敷地内薬局の整備を巡り逮捕者が発生!これからの薬局どうなる?
調剤報酬改定を控えた年は、何かと薬局業界が騒がしくなります。残念ながらそれは今回の令和6年度改定でも発生してしまいました。すでに業界の多く方が知っている「敷地内薬局の整備を巡り入札妨害。逮捕者も発生」です。今回は問題を振り返ると共に、これからの注目点をいくつかまとめてみます。
敷地内薬局誘致で入札妨害事件が発生。薬局の社長を含む3名が逮捕
まずは何が起きたのかを整理します。
【報道はこちら】
https://www.htb.co.jp/news/archives_22312.html
北海道札幌市のKKR札幌医療センターの敷地内薬局の公募に際し、病院元幹部が入札に関する情報を事前に特定の業者に漏らした疑いで送検されたという事件です。
KKR札幌医療センターでは2020年12月に同医療センターの敷地内に薬局を開設する事業者を募集(プロポーサルと呼ばれます)。選定を経て2021年12月に業界最大手のアインホールディングス(アインファーマシー)が開局をしています。
プロポーサルは医療機関が提示した要件をもとに、薬局側で条件に合った薬局作り、自社のアピールを行い選定をするわけですが、医療センターの元事務部長が落札をしたアインホールディングスが有利になるように当時の支店長等に情報を漏らしたということです。また、締め切り期限が過ぎた後の企画提案書の差し替えを行ったということです。
医療センターの元事務部長を始め、アインファーマシーの代表取締役、取締役の3名が「公契約関係競売入札妨害」の疑いで逮捕されています。
なぜ逮捕されることになったのか
今回の事件に関しては色々と波紋を呼ぶことになりそうですが、逮捕の要因は特定の事業者が優位に働くよう公正な入札を妨害したという「公契約関係競売入札妨害」と報道されています。
発端となったKKR札幌医療センターは「国家公務員共済組合連合会」が運営し、働く職員は「みなし公務員」に該当します。それが今回、捜査が動き逮捕までいたったポイントの一つのように思います。
「公契約関係競売入札妨害」についてですが、偽計・威力を用いて、公の競売・入札で契約を締結するためのものの公正を害すべき行為をする犯罪です。
簡単に言ってしまうと、特定の事業者との結託・優遇ということに対する罪となります。
これから問われるもう一つのポイント
公募・入札というこのが公正に行われるべきだということはいう間でもないですが、もう一つのポイントとして保険事業で定める「療養担当規則」違反に対し、同処罰されるのかという点が挙げられます。
療養担当規則では
とされています。今回の敷地内薬局の開設に伴い、逮捕者に対する金品の授与は現在調査中としていますが、同センターに支払う薬局敷地の賃借料については「当初提案の1.7倍の月額750万円で契約していた」と報道されています。
薬局と医療機関における賃借において「相場に準じた」ということが保険申請の際にもよく言われることですが、その相場を超えてしまうと療養担当規則で定める「利益供与」に該当してしまいます。
今回は「当初提案の1.7倍」となっており、地域の相場ではない点も注目です。敷地内薬局に対する賃料の提案は自由となっています。当然ながら価格が高い提案社が優位にことを運べます。元の提案が相場よりも大きくかけ離れている場合、当初提案自体が利益供与に該当する可能性があります。
結果として何をお伝えしたいのかというと、このようなこと自体が療養担当規則違反に該当し適切な開局ではないということです。
今回「入札妨害」に対する逮捕ですが、保険事業を管轄する厚生労働省が当該薬局に対し、どのような処罰を与えるのかに注目されます。
今回の問題が他の敷地内薬局へ波紋を広げる可能性あり
敷地内薬局は全国でいまもなお拡大しています。そのような企業に対しても問題が波及していくことはいうまでもありません。
同じ北海道の北海道大学病院の敷地内薬局の誘致を巡り、選定の長期化や公募のやり直し、警察の介入をにおわせる報道も当時は出ていました。
今回の対象企業に絞ると全国で数多く敷地内薬局を展開していますが、敷地内薬局の公募要項「応募資格」には
このように記載されている場合がほとんどです。今後の敷地内薬局に対して応募できないことはいう間でもありませんが、既存の薬局に対し各病院がどのように対応してくるかが問われます。多くの敷地内薬局は「事業用定期借地権設定契約」となっています。(概ね10年)
期間が終了と共に薬局の撤退、入れ替えなども考えられます。
敷地内を誘致する病院は何を考える
どうしても薬局ばかりに注目が集まりますが、医療機関の公募があってこその敷地内薬局です。これまでに私も多くの敷地内薬局整備に関する公募要項を確認してきました。また実際に薬局のプロポーサル申し込みの支援も関わってきました。なかには出来レースという案件も数多く見てきました。
敷地内薬局のあり方が議論されていますが、それ以上に付属施設の建設や必要以上な薬局への要求が多くあるという事実を考えなければいけません。
2015年前後の初期型敷地内薬局は医療機関の土地に薬局を立てる形態でした。それだと特別調剤基本料に該当するということから、「アメニティ施設」を中間企業が建築しそこに薬局がテナントとして入る間接型の形態が普及し現在にいたっています。
薬局側はデベロッパーと組み、箱を立ててもらいコンテンツは薬局側で取りそろえる敷地内逃れと言われるやり方です。
求める要件は薬局に必要な施設というよりも病院側の都合に合わせた施設であり、過剰な要求自体が「利益供与」に該当するという指摘は多くあります。
まとめ
敷地内薬局に報酬上の取扱いは令和6年度改定でもピックアップすることは間違いありません。すべての敷地内薬局が今回の様な「なにか」を抱えているとは言いませんが、実問題としてかなり多くの「噂」を聞くのは事実です。
薬局・保険薬局の運営には多くの法律やルールが存在します。しかしながら機能していないもの、なしくずしになってしまっているものもいくつか存在します。
今回の事件で「公契約関係競売入札妨害」となっていますが、これでは保険薬局としての管轄省庁がこの問題に対し対応しなければ自体の適正化は進まないのではないでしょうか。
さまざまな「噂」が飛び交う敷地内薬局誘致ですが、今回の事件が問題提起の一石となることを期待します。
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