【ジャーナル】[Part2]こうち100人カイギ vol.17 内田 龍太郎さん(遠藤青汁高知センター 本社統括部長 関西支社所長)/都筑 正寛さん(MASACASA TACOS / MASACASA MUSIC 代表/日高村地域おこし協力隊)
2019年1月よりKochi Startup BASE ®︎にて始まった「こうち100人カイギ」。
高知の様々な分野で活動するゲストを、毎回5人お呼びして、生き方やその思いについて語っていただいております。全部で100人になったら、終了なこの企画。
今回は、2021年2月16日(火)にKochi Startup BASE®︎での現地開催とzoomを使ったオンライン開催にて行いました。
この記事では、17回目の100人カイギにて登壇いただいた5名、1人1 人の話にフォーカスを当てています。
参加したくても参加できなかった方、この方のお話が聞きたかった、など様々な方に読んでいただければ幸いです。
<こうち100人カイギ vol.17の登壇者>
5名それぞれの話を
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※お名前をクリックすると、その記事に飛べます。
内田 龍太郎さん(Part2掲載)
都筑 正寛さん (Part 2掲載)
古川 ちなさん (Part 3掲載)
山口 彩さん (Part3掲載)
2人目の登壇者は、遠藤青汁高知センター 本社統括部長 関西支社所長
の内田 龍太郎さん。
高知県出身、高知県在住。
学生時は、ボランティア活動に目覚め、『自分が楽しければみんなも楽しい』と信じる、自己中心的な考えを持つ。その後、保育士、飲食業を経て、5年半前から現在の遠藤青汁に就職する。2年目で生産課課長を拝命後、4年目に統括部長を拝命。仕事で大事にしていることは、『結果を出す』こと。結果が全てとは思っていないが結果の出し方がわかれば何事にも意味を見出すことができ、何より楽しめるようになると信じている。
栄養価の高いケールの存在
誰もが一度は聞いたことのある『遠藤青汁』。内田さんはその『遠藤青汁』の本社統括部長として現在働いています。生産から製造をし、宅配営業や通販など全ての業務を行う、今で言う珍しい6次産業の会社です。今では誰もが知っている『青汁』という商品。しかし、元々これは販売する目的で作られたものではありませんでした。その昔、世界中で薬がどんどん作られている時代に、岡山病院の名誉院長にまでなった遠藤仁郎博士という方がいました。この方は、いかに薬などに頼らず、人の身体を良くするかという研究をいち早く行い、地中海が原産で栄養価の極めて高い『ケール』という野菜にたどり着きました。この『ケール』を絞った栄養価満点の飲み物として『青汁』が生まれたのです。
ちなみに、私たちの生活に馴染みの深いキャベツやブロッコリーは、このケールを品種改良してできた野菜。この二つの野菜は、ケールに比べ安くて使い勝手が良く、多くの食卓に並びますが、実はケールの方が2倍から60倍ほど栄養価があります。料理しやすく、安く手に入れられるというのももちろん大切なことですが、手に取る時に一度原材料を見て『青汁』の素晴らしさを知ってもらいたい、と言葉が続きました。
安全と新鮮さが売り
内田さんの勤める『遠藤青汁』は創業45年目。大手会社でも飲みやすくするために粉末状で『青汁』を取り扱っているところもありますが、『遠藤青汁』では生のものに拘った100パーセント『青汁』を届け続けています。農薬を入れて、化学肥料を入れて作ることは簡単ではありますが、遠藤仁郎博士の考えを大切に、会社の売りは無農薬、無化学肥料であること。そして新鮮であることです。
現在、南国市で数人の農家さんが栽培してくれていますが、ケールは冬場に育つ野菜のため、高知のような温暖な気候の土地では年間通しての栽培は難しく、夏場は標高の高い久万高原や阿蘇の方で栽培してもらっています。たくさんの農家さんの協力のおかげで、年中新鮮なケールを使い、栄養価たっぷりのものを届けることができていると話しました。
自分が想像のつくことは必ず実現する
内田さんは『遠藤青汁』に勤め出してまだ6年目ですが、2年目で生産課課長、4年目で現職である統括部長に任命されました。これは、会社創業45年の歴史のなかで、最速の任命だそうです。この結果に対して、「目的と目標を持って当たり前に実践してきただけ」と内田さんは言いました。自身で考え、その想像した未来に対して必要なことを考え、実践していくこと。そこには「何故それを行うのか」という目的、目的を目指す上で、どうなりたいのかという数値的な目標をしっかり出します。
具体例としては、叶えたい目的を行いたい順に並べ、それに対して簡単な順番で方法や手段を検討していきます。次にそれをスケジュール化。ただ当てはめるのではなく、優先度、重要度をランク分けし、早く取り掛かる必要があるものから並べ、その通りに進めていきます。そして、ここで大事なことが一つ。それは、行った結果に対して反省を加えていくことです。実践してみてどうだったか、などといった結果を一つずつきちんと分析。自分が考え、動いたことは全て意味があることでありたい、そのためにきちんと駄目なものでもダメだったと結果を出していくことが必要です。
一人からチームへ
この一連の流れをくりかえすことが、口だけではないということの立派な証明になります。内田さんはそれを入職してずっと続けてきました。そしてその都度、他の社員たちに思いを直接伝えていきました。元より自分自身、「ダサい」「格好悪い」と言った言葉を言われるのが酷く嫌だったので、やらなかったらかっこ悪いと思われる状況を自分から作らないように、有言実行を心がける日々。自分のためにコツコツと行い続けた結果、現在の統括部長の話が舞い込んできました。
『遠藤青汁』は6次産業として、生産からお客様に届くまでを一貫して行っていますが、宅配を行うことや『青汁』自体に対して、「古臭い」と周囲から言われることもあります。しかし、内田さん自身これは逆にチャンスだと捉えています。これからは自分自身だけの問題ではなく、会社全体の問題に。どういったことを行う、いつまでに行うということを明確に、黙々とそれに向かって進むことをチームとして、会社一丸となって取り組んでいきたいと話しました。
3人目の登壇者は、MASACASA TACOS / MASACASA MUSIC 代表/日高村地域おこし協力隊の都筑 正寛さん。
1971年生まれ。横浜市出身。
ロサンゼルスで20年、音楽製作、ツアークルー、クラブマネージャーに携わり、2018年帰国、高知移住。レコード屋、イベント、タコスで、繋がりをつくり、2019年より、 日高村の地域おこし協力隊に。日高酒蔵ホールでのカフェ経営、イベント企画を行ない、ロサンゼルスのアーティストも招喚。また、ロサンゼルスのソウルフードでもある、タコスを、高知の素材を使い、 酒蔵、キッチンカー、日曜市などで 紹介、販売を行なう。高知の伝統食、既存の文化を基に、ミックスカルチャー、音楽と食を繋ぐ形での起業、定住をめざしている。
アメリカでの生活
都筑さんは現在、日高村地域おこし協力隊に属しながら、自身で音楽活動やメキシコの代表料理である『タコス』の紹介、販売を行っています。元々神奈川県横浜市出身で20歳から地元のホテルに就職し、12年後の1993年に渡米しました。ワシントンで喫茶店を経営しましたが、その頃はまだ志もはっきりない状態だったため、これでは駄目だと2年後に帰国。帰国後就職しましたが、渡米に対して再挑戦したいと思い、4年後、「今度はやりたいことをやる」と自身に誓い、再度渡米しました。昔からバンド活動を行っていたこともあり、今度は好きだった音楽に携わる道へと進むことを決め、レコーディングスクールに通うことに。ロサンゼルスを拠点に、ツアークルーとして世界中を旅したり、レコーディングエンジニアとして活躍したり、ジャズクラブのマネージャーなどと経験を経て、再度自分の店を持つこともできました。こうした音楽を中心とした生活をする中で欠かせなかったのが、ロサンゼルスでのソウルフード『タコス』だったと話します。
美味しいタコスを日本へ
20年ほど暮らしたアメリカから高知へ移住したのは2018年。きっかけは、東日本大震災でした。日本にいる家族が大変な目にあっていることを耳にし、自分は一体何をやっているのだろう、家族の近くにいた方が助けられることがある、そう思った都筑さんは日本に帰国することを決意。日本に帰るのであれば、アメリカでの生活で培ったものを利用できないだろうかと考えたところ、一番に思い浮かんだのが、現在活動している『タコス』の普及でした。
都筑さんの長年過ごしていたロサンゼルスは、どこに行っても『タコス』があるまさに『タコス王国』。現地の友人からの『日本はすごくご飯が美味しいけれど、美味しいタコスがない』という言葉が胸に残っていました。
しかし、タコスの素材であるハラペーニョなどの唐辛子は日本では高く、これをなんとかしなければと思い、まずは日本各地を旅してまわることに。
そんな中、四国でゲストハウスを営む友人の元に訪ねた際、別の友人に「明日高知にいくから来ないか」と誘いを受け、たまたま高知にいくことになりました。
外国生活での経験を生かして
高知に向かい、最初にたどり着いたのが日曜市。都筑さんは渡米中、外国の様々な場所に訪れ、朝、時間がある時にはその土地の市場にも足を運んでいました。高知の日曜市に初めて足を踏み入れ、懐かしさを感じたと言います。おばあちゃんが元気な顔で野菜を売っている姿や、周囲で起こっている活気のあるやりとりに熱を感じ、自分が長年過ごしてきた光景や仲間たちが脳裏を過ぎりました。また、音楽関係でも高知でレコード屋や楽器屋、ジャズ喫茶のマスターなど、さまざまな方とお話しすることができ、外国での自身の経験が生かせる可能性を見出しました。食の面でも、音楽の面でも自分にやれることがあると感じ、高知への移住を決心。まずは、日本の生活に慣れること、横の繋がりを作ることを目的に、高知市中心部でレコード屋とタコスに関する商品の販売を行うチャレンジショップを開きました。そのおかげで高知でのつながりも増え、ロサンゼルスのバンドを招いて竹林寺で公演をすることもできました。今拠点となっている日高村の酒蔵ホールも、そんなつながりでできた大事な縁です。
異文化を広めることで救えるもの
都筑さんが今、活動の軸としている『タコス』の普及。元々美味しい『タコス』を伝えたいという思いから始まったものでしたが、高知に移住し、もう一つ大事にしたい理由ができました。それはメインの食材となる地きびの存在です。地きびは高知県の山間部で伝統的に作られている野菜ですが、生産者の高年齢化、少子化、消費不足などで、生産量は少なくなってきています。この地きびを石灰処理して作れるのが『マサ』という生地、それをさらに平たくして潰したものが『トルティーヤ』。そして、そのトルティーヤに具をのせて、サルサをかけて食べるのが、『タコス』です。
高知に地きびがあるのであれば、高知でも『タコス』が作れるのではないか。さらに、自分が『タコス』を広めることで生産者不足で年々減少している地きびのピンチを防げるのではないのかと考えました。
現在はフードトラックを構え、県内各地をまわったり、移住のきっかけになった日曜市に出店したりと、『タコス』の普及に励んでいます。メキシコでは『タコス』はマヤ文明の頃から伝わっている主食の一つ。高知で見られなかった『タコス』という異文化が広がることで、高知の昔ながらの食材を次世代につなげていけるように、いずれは高知の主食の中に入るようなればいいなと、言葉が続きました。
【総括】
会社史上最速で統括部長に任命された内田さんのお話は、自社の商品や会社についてとても愛着があることを感じられる素敵な内容でした。まだまだ『青汁』に対して、懸念される方も多いですが、内田さんと対話を行うことで、きっと飲みたくなる方は増えるんじゃないかと思うほどその思いにパワーを感じました。
20年以上も外国生活を続け、ひょんな縁で高知に移住してきた都筑さん。
ただ他国の文化を広めるだけでなく、高知の伝統を存続するという理由も重なった『タコス』の普及は、本当に意味ある活動としてたくさんの人に届いていって欲しいと思います。
(レポート:畠中 詩織)
100人カイギとは
一般社団法人INTO THE FABRIC 高嶋 大介氏が「同じ会社に勤めていても、1度も話したことがない人がいる」と気づいたことをきっかけに、会社、組織、地域の"身近な人”同士のゆるいつながりを作るコミュニティ活動を始めました。 2016年六本木で「港区100人カイギ」スタートさせたのを皮切りに、渋谷区、新宿区、相模原市、つくば市、雲南市など全国各地へ広がっています。
100人カイギの一番の特徴ともいえるのが、「ゲストの合計が100人になったら会を解散する」ということ。100人の話を起点に、肩書や職種ではなく、「想い」でつながる、ゆるやかなコミュニティを作ります。
問い合わせ
Kochi Startup BASE®️
住所:〒780-0822 高知県高知市はりまや町3-3-3 GAIAビル2階
運営:エイチタス株式会社 高知支社
Mail: ksb@htus.jp
Webサイト:http://startup-base.jp/