脚本のレシピ📝②
「舞台のレシピ〜ヲトメリウムができるまで〜」
第2回は、前回に引き続き
「脚本のレシピ」
です。
前回は「ヲトメリウム」の冒頭部分をご覧頂きました。
まだの方はこちらから。
今回は、前回を読んだ方が楽しめます。
今回は、脚本「ヲトメリウム」が出来てゆく過程をお見せします。
脚本の望月日生がご案内いたします。
私が初めて貰った台本は、終わりを知らず止まっていた。
色々な人の思惑が、期待が、時間も空間もそのままに止まっていた。
動き出すのは______
「ヲトメリウム」は代表の池田衣穂が抱えていた企画、及び公演だった。
劇団行動力(以後行動力)発足のため、その当時上演するに至らなかった公演を私たちでやろうということになったのだ。
企画書や台本も「お手本」のようなものがある。
でも、これを私たちのオリジナルの公演にするにはどうしたらよい?
そして困ったことに、行動力の発足当時、メンバーには脚本を書く者がいなかった。
最初のミーティングの際に「書いてみたいかも」と手を挙げたのがきっかけで、台本を書いたこともない私が台本を完成させることとなった。
その後の公演でも脚本として関わらせて頂けることになったのだが、未だに実感が湧かず、台本についてのお声を頂くと大変な喜びと奇妙さに襲われる。
あの日サイゼリヤでミーティングをしなかったら、私は一生他人に自分の言葉を見せていなかったと思う。辛味チキンに、人生を変えられたようである。
「ヲトメリウム」の台本に目を通すと、鮮やかな世界が広がっていた。
可愛らしい三人娘に、不思議な空気を持つ彼の君。
丁寧に書かれたト書きや舞台のイメージ。
私は初めての経験の前に置かれた原作台本を読む度、ゴポゴポ音を立てて溺れた。
得意でもないコーヒーを、物書きならばと沢山飲んでみたりした。
メモ書きも、その際にまた物書きぶって書いた一部である。
皆が出してって言うから。きゃー。恥ずかしい。
ここ最近では、プロット(話の筋・構想)というものを書いてから始めたりするが、今まで書いた大体は、絶対に使いたい台詞や言葉、テーマ、演出、音楽、役者のどれかしらを決めて(決まっていて)それを含有できるストーリーを組み立てている。そのため、論理的展開の確実性は第一稿ではないに等しい。
そんな危うい台本をまずは池田に見せ、ニュアンスを伝える。「いい!」という一言を貰うと私は調子に乗って書き続けることができる。
それでは、脚本のレシピです。
(材料)
文字 適量
安定して生活ができる体 一体
調子 大さじ十
(作り方)
1,安定して生活ができる体で、PCを開きます。
2,文字適量を打ち込みます。
3,一度周りの人に見せ、褒めてもらったり、進言をもらいます。この時、褒めが多すぎると、調子を入れすぎてしまうので気をつけましょう。
4,大さじ十分の調子で書き進めたら、冷静沈着(レシピ外)を少々 加え何度か読み返しましょう。
5,4を繰り返し行い、稽古の様子を見ながら都度書き直します。これを本番まで続けます。
そうして、2年前の丁度今頃、台本が完成した。
安心して旗揚げができる。
この後の展開はもはや誰もが予想できるようになってしまっただろう。
延期だ。
そしてまた今年、延期だ。
10代から20代。未来のことで悩むのは誰よりも多いって言うのに、さらに悩むことが増えちゃった。
この場を借りて、舞台演劇に関わる皆様の未来が今より少しでも希望の持てるものになりますように。
そして結局、この台本を貰って数年経ち。
あの時には言えなかったこと、あの時には思い至らなかったこと、あの時には知らなかったことを、20歳になった私は、見つけて、消して、書いて、消して、と繰り返しています。
延期になったその先でも見つけて、消して、書いて、消して……最後に消えなかった言葉たちを、未来の皆様に劇場で届けます。
静かに、励んでゆきたいと思います。
私が初めて書いた台本は、終わりを知らず止まっている。
色々な人の思惑が、期待が、時間も空間もそのままに止まっている。
動き出すのは______
脚本 望月日生
「舞台のレシピ〜ヲトメリウムができるまで〜」、次回は明後日、27日(金)公開予定です。
次回は「フライヤーのレシピ」。フライヤーが出来上がるまでの秘話を公開致します。
お楽しみに。
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劇団行動力のnoteでは、
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