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Day.12 選手が退団! 采配への不満が原因? 【ベルギー社会人野球】

「ベルギー社会人野球 監督奮闘記」のDay.12です。前回、連敗で端を発した選手の不満噴出について書きましたが、今回はその後のこと(後編)になります。

まずは、ざっくり前回のおさらいをします。
敗戦が重なり、ベルギーリーグ3部の最下位に沈んだチーム。試合後のミーティングで、数人の選手から不満が出ます。選手の起用、交代に納得がいかない。つまり、監督批判(笑)。これらに対してどう対応して、その後に何が起こったかという話が今回のDay.12になります。

話は逸れますが、「ベルギー社会人野球 監督奮闘記」はDay.**で書いてきたのですが、やっぱりVol.**や、No.**にすれば良かった。。当初は、デイリーで日記のように書いていくつもりだったのですが、思い出して書き始めると内容を濃くしたくなったのでこうなりました。誰も気にしてないと思いますが、Day.12は監督を始めて12日目という意味ではなく、Episode.12 だと思っていただければと思います。

さあ、話を戻して監督批判について書きます(涙)。

批判に対しては、選手起用・交代については、自分が考えていた試合の想定や、勝つこととチャンスを与えることのバランスなど、シンプルに丁寧に説明しました。でも、これには少し後悔があります。

批判的なことをチームミーティングという場所で言われて、監督がわざわざ説明すべきなのか?この経験を通じて、私はするべき場合としない場合の2ケースがあると思いました。

一つは、単に説明を求めている場合。批判ではなくて、どうしてそういう戦術だったり交代をしたのか、理解したいという選手に対して。これはチームミーティングでしっかり説明して良いと思います。逆に質問してくれるのをありがたいと思って良い。変に溜め込まれるより、みんなに一斉に説明する機会にもなる。

もう一つは、今回のような批判の場合。これは、批判する方も説明する方もチームミーティングという場所でやるべきでない。まず、批判という言動をメンバーがいる中でやる選手というのは、基本的にロクでもないヤツが多い。概して、自分の感情がコントロールできない、チームの意識が薄い、自分にベクトルが向いている選手が多いからです。

そもそも、そういう批判的なこと言う選手はほんの数人の特定の選手で、何かとネガティブな発言が多かったり、言ってしまえば彼らの野球レベルも中途半端な選手が多い。

今回も十数人いる選手の中で、不満を言ったのは2人だけ。それも、その2人は仲が良く、練習前後も一緒にいることが多い。職場で会社の愚痴を言い合う従業員と同じだが、こういう選手たちはお互いの不満に共通点を見つけて増幅させる。いわば、エコーチャンバー現象*というやつで、自分たちの意見が正しい、みんなもそう思っていると無意識に信じる傾向にあります。

(*エコーチェンバー現象とは、自分と同じ意見があらゆる方向から返ってくる「反響室」のような狭いコミュニティで、同じような意見を見聞きし続けることによって、自分の意見が増幅・強化されることを指す)

チームミーティングで、そういう声が大きい人の意見が何も言わない人たちも含めての総意のように感じてしまうので、リーダーやマネジャーはそこに注意する必要があります。

という私も、その時は試合後・敗戦後にこれが重なって疲れてしまい、もう正直やってられない気持ちになり選手たちに投げかけました。

自分:「そうなら、じゃあ自分たちで先発と交代を決めたらどう?次の試合からそうしようか」

選手:「・・・・」

それには黙るんかい。何なん。不満言うやつは、言うだけで自分は責任を取る立場になろうとしない。

それに対して、他の選手たちが発言し始めました。

選手A:「監督をリスペクトするべきだよ。負けたのは俺らが下手だからであって、監督のせいじゃない」

選手B:「監督はNaoyaだ。監督の言うことにおれは従う。自分は内野が得意ではないけど、Naoyaがやってくれと言うならチームのためにやる。」

そう言う選手たちも出てきました。お前ら、マジで泣けてくるぞ(笑)。

この時の自分の対応が良かったとは言えないし、選手に守ってもらうのもかっこ悪い。こういう事態を想定できてなかったし、そこはまだまだ甘かったと反省しています。でも、選手たちがしっかりあるべき姿を他の選手に伝えたという意味では、とっても意味のある機会だったかもしれないです。決して勝つことが全てでなく、スポーツ精神やチーム競技を学ぶ場でもあるアマチュアスポーツ。高校生も混じっているチームなので、色々なことを学ぶ機会となったほうがいい。

最終的には、そういう選手たちの発言もあり、チームとして引き続き全力を尽くしていくこと、監督としても今回は意見として受け止めて、考えながらやっていくことになりました。

さあ、ここでハッピーエンドなら良かったのですが、Day.12はまだまだ終わりません😱

チームミーティング後に、不満をぶちまけた選手(仮称:マイケル)と個別に話をしました。明らかに納得がいっていない表情だったのと、ミーティングの途中で今度は完全に黙りこくっていたからです。

そこからグラウンド上で30分。マイケルと話をしました。
不満に思っていること、フェアじゃないと思っていること、まずは全てを聞く。もう詳しいことは省きますが、選手起用以外にも「なんであいつがこのチームのキャプテンなんだ。自己中心的すぎる」とか、「ピッチャーをやらせてもらいないのは不公平だ」とか、感情的にまくしたてる。それで、やっぱり言うのは「他のみんなもそう思っている」と。やっぱりエコーチャンバーだ。

この時点で、私はすごく冷静でした。実を言えばこのマイケル、態度が悪いことで他のコーチや選手からも知られている。それに加えて、どう理解しようとしても彼の言っている不満のロジックがわからない。例えば、キャプテンは私が決めたのではなく、全選手の投票で一番だった選手が任命された。なんでと言われても、選手が彼がキャプテンが適任と選んだばかりだった。それを説明しても、終いには「その投票が信じられない。みんな彼のキャプテンには文句を言っている」と。だから、みんなって誰。。

みんながみんなが、と言うので私も欧米流にダイレクトに言いました。

「私も君に言わなければいけないが、他のコーチや選手など、みんなが君の失礼な態度や攻撃的な発言に不満を言っているよ。私もとても気分が悪い」

結局、これが彼の心のスイッチを押しました。

この日以来、彼は一度もグランドに姿を現すことはありませんでした。もう十分だ、辞めると言って、涙を流しながら去っていったのが最後です。

自分の対応は、良い対応だったのか?正直、100%正解だったのかは分からないし、この件から学べることを学んで次に向かうしかない。マイケルに言い返すために最後の発言をしたわけでなく、いつかは言わなければいけなかったし、他のコーチからも伝えるべきだと言われていました。その機会が、この時に来ました。私自身は、彼が去るという結果はいつか来ることであり、去るべくして去ったと思っています。

この件はクラブの代表や関係者にも報告しました。マイケルの性格を分かっている彼らも、一定程度の理解はしてくれていました。

これを期に、クラブの他の監督(私の他に3〜4名)の間でも、言動が悪い選手にはむしろしっかり対応していこうという機運になっています。個性を重視する欧米だからこそ自分中心の選手も多い反面、チームの意識を持つ重要性やネガティブな発言・不平不満を周りに伝染させない努力が必要なんです。

クラブとして、定期的にそのようなメッセージを選手に発信していきたいという話になりました。

日本人としては、こういう事が起こってしまうと、揉め事を起こしてしまったことに対して「すみません」という気持ちになりますが(それはそれで謙虚で素晴らしい)、自分はできる限りのことをしたのであればこれを学びとして改善し、他の残っている選手と一緒に頑張っていくのが大事なのだと思います。

そんなこんなで、長かったDay.12もようやく終わりです(この時期は本当に疲れました...)。

さあ、シーズン後半戦の話はまた次回以降書いていきたいと思います。次は少し趣向を変えて、アウェーゲームにまつわるエピソードを書きたいと思います。それではまた!(スキ・フォローよろしくお願いします🙏)

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Naoya Yamada @ブリュッセル
ベルギーの社会人野球で毎日もがき、苦しみながら監督をしています😅 記事が面白いと思ったら、少しでも応援頂けたら嬉しいです。よろしくお願いします!