見出し画像

薬局運営相談実例① ~キャッシュショート~

コンサルティングとは「かっこいい」というイメージを抱いている方も多い反面、非常に怪しい職種という印象の方も多いと思います。どいういう仕事なのかというと小売業のように「○○を売る」、教育業のように「○○を教える」など明確なものが有りません。実際、「コンサル」という言葉は非常に便利な言葉で良くも悪くも、なんにでも使えます。実はこの用語、自分の中でもあまり好きではないです。勝手な自己満足ですが、私たちの仕事は「自らの持っている知識を駆使し、どのように支援先(パートナー)が目標達成できるようなサポートができるのか」このように意味付けをしています。

そんなこんなで、これまで約10年ちょっと、色々な薬局と関わり、共に戦ってきました。どんなことをしてきたのか、いくつかの事例を数回に分けてお伝えをして行ければっと思っています。

成功事例をひけらかしても面白くないかと思いますので、第1回目は失敗事例からご紹介をしたいと思います。

企業再建協同組合からの案件~企業再建支援~

状況をざっくりと説明しますと

・地方都市で2店舗の企業
・薬局の営業利益はかろうじてプラス
・行政絡みの支援団体が介入した企業再建
・医薬品卸への支払いが滞りかけている
・複数金融機関からの借入がある

関わりのある経産省認可の企業再建協同組合さんより、薬局運営の専門家がいないということで、当社にお声を掛けて頂きました。
企業運営自体は、かろうじてプラスですが、状況は決してよくはなく、いわゆる「キャッシュショート」の状況でした。医薬品卸への支払いも滞りがちになり、3社あった医薬品卸も1社は撤退、もう1社は納品ストップ、最後の1社からも最終勧告を受けているという状況です。

時代はリーマンショックの影響もあり中小企業に対しての支援策として「中小企業金融円滑化法(モラトリアム法)」が施行され、金融機関に対して「返済猶予」や「金利減免」などの条件緩和が求められていたということもあり、こういった「企業再建支援」を謳う団体も多かったですし、補助金なんかも出ていたと記憶しています。

このような企業に対して、各専門家を集めて企業再生に向けたスキーム作りを行うというチームに薬局分野の専門家としてお声が掛かったわけです。

企業再建に向けたスキーム

こうして作られたチームが何を行うかというと、

・売上向上に向けた戦略の策定
・財務デューデリジェンス(DD)
・資金繰り
・返済計画作成

こんなことを、中小企業診断士、税理士と共に行っていきます。すでにキャッシュショートの状況なので、「返済計画」をどう作成し、金融機関に対して「支払期間の延長」「元金据え置き」を飲んでもらうのかというところが着地になります。残念ながら、当社の本職である実際の売上アップなどは二の次の支援です。(こういう団体絡みは仕方ないのですが)

上手く経営をされている方が多いなかでこういう話はあまり聞いたことがないかもしれませんが、2019年に反町隆史主演のドラマ「リーガル・ハート~いのちの再建弁護士~」で雰囲気を知っている方もいるのではないでしょうか。

画像1

いざ決戦へ

正直、キャッシュショートにおける特効薬はありません。薬局業界では「共同交渉」への加盟による薬価差獲得、保有している不必要な保険やゴルフ会員権などの固定資産を手放すぐらいしかないです。ただ共同交渉の多くは2か月の支払いサイトが要求されるため、現状3か月サイトを設定している薬局では金融機関からの借入が必要となる為、いまの状況では無理です。
他業種のコンサルの方々は売上増加の施策を考えますが、正直OTC販売やホームページ作成による増患などの策は薬局には適していないため、これまた意味を成しません。

そうなると私たち専門コンサルの出番なのですが、正直各種加算(後発品、基準調剤(後の地域支援))を算定するしか薬局の売上アップはありません。そしてそれには少しばかりの時間が掛かります。

今回の場合は、弊社が全面的なバックアップ体制を整えることで、粗利益の向上策をとっていく、2店舗の中、売上の低い店舗を事業譲渡することで収益改善することなどなどの苦肉の策で当面の経営改善策(応急処理にしかなりませんが)を出し、銀行への「元本据え置き」をお願いし、本来借入返済に充て得る費用を医薬品卸の支払いに優先的に回すということで、幾度となるバンクミーティングを行いました。

バンクミーティングは決して楽しいものではないですし、薬局業界のことを知らない方々にコンコンと仕組みや改善計画を説明しなければいけないので、非常に骨の折れる作業です。そもそも、ミーティング会場に現れない銀行も出てきます。(そこは百戦錬磨の協同組合がお上の力を使い呼び出すのですが・・・)
最終的に2か月間、6度のミーテングを繰り返し、ほぼ無茶苦茶な計画ともいえる(※)再建計画を通し、「元本据え置き」の確約を貰うことが出来ました。

なぜ無茶苦茶なのか
調剤報酬は2年に一度ある為、他職種に比べて先のことは予測できません。また門前医療機関あっての門前薬局です。未来のことは未来のことでしかないからですね。まさしく、再建計画自体が机上の空論です。

なぜ失敗に終わったのか

ここまでお話してきまいたが、冒頭書いたように、この支援は最終的には「失敗」に終わります。それはなぜなのか。。。

今回の再建計画を作成するために約2か月間、かなり濃い時間をかけ各々の専門職が動き、銀行等への理解を促してきました。しかしながら、この計画の主役は「薬局の経営者」です。

失敗の要因は「経営者自身の自覚の無さ」にありました。

金融機関にとっては、「元本据え置き」はメリットはなく貸付ランクで言うならば今回の企業は「破綻懸念先」よりも思い「実質破綻先」というランクです。倒産リスクが非常に高い企業な訳です。

なにが起きたのかというと、この作業は太陽さんさんの真夏に行われていたのですが、日に日に真っ黒になる社長の姿、支援をお願いしているとは思えない出で立ちと、「ムリ」「難しい」と行動しようとしない態度。こういったことが積み重なり、最終的に頂いた確約がなくなるということになってしまったわけですね。

実際に、毎週のようにゴルフに行き、毎度BMWで現れる姿は決して行員の方々に良い姿勢とは捉えられません。

時はM&A全盛期ということもありました。この経営者自身、最後は「薬局を売ればいい」。こんな考えをにおわす発言も多くありました。

そのようなこともあり、結局この企業に対する支援チームはここで終了となり、私もお役御免となるわけです。

最後に

「なんとかしたい」と思うサポーターがいても、主役は企業を運営している経営者自身です。私たちも商いとして挑む以上、なりふり構わずミッションクリアに向けて無理なことも実際やります。なぜこの薬局はこのような状況になったのか…。記載はしませんでしたが、想像のつくところかと思います。関わる全ての方々にとってベストな結果となるように目指しますが、百戦錬磨という訳には当然ながら行きません。

良いこともあれば残念なことも多くあります。今回はそんな過去の経験の一つを紹介してみました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?