【ジャーナル】こうち女性起業家応援プロジェクト連続セミナー #9 自分らしい仕事をつくる-食生活のアップデートを提案する食卓研究家という生き方-
「こうち女性起業家応援プロジェクト」は、起業や育児休業後の職場復帰や再就職、移住後のキャリアチェンジ、そして、キャリアアップを目指す女性を幅広く支援するという想いから、各分野で活躍する起業家をゲストに迎えたセミナーや、生活目線から考える事業アイデアの創造に向けた学びの機会を提供し、高知の女性が自分事として取り組むことのできる新たなチャレンジを後押しすることを目指し、開催しております。
第9回目の講師は、新田 理恵さん(TABEL株式会社 代表取締役、食卓研究家)。
『自分らしい仕事をつくる-食生活のアップデートを提案する食卓研究家という生き方-』と題して、起業に至った経緯や現在、取り組んでいる地域資源を活かした事業についてなどお話していただきました。
新田 理恵さん(TABEL株式会社 代表取締役、食卓研究家)
管理栄養士であり国際薬膳調理師。薬草キュレーター。
食生活のアップデートを目標に、料理とその周りにある関係や文化も一緒に提案し、地域の商品開発やレクチャーを行っている。
日本の在来ハーブ•薬草と出会い、リサーチをはじめて伝統茶ブランド{tabel}を2014年に立ち上げる。
2016年8月にTABEL株式会社へと法人化し、薬草のある健やかな暮らしを提案している。
2018年初春、薬草大学NORMを開校。著書「薬草のちから(晶文社)」も同年5月に発売。横浜市立大学の非常勤講師をはじめ、大学や各地でのゲスト講演やワークショップなども行う。
食生活のアップデート
『食卓研究家』という肩書を作り、活動をはじめた新田さん。
元々は管理栄養士で、食と健康をテーマにした提案やフードコーディネートの仕事もしており、薬膳調理師の資格も持っています。
3年前に『TABEL株式会社』を立ち上げ、現在は薬草茶の販売を中心に事業を行っています。新田さんが目指しているのは「食生活のアップデート」。
次世代の人たちに、どういう風により良い食生活を提案できるか、残していけるか、自分たちに実践していけるか、ということを考えながら仕事をしている、と話しました。
差し出されたかわいいパッケージの缶。中身は薬草茶です。薬草茶というと道の駅などで、お茶かどうかも分からない乾燥した草が詰められた状態で、安価で売られていることが多いそうです。
しかし、ハーブティー並みにおいしいものや、飲んだあとに明らかに薬効が体感できるものもあります。そんな薬草茶のパッケージデザインやブランディングを行い、こうした紹介や文化を広めることを中心に取り組んでいます。
普段、私たちが飲むお茶は、緑茶や紅茶など沢山種類があります。
薬草茶には様々な効果があり「飲むお茶が変われば、飲んでいる人の身体も変わる」ほど。
このことは、実は社会を変えるくらいのインパクトや仕組みが生み出せるのではないか、と新田さんは考えています。
栄養学と薬膳
続けて、新田さんが今の仕事に至った経緯を話してくれました。幼い頃は、パン屋の娘として生まれ、食べることが大好きな女の子でした。
転機は高校2年生のとき。
友達が拒食症と過食症を繰り返し始めてしまったり、父親が糖尿病になったりと、食べることは大事ですが、それ故に間違うと凶器になってしまう、という経験をしました。
「食」という漢字は、「人」を「良」くすると分解できます。食の大事さを痛感し、食べることが好きだからこそ、人を良くするための仕事をしたい、と栄養学と薬膳の勉強を始めました。
栄養学は、性質的に大人数をまとめて管理する給食や病院食に向いているのですが、新田さんは「一人ひとりにあったものや、季節に合ったものという柔軟な食べ方の提案ができないか」と、学生のときから悩んでいました。
そんなとき、同時に勉強し始めた薬膳は、食材の働きや相性、効能を柔軟に取り入れていくことができるものだと、知りました。
栄養学と薬膳は「分野も異なっていて得意なことも違うからこそ、合わせるともっと良いことができる」。
最初に栄養学で構成を決め、その後に薬膳で食材の働きを活かすためのものを選ぶ、という住み分けによって、良い食事が提案できる、と思ったそうです。ただ、薬膳は、特殊な食材を使うことから、勉強が続けにくい、国産のもので出来ないか、など、新田さんの周りでも困っている友人が多くいました。
薬草文化との出会い
自分で実践しようとしても、食生活という習慣を変えることはとても難しいこと。お昼ご飯を例にとっても、時間も行ける範囲も限られています。
そんな中でも出来ることとして考えられるのは、少量でも身体にしっかり効いてくれるスーパーフードの様なもの。
探している最中に、国産の薬膳の食材は「薬草文化」という文脈で語り継がれている食材だと、気付いたのが5年前のことでした。
日本に自生している植物は約7,500種類。その内の5%から10%位が薬草だと言われているので、大体350種類生えています。
薬草と言われてもピンとこないかもしれませんが、身近なところだとヨモギやイチョウの葉っぱもその一つ。在来種のように、その土地ならではの味や植物が取れたりするそうです。
天然物で農薬が使われていないので、安全だという魅力もあり、カフェインを取れない人やリラックスしたい人向けに、ノンカフェインのお茶として提案することもできます。
薬草の中には、ある人にとっては苦くて飲めない無理な味でも、効果がある人には抵抗なく飲める味のものもあります。
不思議なことに「自分の身体にとって必要なものはおいしく感じる」のです。皆が持ち合わせている必要なものを食べようとする本能や身体は正直さを感じさせてくれることも、薬草のおもしろさのひとつです。
ブランドを立ち上げたきっかけ
新田さんが最初に探し始めたのは、蓮の葉っぱのお茶でした。
薬膳の勉強をしていたとき、お腹の調子を整えるお茶として紹介されているのを目にし、自分の体質にも合うので飲もうと、当時住んでいた横浜の中華街で購入しました。
そのときに「日本にも蓮の葉がこんなに生えているのに、なぜ国産じゃないんだろう」と不思議に思い、ただの好奇心で探しに行ってみました。
そのときに出会ったのが、熊本県で在来種の希少な蓮根を無農薬栽培している農家さんでした。手間暇がかかりますが、小ぶりな分、味が詰まっていて栄養価も高く美味しい蓮根。
その蓮の葉をもらい、お茶にしたところ「今までの蓮の葉は何だったんだろう」と衝撃を受けるくらい美味しく、金木犀のような甘い香りがする優しいお茶ができました。
この出来事から、農家さんを応援したい気持ちが芽生えたと同時に、こんなに良いものがなぜ知られていないんだろう、という疑問が浮かびました。
よそ者の自分が、彼らと一緒に出来ることは何か、を考えていたとき、日本の薬草産業の現状を知ることになります。
昔は各家庭で作られるような親しみやすい存在でしたが、40年前のバブルだった時期を境に、日本国内での消費は減少。
産業自体が弱ってきている状態でした。買い手が知る機会があるだけで変わるのに、と思いながらも、作り手である農家さんの課題にも目を向けました。
ブランディングや営業が苦手、使い手とコミュニケーションを取る余裕がない、農家さんにとって別分野の難しいことをサポートし、町や人を繋ぐ部分で役に立てたら、という想いから『{table}』というブランドを作りました。
薬草茶の市場を変える
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