ヴィン・ディーゼル似のコワモテのおじさまに救われた話。
生きていると、たまに「いや、ドラマか」っていうかっこいい人にリアルで出会うことってありますよね。
先日、都内のあるお店で少人数で会食をした後、タクシーで深夜に帰宅しました。
ちょうど入稿が終わった日で疲れてたっていうのと、けっこう酔っ払っていたというのもあり、その日は倒れ込むようにソファーで朝まで寝てしまいました。
で、朝になって気づきました。
あれが無いことに。
そう、スマホです。
私はプライベート用と仕事用とかを含めて、iPhone2つ、 iPad2つの計4台持ちなんですが、そのうちのプライベート用のiPhoneがなくなっていました。
一瞬パニックになりそうだったのですが、記憶がなくなるほど飲んだわけでもなければ、帰りのタクシーのなかでスマホをいじっていたのも覚えているので、会食したお店に忘れたとかお店の近くで落としたってことはなさそうです。
となると、
①タクシーの中に置き忘れた
②タクシーを降りてからマンションに入るまでに落とした
どちらかしかないってことになります。
とりあえず、タクシーの領収書を保管していたので、電話してみました。
「昨夜、〇〇から△△まで乗った者なのですが、スマホの落とし物がなかったでしょうか??」
「お調べしますね…………お待たせしました。昨夜お客様が乗られたタクシーは朝イチで営業所に戻っておりまして、車内清掃も済んでいるのですが、落とし物は何もなかったですね」
「ああ…そうですか。わかりました。調べていただき、ありがとうございました」
タクシーの中で落としたのではないのか…。
こうなるとやっかいで、いよいよどこにあるのかわかりません。
そんなこんなで若干あせっていたところ、「GPSで場所特定すりゃええやん」ってことにようやく気付きました。
で、iPadを取り出して
「デバイスを探す」
をポチッとしてみたら、マップ上のある地点を示してくれました。
その場所は、
品川駅
でした。
ん??
品川駅、その日いちども行っていません。かすってすらいません。ちなみに自宅から品川駅も、1時間近くかかるくらい離れています。
なんでやねん、GPSがバグ起こしてるのかもしれへん、と思いiPadの電源をいちど切ってから、GPSを再起動してみました。
そしたらやっぱり、
品川駅
にありますと。
こうなると先に考えた
①タクシーの中に置き忘れた
②タクシーを降りてからマンションに入るまでに落とした
のどちらも違うってことですよね?
意味がわからない…。
とりあえず品川駅にあるらしい自分のスマホに電話をかけてみるも、もちろん誰も出ず。
しかたがないので、GPSを頼りに、朝から品川駅に向かうことにしました。
めんどくさいなぁ、と思いながら山手線内回りで池袋から品川に向かいます。
Kindleで本読みながら、念のため一駅通過するごとくらいの間隔で、GPSを起動して、場所を確認してました。
目白あたりでGPS検索すると、やっぱり
品川駅
にあります。
高田馬場を通過したあたりでGPS検索すると、あいかわらず
品川駅
にあります。
品川駅にあるのが本当にまったくの謎なのですが、電話しても出てくれないし、とりあえず近くまで向かうしかないから、引き続き向かいます。
で、目黒を通過したあたりでGPS検索すると、
田町駅
にあります、と出ました。
「…え?」
バグかなぁと思ってGPS再起動しましたが、たしかに田町にある。
なんでやねん…とか思ってる矢先、
「…う、うごいてる!」
確かに私のスマホが移動してるんです。
しかも、けっこうな速度で。この速度は、たぶん車移動だ。
こうなると気が気じゃなくなってしまい、リアルタイムでずっとGPSを睨みつづけます。
行き先を田町に変更して向かっている間も、スマホ、めっちゃ動いてます…。
浜松町のほうに向かったかと思えば、ちょっと止まって、次は有楽町あたりに…みたいなことを繰り返します。
もうこれ、確実に誰かが持っていて、一緒に移動してるじゃないですか。
でも電話しても出てくれない…。
車移動っぽいスピードなので、やっぱり昨日のタクシーだろ!シートかどこかに挟まってて、気づかれないまま、朝イチでまた別のドライバーさんに交代して、営業所から出発したに違いない!って思って、念のためもう一度、昨日のタクシー会社に電話しました。
先ほど対応してくれた人とは別の人が電話に出ます。
「あのぉ、先程スマホの落とし物を問い合わせした小寺と申します。やっぱり、車内に忘れてないですかねぇ。GPSで検索したら、いまもまさに移動してるっぽくて、タクシーの可能性が高いと思うんですよね…」
「ええと、車内清掃も済んでいますし、まだ昨日の車は車庫にありますので、そのようなことはないかと…」
…まだ車庫にあるんだ。
てことは、いまリアルタイムで移動してるスマホ、ぜったい昨日のタクシーじゃないってことやん。つらい。
こうなると、マジで「追いかける」しか手段ありません。だって、取り戻したいし。
意を決して、田町駅で降りて、私もタクシーに乗り込みました。
個人タクシーで、スキンヘッド、渋くてコワモテ、あきらかにベテランドライバーさん。
事情を説明して、
「こ、このGPSを追いかけてください!」
と懇願しました。
すると、その渋いおっさんが言います。
「なるほど…ちょっと飛ばしますよ」
かっけえ!めっちゃ頼りになりそう!
このおっさんとなら、困難を乗り越えられそう!!
ここからは怒涛の追跡劇です。
(もちろん法定速度まもりながらですが)素晴らしいドライビングスキルで追いかけてくれて、もはやそのおっさんの風貌から、「ワイルドスピード」シリーズのヴィン・ディーゼル扮するドミニクにしか見えなくなってます。
「ドム…がんばれ!」
と心のなかで叫びますが、追いかけては離れ、近づいたらすれ違い…が続きます。
しかもよく考えたら、向こうがどんな車種かもわからないし、移動中はどうあがいても捕まえられないので停車したところを狙うしかありません。
止まった!追いつくかも!ああ、ダメだ…。
こんなくだりをやりまくっているうちに、タクシーの料金メーターは8000円にまで達しています。
「さすがにやばいなぁ…このまま追いかけ続けるのもしんどいし、あきらめようかなぁ」
と考えていた矢先!!!
スマホがある建物で止まり、そこから動かなくなりました。
完全に止まった!!追いつくぞこれ!
ようやくGPSの指し示す場所に辿り着くことができました。
で、着いて衝撃。
どこだったと思います??
昨日、私が乗ったタクシー会社の、とある営業所でした。
いやいやいや。
車庫にあるから、いまは走ってないって言ったやん。
車内清掃までしたけど、スマホはなかったって言ったやん。
てことで、早速そのタクシー会社に乗り込みに行こうかと思っていたら、ヴィン・ディーゼルがひとこと。
「メーター止めとくから、ゆっくり行ってきな」
いや、かっけえ!
やっぱドミニクかっけえよ!
「ありがとうございます!行ってきます!」
と、でかい声で伝えて、その〇〇交通△△営業所(いちおう名誉のため名前は伏せてます)の受付に行きました。
「あ、あの!いま戻ってきたタクシーに、確実に私のスマホが入ってるはずなのですが…!」
車内、探してもらいました。
…あった!!!
おかえりマイスマホ!
ここまでのストーリーが壮大すぎて、感動ハンパなかったです。
なんでこんなことになったのか??
理由は衝撃の、
伝達ミス
でした。
車庫にあると思っていたタクシーは、やっぱり朝イチで別のドライバーさんで出発していたんですよね。で、まんまとシートのスキマみたいなとこに入り込んでしまって、見つかってなかったと。
マジかよ…。
1万円近く使って追跡したんすけど。
でも、ことの詳細を追求したり、ましてや追跡した分のお金でごねたりはやめときました。良い経験をさせてもらったんで。
むしろ、1万円でスマホ見つかったなら、安いもんですわ。
ということで、すべて無事解決(?)して、メーター止めたまま表で待ってくれてるヴィン・ディーゼルのところに戻りました。
「スマホありましたー!ほんと運転手さんのおかげ!ありがとうございました!!」
「おお、よかったですね!追跡は慣れてるから、またなんかあったら呼んでくださいね」
いや!かっけえ!
追跡は慣れてるから、は意味わからんけど、それが気にならないくらいカッケェ!
…なんて思ってたら、トドメのひとこと。
「このままメーター止めたまま、近くの駅まで送ろうか??」
いや、ホレますて!!
1万円くらい払った追跡劇だったけど、ヴィン・ディーゼルのおかげで最高の思い出になりました。
また偶然に都内でヴィン・ディーゼルのタクシーに乗ることがあったら、今度は逆に私のほうが「お釣りはいりません」みたいなカッコいいことしたいなぁ、と思ったのでした。
以上、誰の役にも立たないnoteでした!