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【レポート】「自分の想いを見つめ、マイプロジェクトを描く」~こうちマイプロジェクト道場第2期 #2


こうちマイプロジェクト道場は、一人ひとりの本当にやりたいことを対話とアクションを重ねながら進める学び合いの場です。
マイプロジェクト(マイプロ)とは、「わたし」が感じている些細な問題意識や違和感、疑問に素直に耳を傾け、その「何か」を「プロジェクト(Project)」の形にして「やってみる」ことから始まる、自分と世の中の変化を仲間同士で面白がり支え合う取り組みです。周りの目や評価を気にしないで、「自分の好き・やりたい」という想いに正直に向き合い、一歩踏み出すことを仲間と共に目指すことがこの講座の目的となります。
第2期では、自分らしい生き方で全国各地で挑戦を続けているゲストを迎え、彼らのストーリーを共有しながら、参加者一人ひとりの想いを掘り起こしていきます。

第2回目は吉冨慎作さん(NPO法人土佐山アカデミー 事務局長)。
『自分の想いを見つめ、マイプロジェクトを描く』と題して、高知に移住するまでの経緯や現在のチャレンジ、そして志についてお話いただきました。

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吉冨 慎作 氏(NPO法人土佐山アカデミー事務局長)

スペースシャトルのロボットアームに魅せられ、宇部高専入学。ロボットコンテスト等で活躍するも、デザイナーに転向。その後外資系広告代理店へ移籍し、企業ブランディング・Webキャンペーン・商品開発・TVCM・ポスター制作等に関わるなかで坂本龍馬のポータルサイト「龍馬街道」を立上げ高知と深く関わっていく。2013年2月、NPO法人土佐山アカデミー(以下、土佐山アカデミー)の想いに共感し移住を決意。様々なフェーズを経て、現在は「中山間地域の課題を教材に変え、学びの場を作り出すこと」を目指して活動中。レゴ®シリアス・プレイ®を使った研修などにも力を入れている。面白き高知をもっと面白く。土佐の山間より、チャレンジします。


NASAに入るはずが…TOSA!?
「実は、入院していました(笑)」とばつが悪そうに切り出した吉冨さん。自分の体調悪化にも気付かないくらい夢中になって、自身が事務局長を務める『土佐山アカデミー』の仕事に打ち込んでおられるようです。
土佐山アカデミーは、高知市の土佐山という中山間地域を舞台に、地域の課題を教材にして地域を学びの場にしよう、そしてそこから生まれた新たな出会いやアイデアを育んでいこう、というビジョンを描くNPO法人です。吉冨さんは現在まで6年間、ユニークなアイデアを次々と形にして、高知の小さな中山間地域から世の中にインパクトを与えてきました。

そんな吉冨さんですが、実は高知で生まれ育ったわけでも、地域で何か活動しようとしていたわけでもありません。
出身は山口県。スペースシャトルのロボットアームを作ることを夢見て、地元の高専に進学しました。

-もともとはNASAに入りたかったんですけど、土佐に来てますね(笑)

と、今でこそジョークに変える吉冨さんですが、当時は理数が得意な周りの生徒たちについていけず、成績は落第ギリギリ。自身の興味は、得意分野である創作や企画へとシフトしていきました。


就職―疑問の付きまとう日々
遅ればせながら卒業後に、スーツを着てネクタイをしめてする仕事に対して、「何か違うよなあ」と感じ、自分はどうしたいのか実家で4か月間考えていたといいます。
結局、自分のできること、やりたいことで世の中に価値を生み出そうと考え、地元のデザイン事務所に就職した吉冨さん。世はインターネット普及のはしりの時期。ホームページを作れる人材が引っ張りだこの中で、高専で学んだパソコンの知識がある吉冨さんはホームページ制作の仕事を任されます。

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在籍した8年半でたくさんのことを学びました。特にWebの事業を担当してからは、チームが1人から10人以上に増えており、当時20代後半だったマネジメント能力ではなかなかまとめるのも大変でしたが、その時のマネジメント経験は貴重なものになったそう。その後、インターネットや紙媒体だけではなく、より総合的なブランディングや情報発信を扱う場を求め、外資系広告代理店に転職。「広告は、イタズラだ」という信念の元、広告キャンペーン、ブランディング等を手がけていきました。


好きなものの中に、ヒントがあった
そんな折、吉冨さんは上司から「仕事以外に面白いことやれよ」と助言を受けます。吉冨さんは「人と人とをつなげたい」という想いを胸に、学生時代から大好きだったという「坂本龍馬」と特技の「Webデザイン」を使って、龍馬ファンが集うWeb情報ポータルサイト『龍馬街道』を制作し、高知との縁を深めていきました。
一方で、吉冨さんの生き方を大きく揺さぶった出来事がありました。東日本大震災です。
-当時、広告含めお祝いごとはすべて自粛ムード。日本って、広告ってなんか脆い。
広告代理店での仕事に魅力を感じつつも、よりリアルな現場でプレイヤーとして動いてみたいという思いを抱くようになった吉冨さん。「デジタルだけでは何も解決できない。地に足をつけ自分のリスクで自分の面白いと思うのを広告してみたい」。そんな思いが強くなりました。

そして出会ったのが、当時設立されたばかりの『土佐山アカデミー』。理念や想いに深く共感した吉冨さんは、人材募集を見るなりすぐに応募し、ついには高知に移住、現在の役職に至ります。


課題解決をナリワイにする―次の100年のために
土佐山アカデミーでは、地域課題を教材に、地域の人を先生にして、次の100年を生きていくための学びの場を提供しています。
「100年先を考える」という思想は、世の中の「効率・経済を優先の社会」とは相反するものがありますが、世の中が震災などの経験を通して「今のままではまずい」と感じ始めたときこそ、田舎の人が自然と体得している「自然のルール」を大切にしようという考えから掲げられました。

-あるものは、大切にする
-ないものは、作る
-生えてくる以上のものは、切らない
-そこにずっと住むから、関係を大切にする

人が自然の一部として、この先も長く文化を紡いでいくことを重要視する、持続可能性に基づいたルールです。
吉冨さんは地域の人たちから習ったことを自分なりに解釈し、それをもとに様々なアイデアを形にしていくことでルールを受け継いでいく次世代を育てています。

吉冨さんのナリワイ、それは地域の課題を解決すること。それもあくまで「面白がって」。課題を、どうやって面白く、互いに利益が出るように変換していくのか。

例えば、世界最速のそうめん流し。吉冨さんは土佐山の急傾斜を利用して、そうめん流しのイベントを開催しました。
土佐山の地域課題として、管理しきれない竹林の拡大があります。その竹を切って、削って、組み合わせて、そうめんを流すレールをイベントの参加者の方々と地域の方とで作ることで、竹林の拡大という課題を知ってもらい、課題の解決の糸口に微力ながら貢献。その際に、土佐山の急傾斜を活かして「世界最速」を目指そうというのが、面白がるためのアイデアです。実際にそうめんを流すときには、とことん最速にこだわります。そのようなイベントを展開していると、大企業が面白がって「流体力学」の分野で協力してくれることになったりと、様々なつながりが生まれています。
大企業が流体力学をそうめん流しに活かすという「才能の無駄遣い」に本気で取り組んでいくいたずら心、そして、遊ぶことと学ぶことを探求する姿勢がはっきりと伝わってきました。
課題があるところを如何にチャンスに変えて、今まで学んできたことを活かし課題に取り組んでいけるか-土佐山を拠点に、吉冨さんの挑戦は続きます。

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ライフヒストリーや気づきのシェア
次に参加者全員で、自身のライフヒストリーやプロジェクト、吉冨さんのお話を通して得られた気づきを共有する対話ワークを行いました。

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参加者それぞれが今までの人生をグラフに書き起こし、自分がどんな人生を歩んできて、そこでどんな気づきや教訓を得たのか紹介し合いました。また、やってみたいプロジェクトについても紹介し、フィードバックを交換し合いました。吉冨さんからもたくさんのコメントやアドバイスをいただき、新たな気づきがあった参加者もいました。

チェックアウト
最後は、チェックアウトと題して一人ひとりが今日の感想を話しました。
参加者からは、「吉冨さんの地域や生き方に対する考え方が参考になった」「自分のプロジェクトについてもう一度考え直してみたい」といった感想が出ました。

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総括
中山間地域という課題が山積しているところで、あえてそれを宝の山、学びの場と捉え、思い切り楽しく活用してしまう吉冨さんのやり方には、本当に社会をワクワクさせる力があるように感じました。参加者の方々も、吉冨さんの生き方から新たな発見やアイデアが生まれたのではないかと思います。
マイプロ1期や女性起業家応援セミナーなどで顔なじみのメンバーも多く、少人数のアットホームな雰囲気の中でダイアログが進んだため、お互いに対する信頼や応援の気持ちが確実に大きくなっているように感じる回となりました。


(レポート:陶山智美)


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