続・総合診療専攻医1年目がまずやるべきこと〜J-GOALとFami-Logの評価項目を理解する〜
最終更新:2024年4月20日
早くも5月も半ばを過ぎました。
桜の時期は過ぎ去り、藤の花の季節を謳歌している今日この頃です。
さて、何かとややこしい総合診療領域の研修修了要件。
以前の記事で新総合診療専攻医向けの記事を投稿したところ、お陰様で大きな反響をいただきました。
読んでくださった皆様、ありがとうございました。
まだの方はぜひお読みください!
研修を無事修了して専門医を取るためには、「システムを使いこなすことが重要。早めにログインを!」と前回の記事で書きました。
ただし、総合診療専門医だけでなく、一緒に新・家庭医療専門医まで目指す人は、専門医機構のシステムと日本プライマリ・ケア連合学会のシステム両方を使いこなすことが必要なのです!何ともややこしいですね・・・。
改めてシステムの定義をおさらいすると、以下のようになります。
・J-GOAL:専門医機構による、「総合診療専門研修」全体でのオンライン研修手帳。
・総合診療版J-OSLER:専門医機構による、「総合診療専門研修」の内科研修だけの、記録と評価を行うシステム。
・Fami-Log:日本プライマリ・ケア連合学会による、「新・家庭医療専門研修」のオンライン研修手帳。媒体はgoogle spreadsheatです。googleアカウントログイン下での記載をお勧めします。
システムを使いこなすためには、それぞれの評価項目を把握し、こまめに記載することが大事と思われます。
このnoteでは、
総合診療研修のオンライン研修手帳であるJ-GOALと、
新・家庭医療専門研修のオンライン研修手帳であるFami-Log、
実際に何を記載しなければならないのかについて、自分の思考の整理も兼ねてまとめています。
せっかくですので、今回も公開することとしました。
念の為、実際のJ-GOALとFami-Logの画面は出さず、文章のみでの解説です。ぜひ、ご自分のページにログインして照らし合わせながらお読みください。
<注意!>
J -GOALにおいては、ログインしたらまず、「担当指導医申請」をすることから始めましょう!
でないと、プログラム責任者や指導医からのコメントが得られなくなります。
総合診療:J-GOALで記載しなければならない内容
J-GOALで記載しなければならない内容について、実際にJ -GOALで割り振られている項目番号を抜き出すと以下のようになります。
2. 具体的目標の達成状況と自己評価
Ⅰ. 手技
Ⅱ. 症候
Ⅲ. 病態・疾患
Ⅳ. 医療・介護の連携活動 Ⅴ. 保健事業・予防医療 Ⅵ. 在宅医療
(ここまではFami-Logの5と共通!)
Ⅶ 救急科研修の記録
Ⅷ〜Ⅹ 小児科研修の記録
3. 実務評価の記録(mini -CEX、360度評価、CbD)
4. 臨床現場を離れた学修の記録(講習会などの参加記録)
5. 学会・研究会等での発表・参加記録
6. 経験省察研修録(新・家庭医療のポートフォリオとは別物!)
7. 研修振り返り
新・家庭医療:Fami-Logで記載しなければならない内容
同様に、Fami-Logで記載しなければならない内容について、Fami-Logで割り振られている項目番号を抜き出すと以下のようになります。以下の太字は指導医のコメントとサインが必要なものです。
4. ポートフォリオ作成の記録
5. 経験目標と自己評価(Ⅰ〜Ⅶ)
6-Ⅰ. 教育カンファレンスの記録
6-Ⅱ. 職場基盤評価の記録(360度評価、CbD、Mini-CEX)
7. Off-JT受講記録
8. 地域保健活動の記録
9. 論文・学会発表の記録
10. 振り返り(定期・1年毎)
J-GOALとFami-Logで重複している記載内容
総合診療専攻医であり、新・家庭医療専攻医である人たちにとって心理的なハードルとなるのが、J-GOALとFami-Logで被っている内容でも、それぞれの媒体での記載が求められることです。理由は、総合診療は専門医機構が、新・家庭医療は日本プライマリ・ケア連合学会が、それぞれ評価を行うからです。評価において両者間での連携はないと明言されています。
重複している項目は、整理すると以下の4点になります。
①「具体的目標の達成状況と自己評価(J-GOAL)」=「経験目標と自己評価(Fami-Log)」
J-GOALの2「具体的目標の達成状況と自己評価」のⅠ〜Ⅵまでと、Fami-Logの5の「経験目標と自己評価」のⅠ〜Ⅵまでは実質同じ内容です。
中身としては、以下のようになります。
Ⅰ. 手技
Ⅱ. 症候
Ⅲ. 病態・疾患
Ⅳ. 医療・介護の連携活動 Ⅴ. 保健事業・予防医療 Ⅵ. 在宅医療
上記は項目自体ほぼすべて一致していますが、それぞれの媒体で登録しなければなりません。
いずれも、研修修了までにレベル3ないし第3段階を達成することが求められます。
②「実務評価の記録(J-GOAL)」=「職務基盤評価の記録(Fami-Log)」
J-GOALの3「実務評価の記録」と、Fami-Logの6-Ⅱ「職務基盤評価の記録」は実質同じ内容で3つあります。ただし、それぞれで評価時期が微妙に異なります。
① 診療場面評価票mini-CEX
総合診療では3ヶ月に1回以上が目安
新・家庭医療では6ヶ月に1回以上が求められる
② 他職種による360˚評価
総合診療では3ヶ月に1回以上が目安
新・家庭医療では6ヶ月に1回以上が求められる
③ ケースに基づくディスカッション(Case-based Discussion)評価
総合診療でも、新・家庭医療でも、3ヶ月に1回以上
J-GOALの場合は、「研修手帳」のタブ⇨「実務評価の記録URL発行」でリンクを作成し、予め登録した指導医に送信することで評価してもらえるようになります。
Fami-Logの場合は、「日付」「評価の種類」を記載・選択し、指導医からコメントとサインを記載してもらう形式です。
メインとしては先にJ-GOALで指導医に評価してもらい、その内容をFami-Logに転記するのが効率的かと考えます。
③論文・学会発表の記録
J-GOALでもFami-Logでも、論文・学会発表の記載が求められます。
J-GOALの場合は分野の指定はありませんが、Fami-Logの場合は基本的に、家庭医療分野に関わる論文・学会発表が研修修了要件となるそうです。詳しくはプログラム責任者の先生に確認してみましょう(最終更新:2024年4月20日)。
④定期的な振り返りと1年毎の振り返り
J-GOALでもFami-Logでも、振り返りの記載は必須です。
記載間隔はいずれも定期的(1〜数ヶ月に1回)と、1年毎です。
定期的な振り返りの内容は比較的自由な記載で良さそうですが、1年毎の振り返りではどちらのシステムでも、「この1年で自分はどのように成長したか」「やり残した課題は何か」「次の1年の目標は何か」を記載する必要があります。
提出期限について
J-GOALも、Fami-Logも、年次終了毎、及び研修修了時に提出することが定められています。
ただし違いは、提出方法です。
J-GOALは、赤の「指導医に提出」ボタンを押して初めて提出になります
(こまめな普段の記載の際にはオレンジの「一時保存」ボタンで保存される)。
一方のFami-Logは、提出といっても、期限までに書いてさえあれば良いそうです。学会の担当委員会が所定の時期に閲覧して確認するようです。
まとめ
総合診療のJ-GOALと新・家庭医療のFami-Logの両方を使いこなすためには、まずはそれぞれの評価項目を把握することが大事。
記載内容が被る部分も多いが、後で面倒になるのを回避するためにも、こまめにログインして記録をつけることが望ましい。
参考資料
・日本専門医機構「J-GOAL」
・日本プライマリ・ケア連合学会「Fami-Log」
・日本専門医機構 総合診療専門医検討委員会「研修手帳」
・日本プライマリ・ケア連合学会 2023JPCA合同オリエンテーション配布資料