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【ショートコンテ】未確認たち

作:志保屋二ノ介

スズキの仕事は物語に関係ないのでとくに述べないが、
上司に注意を受けているときにかぎって
ポケットのスマホが鳴ってしまうという間の悪さは誰にだってあるもので
そしてそういうときに限って電話の主はずいぶん久しぶりの妹からであったりする。
ずいぶん会っていなかった父親が死んだという報せは、そういうふうに受け取るものである。
タイトル「未確認たち」
実家にはたいていのばあい電車で行く。そしてバスを乗り継いでいくものだ。
車窓からなにを見ているわけでもない。考えごともできず、駅弁を選ぶ余裕もない。
どこかしらかで妹と合流するが
妹がこのタイミングで彼氏を紹介してくるということに慣れている者はいない。
妹の彼氏は珍しい名前で、十数件しかないらしく、
子供を残さなければこの姓が絶滅するのだ、と言った。
会って一分でする話ではない。
たいていの場合、妹は最後に会ったときとあまり変わらず、
もともと細かいことにこだわらない性格だったが、父親が死んだことを悲しむでもない。
この三人で病院に遺体を引き取りに行った。
心筋梗塞だ。河原で死んでいた。発見者は釣り人だった。
散歩コースであり、警察は事件性無しと判断した。
スズキ家に、遺体が運び込まれる。
明日に葬儀を控え、寝ずの番をするスズキだったが、起き続けることは実際には不可能である。
気配で目を醒ますと、父の顔を見つめている弔問客がいる。
親世代の弔問客が口にすることはたいていの場合、よくわからない。
葬式会場・スズキ家外観
こういうとき、ご近所問題など、積年の苦情を受けることもままある。
なんのことかと話していると
どうやらここで生まれ育った兄妹には気付きにくい音らしい。慣れというものは怖ろしい。
集中していると少しづつ、指摘されている音を認識できるようになってくる。
土蔵は、揺れるほどの音を立てている。
電話の主は片言の日本語だった。妹の弟はいなす。
土蔵の引き戸を開ける兄妹。
中は物が散乱しており、一つの木箱が動いて暴れている。

前世代からなにを引き継ぎ、次世代になにを託すか

今回は物語の導入部をコンテとして応募させていただきました。
このあと、土蔵で暴れている木箱から父親の知られざる少年時代を知ることとなり、父が遺した物をどう扱うか考え、選択する展開となります。
現代を生きる人間すべてが前世代からなにを引き継ぎ、次世代になにを託すのか。それは輝かしい財産か負の遺産か。
団塊の世代に対する総括、新しい時代の舵を切ることの高鳴りと、少しの心細さを、SF調ヒューマンドラマとして軽やかに組み立てるつもりです。

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