶりの雪国への旅行で何メートルもあるながーーーいつららを見て、あれが刺さったら痛いねなんて、幻想とはほど遠い話になり、つららを利用した殺人事件なんてあるんだろうか、なんて物騒な話をご来光を見ながら話したことを思い出す。一体正月早々なにを話してるんだか。

 学校までの道のりで、手にボールぐらいの雪玉を作って大事に抱えている男子君に遭遇したり、ビニール傘を逆さにして、その半分ほど汚れていない雪をいれて、大事に運ぶ中学生を見た。
 今期初の雪に、子どもたちは感極まっていた。走り転がるわんこのように元気だった。一日雪があるといいのに、残念ながら昼まえには溶けてなくなっていた。

 偶然とはいえ、雪の結晶の絵本や雪がいっぱいでてくる写真絵本や、物語を読んでもらえた子どもたちは、臨場感が増して楽しかっただろうな。雪が降ったら、雪の絵本にささっとスイッチングする、そんな臨機応変さが自然に作れたらと思う。

 何年も前、ベテランのある先生が、雪が積もった時にそわそわしている子どもたちを見て、授業を雪の観察に代えて、思い切り運動場で遊んだという話をしてくれた時に、なんてそのクラスは幸せなんだと思った。

毎日雪が降る町じゃないんだもの。ある意味、そんな奇跡に近いような雪との遭遇は、楽しめなかったらどうするよ。
溶けてなくなる前に……遊んでこそ。

雪は天からの手紙なんだら。

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