【ジャーナル】こうち女性起業家応援プロジェクト連続セミナー #7 地域の交流拠点が生んだ新たなコミュニティビジネス
「こうち女性起業家応援プロジェクト」は、起業や育児休業後の職場復帰や再就職、移住後のキャリアチェンジ、そして、キャリアアップを目指す女性を幅広く支援するという想いから、各分野で活躍する起業家をゲストに迎えたセミナーや、生活目線から考える事業アイデアの創造に向けた学びの機会を提供し、高知の女性が自分事として取り組むことのできる新たなチャレンジを後押しすることを目指し、開催しております。
第7回目の講師は、辻 悦子さん(企業組合でる・そーれ理事)。
『地域の交流拠点が生んだ新たなコミュニティビジネス』と題して、起業に至った背景や地域活動を行ってきたこれまでのことなどについてお話しいただきました。
子育て支援から地域へ
コミュニティカフェ『でる・そーれ』の簡単な説明のあと、NPO法人を立ち上げた経緯について話してくれました。辻さんのプロフィールには「地域みんなで子育て」という言葉が入っています。
元々、平成16年に設立した、子育て支援のNPO法人『子どもネットワーク・すてっぷ』の代表をしていた時期もあり、その頃はNPOに加え、『津軽鉄道サポーターズクラブ』の役員、平成19年からの『でる・そーれ』の活動と、何足のわらじを履いているか分からないほど、大変な日々を送っていました。
30歳くらいから子育て支援の活動をしている辻さん。
自身の子育てを経験し、多くのお母さんたちと触れ合うことや、やりたいことをやれる環境を作ることの楽しさを感じ、地域活動に目覚めます。
実は、この子育て支援が後々、『でる・そーれ』を立ち上げたきっかけになりました。
辻さんの生まれ育った、五所川原町は青森県最北の地域。当時、求人倍率も0.22と低く、仕事がないので生業を作ろう、という動きが出てきました。そこで誕生したのが『つながる絆パーティー』。
この地域に住む、様々な職業を持つ18人のメンバーが3つのグループに分かれ、プロジェクトに取り組みました。
辻さんはその中の『駅前販売プロジェクト』に所属。この時点でカフェの発想はありませんでしたが、何をするにも信頼が必要なので、そのためのネットワークを作り、地域を元気にしよう、と地域に開かれた場を作り、色んな形に発展させる構想は話していました。
信頼とネットワークが必要
1年間考え、徐々に動いている内に様々な地域の課題が見えてきました。そのひとつが、女性が働く場所が少なく、限られていることでした。
ちょうど辻さんは、子どもたちもだいぶ手を離れ、40歳を過ぎた頃。
色んな活動をしながら「私自身はどうしたいんだろう」と考えていました。その中で必要だと実感したのは、やはり信頼やネットワークでした。
『つながる絆パーティー』の事業は、2年間の県の重点事業。
1年目は、勉強会、2年目は、実践として、空き店舗があった津軽鉄道を活用する予定でしたが、東北のビジネスプランコンテスト(ビジコン)に出るための起業プランを書くことになりました。
このときに作った企画書は「小さな一歩で地域を明るく元気にするコミュニティビジネス」。
地域の信頼できる人たちで基盤を作り、更に信頼を重ねて経済効果を生み出す、そして地域が元気になる、というイメージを作っていました。
子育て支援の活動をしていたので、子育ての仲間は沢山いたのですが、その中にビジネスの視点を持っている人はほとんどいませんでした。
ビジネスの経験値もなく、お金や儲けの話はダメだという風潮を感じることも。こうした考えの違いに違和感を抱いていた、と言います。
「今考えると甘いかもしれませんが」と前置きし、皆が儲かる仕組みなら皆に応援されて、月3万円稼げるなら外に勤めに行くよりも良いのではないか、と考えていました。
コミュニティカフェをオープン
子育て支援を長くやっていたこともあり、商店街の人は皆、顔なじみ。
何かやろうとするときには、後押ししてくれる状況ではあったものの、空き店舗活用は家賃の問題をはじめ、ハードルがかなり高かったそうです。
必要に迫られて、ではありましたが企画書を作って、ビジコンに出る動機は、自分たちの中でタイムリミットを作り、想いを皆に聞いてもらうことでした。ビジコンでは特別賞を受賞。
廃線の津軽鉄道を救うコミュニティビジネスは応援されましたが、子育て支援を一緒に長くやってきたメンバーからは、素人がビジネス参入することに対して、失敗を危惧する声も聞かれました。
「どっちにしよう」と悩んだ辻さんでしたが、子どもはやがて大きくなり、手を離れるので「次のステップにいきたい」と思いました。ビジネスプランを作って約半年、ビジコンからたった1カ月、怒涛の勢いでコミュニティカフェをオープン。
暗い雰囲気の空き店舗でしたが、周りの協力のおかげで温かいスタートを切ることができました。
12月1日から4カ月間の冬の期間には、『ストーブ列車』という企画を実施。中でするめを焼いたり、ストーブ酒を飲んだりできるような観光列車になっています。
このときに初めて作った加工品が、列車で燃やす石炭を真似た『石炭クッキー』。このクッキーは売り上げの一部(10%)を津軽鉄道に寄附しており、ちょうど10年で約100万円になりました。
この活動は『津軽鉄道サポーターズクラブ』と一緒に行っているため、カフェのスペースを共有しています。クラブはただ人が集まるだけなので、ビジネスの場としてもやっていたからこそ、場所が維持されたのではないか、と話します。
任意団体から企業組合に
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