【ジャーナル】[Part 2]こうち100人カイギ vol.9 大石真司(NPO法人オーガニックスタイルこうち理事)/尾崎昭仁(認定NPO法人 NPO高知市民会議)
2019年1月よりKochi Startup BASEにて始まった「こうち100人カイギ」。
高知の様々な分野で活動するゲストを、毎回5人お呼びして、生き方やその思いについて語っていただいております。全部で100人になったら、終了なこの企画。
今回は、2019年10月9日(水)に開催された、vol.9に登壇いただいた5名、1人1人の話にフォーカスを当てています。
9回目の今回は、「NPOで働く」をテーマとし、非営利での社会貢献活動や慈善活動を行う市民団体:NPOで働く5名それぞれの想いについて語っていただきます。
<こうち100人カイギ vol.9の登壇者>
大石 真司さん(Part 2掲載)
尾崎 昭仁さん (Part 2掲載)
河田 将吾さん (Part 3掲載)
田中 愛彩さん (Part 3掲載)
2人目の登壇者は、NPO法人 オーガニックスタイルこうち理事の大石 真司(おおいし しんじ)さん。
高知県長岡郡本山町生まれの62歳、子ども4人、孫6人。
甲南大学経営学部卒業後、住宅メーカー、飲食業、会館支配人、高知市議会議員などを経て平成16年から幼稚園の事務局長として勤務、平成23年には理事、25年には常務理事、令和元年6月に退任し、現在昨年10月に設立した。NPO法人オーガニックスタイルこうちの理事としてオーガニックスタイルキッチンと地域子育て支援センターママンの運営に携わる。10年ビジョンは高知県のこども園・保育園・小中学校の給食をオーガニックすること。
オーガニック給食を目指すきっかけ
大石さんは平成16年から、とある私立幼稚園の事務局長として勤務していました。幼稚園の園児募集は順調だったものの、平成20年、21年と2年連続で園児数が大幅に減少。私立の幼稚園は園児数が一定数いるからこそ維持できるので、2年連続で減ったことは幼稚園存続に関わる大きなピンチでした。そんな中、平成21年の5月、長野県真田町の元教育長出身の大塚先生に出会いました。この方は中学校の校長をしていた時に、給食を地元のお米と野菜を使って提供したり、授業の改善をしたり、花いっぱい運動をしたりと、元々のやり方を大きく改革し、当時荒れていた中学校を非行ゼロ・学力アップにした実績がありました。そんな大塚先生の講演を聞くことができた大石さん。たくさん感化される内容の中から、特に給食部分に目をつけました。「中学生ができるのであれは、乳幼児の頃から絶対にやるべきだ。」と思い立ち、給食改革が始まったのです。
理想の保育園
まずは平成23年1月、私立幼稚園が認定こども園になる際に、県から補助金が出て新園舎を建てました。そのことをきっかけに、自園給食を始めました。当時、まだ主食は玄米ではなかったのですが、地元産の無農薬で作られたお米を使い、なるべく安全なものを中心とした給食づくりからスタート。同じくらいの時期に『はなちゃんのみそ汁』で有名になった福岡県高取保育園の園長先生と出会いました。この保育園は、40年近く玄米の給食を提供している園です。また、この保育園ではこの園ならではの活動があります。それは、給食の時間に園児2人が前に立ち、1から100まで数えること。それに合わせて、他の園児は口を動かします。人間の脳は一口目を100回噛むことで、2口目以降も自然に30回は噛む習慣がつくそうです。玄米給食を提供し続けていること、「一口目を100回噛む」ということを習慣づけていること、高取保育園の活動は、まさに大石さんの思い描いた理想の形でした。
NPOの設立
平成29年10月、大石さんの元に一件の依頼が届きました。高知に蔦屋書店ができることが決まっており、その3階に親子の遊び場を作るので、併設して地域の子育て支援センターを作って欲しいという内容でした。今まで高知市には児童館のような子どもが過ごせる場所が少なく、雨の日に行けるところがないという問題がありました。蔦屋書店ができることで雨の日に行く場所が拡大されることは、乳幼児がいる家庭にとって朗報です。「是非やりましょう。」と、地域の子育て支援センターを作ることが決定。その頃、すでにオーガニックで給食を提供していたので、できれば不特定多数の人が集まる場所で食育推進をしたいと、子育て支援センターに併設して、親子でいけるオーガニックカフェも作りました。これが、NPO立ち上げの大きな要因になり、翌年の平成30年10月に『NPO法人オーガニックスタイルこうち』を設立、12月1日の高知 蔦屋書店のグランドオープンとともに『オーガニックスタイルキッチン』を開店しました。
NPO団体としての活動
オーガニックのカフェを作るにあたり、親子カフェとして営業しているお店を見に、全国を回りました。しかし、どこもカフェの運営だけでは、経営がなかなか難しいという現状を知ります。そこで、オーガニック給食を推進していく為に、高知県内外の企業に協賛してもらって応援してもらおうと、NPO法人を設立して、その活動の一つとしてカフェを経営することにしました。
行くことはできなかったものの、最近東京で行われた『Foods for Children』という会合でも、オーガニック給食をやることはこれから必要なこと、子どもと環境を守る為にやるべきだと話しが出たそうです。全国各地でオーガニック給食を進めていくという動きがあるので、NPO活動の方もこの動きに一番に力を入れてやって行きたいと大石さんは考えています。
10年ビジョンで叶えたいこと
最後に話してくれたのは、先10年のビジョン。大石さんの考えるビジョンは大きく2つです。
一つは保育園、幼稚園、認定こども園など、乳幼児の子どものオーガニック給食の推進。それから小学校、中学校へ。高知市は人口が多いので難しいかもしれないが、まずはお米から変えていきたいと話しました。
もう一つは、オーガニックタウン構想。そこには、自然栽培や有機栽培の農園、そこで採れたものを並べるオーガニック直販所、小中学校、障害者施設、高齢者施設、森のこども園など様々な施設を設置したいと思っています。中でも特に、都会からこの場所にきて、元気になってまた帰れるような自然治癒施設の仕組みを作りたいと考えているそうです。高知には使われなくなった学校なども多い為、廃校活用など今ある資源を使ってできたらといいと、今後の構想について話してくれました。
3人目の登壇者は、認定NPO法人 NPO高知市民会議の尾崎 昭仁(おざき あきひと)さん。
1991年生まれ、高知市出身。 学生時代より市民活動に携わり、卒業後NPO法人に入職。8年目。管理を行う市民活動サポートセンターで市民活動団体等の支援を行う傍ら、人材育成事業「とさっ子タウン」の事務局を務める。高知市こどもまちづくり基金事業「こうちこどもファンド」などの委員も務める。プライベートでは、他のNPOでのボランティア活動や仲間と高知の情報を発信するWEBメディアを運営などを行なっている。
高知で何かがしたいものの
NPO法人に就職して8年、この業界でしか仕事をしたことがないと話し始めた尾崎さん。はじめに、今のNPO高知市民会議に所属する前の話をしてくれました。元々高知出身で高知が大好きだった為、高知の為になる仕事がしたい、地域活性化の手助けがしたい、まちづくりに関わりたいなどと、どんな職業に就きたいというよりは、「高知で何かしたい」という、ざっくりとしたテーマを持ちながら高校時代を過ごしていました。
『とさっ子タウン』との出会い
そんな高校時代、担任にボランティア活動を勧められたのが、『とさっ子タウン』。このイベントは、夏休みに2日間だけの開催ですが、400人という大人数の子どもたちを対象とした職業体験、社会体験、消費体験といった様々なことを体験してもらう取り組みです。今まで学校生活しか知らなかった尾崎さんは、このボランティアに大きな衝撃を受けました。400人の子どもがやってくる場も、それを運営しているのが大学生や大人、NPO団体ということも、どれを取っても刺激的だったと話してくれました。当時、大学に行く気は無く就職する気でいましたが、このイベントで出会った大学生のように、NPO団体で活動をしてみたいと進学を意識するように。NPOでの活動もできるよう高知大学に行きたかったのですが、受験に失敗し、夜間の短期大学に進学。しかし、念願叶って在学中の2年間は、この『とさっ子タウン』のスタッフとして関わることができました。
大学と並行しての活動
『とさっ子タウン』は、大学生と大人たちが一緒になった実行委員会という組織で運営されています。この運営に参加したおかげで様々な大学生、NPO、企業、行政などいろんな人たち100人くらいと関わることができるようになったそうです。子どもたちの取り組みに関わることも、いろんな人と関われることも、尾崎さんには刺激的で、この活動がすごく楽しいと思うことができました。
その後、2011年3月、四万十ドラマという会社でインターンシップを行なっていたとき、東日本大震災が発生。インターン中に地震が起き、テレビに東北の映像が流れ、衝撃を受けました。尋常じゃないことが起きている、インターンをしていていいのか、などと悶々と日々を過ごしたと当時の心境を語ります。インターンシップを終え、また『とさっ子タウン』の取り組みに関わるわけですが、地域企業も気になる、とさっ子タウンの活動もある、震災のことも気になる、などと色んなことを考えているうちに、大学の2年間はあっという間に過ぎて行きました。
NPO団体で働く
『とさっ子タウン』のことばかりで就職先も考えておらず、卒業後はフリーターになった尾崎さん。周りが就職したり、大学生活を過ごしていたりしている中で、自分はバイトをして過ごしているだけ、と劣等感を感じながら、日々を過ごしました。そんな中、2012年2月、『とさっ子タウン』を運営しているNPO高知市民会議の職員枠が空いたから来ないか、と声がかかりました。
「NPO法人って知ってはいるけど働けるの?大丈夫なのか?」と、そのときは思いながらも、縁あってその年の8月に就職が決定し、今に至ります。実際に働いてみて、NPOとしての活動が自分の性格に合っていたことや、取り組みに関わった8年間がとても楽しかったことが、今も続けている理由です。
活動内容について
最後に、自身の所属しているNPO高知市民会議について話してくれました。基本的にNPOは、何かを解決する為に活動していたり、何かを達成するために活動したりしていますが、NPO高知市民会議は、NPO団体を支援するNPOとして活動しているので、一般のNPO団体とは少し立ち位置が違っているそうです。
また、指定管理者制度で『市民活動サポートセンター』という、高知市が設置した施設を運営しています。行政から資金をもらって、行政の施設を運営。そのこともあって、年間まとまったお金がしっかり入ってくる為、職員も雇えるような仕組みになっています。
誰でも訪問ができ、ボランティアや、イベントの情報、会議室の貸し出し、印刷機器の貸し出しなど、色々なことを行なっているので、是非お越しくださいと事業内容を書いた紙を説明してくれ、尾崎さんの話は終わりました。
【総括】
大石さんの話が聞きたい、と今回参加してくれた方も多くおり、自分のことを変わり者だと称しながらも、理想の為に前へ前へと確実に歩みを進める姿に人は応援したくなるのではないかと感じるスピーチでした。
また、高校時代のNPO活動との出会いが運命を変えたきっかけとなった尾崎さん。若い頃から高知の為に何かがしたいと思っていたことが現実となり、今、高知で楽しく仕事できていると笑う姿が印象的でした。
どちらもこれからを担う子どものためにと動いている2人に、会場からの共感の声も多かったように思います。
(レポート:畠中 詩織)
100人カイギとは
一般社団法人INTO THE FABRIC 高嶋 大介氏が「同じ会社に勤めていても、1度も話したことがない人がいる」と気づいたことをきっかけに、会社、組織、地域の"身近な人”同士のゆるいつながりを作るコミュニティ活動を始めました。 2016年六本木で「港区100人カイギ」スタートさせたのを皮切りに、渋谷区、新宿区、相模原市、つくば市、雲南市など全国各地へ広がっています。
100人カイギの一番の特徴ともいえるのが、「ゲストの合計が100人になったら会を解散する」ということ。100人の話を起点に、肩書や職種ではなく、「想い」でつながる、ゆるやかなコミュニティを作ります。
お問い合わせ
Kochi Startup BASE®️
住所:〒781-0084 高知県高知市南御座90-1 高知蔦屋書店3F
運営:エイチタス株式会社 高知支社
Mail: ksb@htus.jp
Webサイト:http://startup-base.jp/
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