Day.13 アウェーゲームで外国人監督の私がやること 【ベルギー社会人野球】
「ベルギー社会人野球 監督奮闘記」のDay.13です。
前回まで、選手の不満や退団事件について書いてきましたが、重い話はいったんお休みにして今回はちょっとライトにいきたいと思います。
ベルギーの社会人野球リーグですが、ベルギーの各地に相手チームがちらばっているため、アウェーゲームは車を持っている選手と乗り合いをして一緒に敵地に向かうことになります。
近ければ片道30分程度、遠いと1時間〜1時間半をかけて敵地に赴くこととなります。そうなると往復で最大3時間、さらにウォームアップ時間や試合時間が合計4〜5時間になるので、アウェーゲームの時は「1日仕事」という感じになります。
私は選手専任の時代、アウェーゲームがとっても嫌いでした。
まず、車を持っていないので集合場所まで徒歩と電車で行く。その時点で30分かかる。その後ようやく車に乗ったら1時間以上の旅。到着したらようやくウォームアップが始まりますが、これが1〜1時間半くらい。家を出てから合計3〜4時間経ってようやく試合開始となるので、待ち時間が長いという意味でメンタル的なだるさがピークだったりします。。
また、車中の往復時間もスマホをずっと見ると酔ったりするので、やることもなくボーッとしていることも多い。選手たちはフランス語で話すのが基本なので、私の拙いフランス語では会話も理解できない。英語で話しかけると共通言語が英語になるので仲の良い選手たちとは話しますが、正直そんなに気の合わない人と一緒だと沈黙が続きます。まあ、これは日本人同士でも一緒ですね。
しかし、そんな私も監督になった今、世界はガラリと変わりました。
アウェーゲームがとっても好きなのである(笑)。
私の感覚では、iPhoneがガラケーを凌駕した時とマイナンバーカードで住民票がコンビニで取得できるようになった時くらい変わりました。
大きな変化は車中の時間。
この時間は、試合がどんな展開になるか、誰を先発にするか、交代のシュミレーションも行い、試合で提出するメンバー表や選手に提示するホワイトボード(先発の打順、ポジションなどを書く)への記入など、思考と準備の時間に変わりました。
言ってしまえば、たかがベルギー社会人野球の3部リーグ、そんなに考えなくても良いっちゃ良いのですが、考えることが好きだしクオリティの高い時間の使い方は気持ちを前向きにしてくれます。選手の時なんて、「早く着かないかなー」と本当にボケーっとしてたので大きな違いです。
それともう一つ大きなこと。それは選手とのコミュニケーションの時間になる、ということです。
自分は外国人監督であるし、現地のフランス語もあまり話せない。
そうなると、英語が達者だったり仲の良い選手とは喋りますが、そうでない選手とはコミュニケーションが希薄になる。車の中の時間は、そういう選手たちと会話する機会にもなるし、何を考えているのかを知る機会だったり、チーム内の不満なんかも漏れ聞いたりする。へー、そんなことがあったんだ、みたいな話など。
例えば、車の中である選手が、「今日の試合後に、ピッチャーのヘルナンデスがこんなこと言ってたよ」、と伝えてくれたり。「なぜ自分がリリーフのこの場面で起用されたのか」、「プレッシャーのかかる場面ばかりで結果が出せない」などと言っていたとのこと。普段、あまり文句を言う選手ではないので、これは話に行ったほうがいいな、と思い時間を取ることを決めたりしました。
こういう何気ない時間で情報をインプットできるのは大きいです。
日本野球のイメージで言うと、監督はいつもバスや車で一人で座っていて選手が話しかけにくいイメージがありますが、私は近い距離感を大事にします。せっかくベルギーで野球をしているので、孤高を気取っても仕方がない。
監督になってこのような経験をして、アウェーゲームの車中って、サラリーマンが社内の噂話をする個室居酒屋みたいだ、という図式が私の中で成り立ちました(笑)。
また、車中の時間は、私にとっての更なるボーナスポイントがありました。それは、私がとっても大好きなドミニカ共和国生まれの選手、タティスと一緒の車に乗れることです。ただ、勘違いしないでほしい。決して変な意味ではないです。彼は英語が話せないので、私はフランス語を話すしかないのです。つまり、個室居酒屋でフランス語学習もできてしまうのが、アウェーゲームなんです!
特に、試合の帰りの車中はもう準備はしなくて良いので、コミュニケーションも兼ねてフランス語で話しかけたり、分からないことはGoogle翻訳で調べながら伝えます。彼も、「英語ではそれを何て言うんだ?」と聞いてきて、英語を覚えたいらしくお互いwin-winの関係を構築している。これはぜひ、監督として来シーズンも継続したい施策(?)です。
こんな形で、チーム内の揉め事があったり楽しい時間があったりしながら、シーズン終盤を戦っていきます。シーズン終盤のドラマ・人間模様については、また次回以降でお話ししたいと思います。
さあ、今回のDay.13はここまで。いつも読んでいただきありがとうございます!ぜひ、スキ・フォローよろしくお願いします🙇♂️