今注目のテクノロジーは人をどう幸せにするか
2015年9月18日 Vol.050 <テクノロジーを使い切れ号> より
先日、科学技術振興機構 社会技術研究開発センターというところの依頼で、現在注目されている新しい技術は社会にどのような影響を与えるのか、というテーマで1時間ばかりお話しをさせていただいた。技術と社会の接点を考える上で、想像することは重要である。誰かが想像しなければ、その方向に技術開発の矛先が向かないからだ。
昔に作られたSF映画やアニメが描いていた未来は、もう年代的にはそろそろ近づいていたり、あるいは追い越してしまったものがあるだろう。それぐらい未来にはできているはずと想像したものが、未だにできていないものは多数ある。しかし、思ったよりもゆっくりとではあるが、人が当然来るべきものと想像した方向に向かって進んでいると信じたい。
ここでは、20年30年といった未来のことを想像するわけではない。それこそ3年後や5年後といったごく近い未来ですら、予測することは難しい。だが予測ではなく、こうなって欲しい、今の技術を延長すればそれができるはず、という望みは持つことができる。今回は、そういう話をする。
■スマートロックが生み出すもの
鍵というハードウェアは、突然劇的に進化したりしない。しょせんは扉が開かないよう固定しとくためのものにしか過ぎないわけだが、外側からは鍵穴に鍵を差し込むという方法でしか開けることができない。そうでなければ、中の人に開けてもらうかである。
スマートロックが面白いのは、あれは鍵とは言えず、外の人が中の人(人じゃないけど)に開けてもらうための装置だということだ。アラビアンナイトに出てくる「開けゴマ」的な合い言葉と同じである。
扉取り付け型のスマートロックは、既存の鍵システムに後付けで「中の人」をくっつけることで成立する。アイデアとしてはシンプルだが、ドアの構造はオフィスのようにシンプルなものばかりではない。戸建てになればなるほど、装飾が色々付いていて、スマートロックが付けられる可能性が減少していく。うちの玄関など、こういうのを何調というのかしらないが、めっちゃ装飾が付いていて、汎用品のスマートロック取り付けは、ほぼ絶望的である。
それでももしスマートロックが普及したとしたら、どんなことが起こるのかを想像してみたい。まず解錠のためのキー情報は、時間や期間を限定した上で、誰かに送ることができる。例として、ホームパーティに呼ぶ相手に鍵を渡しておくという使い方が提案されてはいるが、ホームパーティなら中に家の者がいるだろうから、そもそも人に渡す必要がない。
そうではなく、家の者が留守でも中に入っていい人に渡すというのが、基本であろう。そして物理的な鍵と違い、不要になったときに回収しなくていいというところにメリットがある。
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