【秋田の旬スポットvol.3】家を超え、町に住まう“ネオ集落”の実現|「合同会社森山ビレッジ」インタビュー
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秋田県内の「新しいスポットや話題の情報」第3回目をお届けします!
今回インタビューに伺ったのは、「森山ビレッジ」。
秋田県五城目町森山地区2,000平米の遊休地で、地域の森林資源を活用した循環型の小さな村づくりを行ってます。“ネオ集落”はデジタルテクノロジーを取り入れた住宅施設を建設する試みで、建設プロセスから多くの人が関わることによる、新しいコミュニティの創出を目的としています!
今回は、五城目町を舞台に様々なプロジェクトを手掛ける丑田さんにお話を伺ってきました!
「地域に眠る資源とコミュニティの発見」
——はじめに自己紹介をお願いします。
合同会社森山ビレッジ代表の丑田俊輔と申します。
2014年に東京から秋田に引っ越してきまして、地域で複数の事業を立ち上げ運営しております。元々は五城目町の茅葺きの古民家を譲り受け、この古民家を村に見立てて、村を作るプロジェクトを「シェアビレッジ」という名前で始めました。
——当時、全国的に話題になりましたよね!改めてプロジェクトの内容を教えて頂けますか?
シェアビレッジでは「年貢を納めて村民になろう」というスローガンで、住民票のある無しに関わらず、年貢を納めた人が古民家の村人になれます。みんなで屋根を葺き替えたり、地域の困り事を手伝ったり、地域のお祭りを復活させたり。観光では立ち入れないような場面に、その地域のコミュニティに住んでない人が参加できるんです。これをきっかけに二拠点居住を始める方や、移住される方もおりました。そういった緩やかなコミュニティ作りのプロジェクトを立ち上げたことをきっかけに、地域の中に本当にいろいろな資源やコミュニティが眠っていることに気付き始めたんですよね。
——その“気付き”からどのようなプロジェクトが生まれましたか?
例えば、商店街の空き家を地域の親子でDIYして、誰でもタダでこられる「ただのあそび場」という場所を作っていたり、コロナ禍で閉館してしまった温泉宿を、地域住民みんなで少しずつお金と体を持ち寄って組合を作り温泉宿として再生させていく「湯の越温泉」というプロジェクトをやったり、統廃合で一つになった町の小学校の建て替えを、住民参加で三ヵ年のワークショップを行い「みんなの学校」というコンセプトでみんなで建て替えていたり。
地域に眠っている資源の掘り起こしやコミュニティへの参加、そこに“みんなで作っていく”ということを掛け合わせた事業を起こし、お金が必ずしも介在しないようなボランタリー(無償)なプロジェクトも含めてやっているという、そんなよく分からない人間でございます。
——五城目町への移住から10年が経過しようとしてますが、町の魅力はなんだと思いますか?
里山に暮らす人たちの日々の日常が淡々と続いているところに迫力や美しさを感じます。例えば、500年以上続く「五城目朝市」では、朝になるとジジババがストリートに野菜や山菜などを並べた露店を出して、みんな買いに来るような風景が残っています。
また、福禄寿酒蔵という酒蔵も300年以上続いていて、五城目の水、五城目の米を使って日本酒を造っています。そんな土地柄が結構気に入っています。
遊びの視点でいうと釣りが面白いと感じています。この町は、馬場目川の源流域から八郎潟の下流の湖、そして男鹿の海まで30分圏内でアクセスできる場所にあるので、源流の釣りから湖、海の釣りまで、広範囲で遊べるというのが個人的に気に入っています。
「住まいの変化に対応するネオ集落」
——「森山ビレッジ」の概要について教えてください。
発端は「町の木で家を建てられたらいいな」という思い付きで、地域のローカルな資源とコミュニティで住まいを作っていくって、楽しそうだなと思ったんですよね。
目の前にある里山の木をみんなで切り出したり、加工したり、組み立てて住宅にしていく経過を、デジタルテクノロジーなども使って現代にアップデートした形で建ててみようと。それを五棟建て、それぞれの屋根を繋ぐことで長屋のような集落を作り、実験村みたいにしてみようというプロジェクトが森山ビレッジです。
私自身が、秋田に引っ越す際、家を探すのが本当に大変だったんですよ。空き家はあれど貸家はないとか、外から来た人になかなか貸しにくかったり。あとは雪国ならではのエネルギー費用の不安もあったりと、田舎って住まいの課題がかなりあるなと思います。更に最近は二拠点居住される方だったり、関係人口みたいな言葉で、たまに遊びに行きたい人も増えてきていますが、毎回ホテルに連泊するのも疲れますし、住まいや人の変化に応じた快適な住宅が、田舎ではまだまだ足りていません。森山ビレッジがそういったライフスタイルを送る次世代にとって、一つの参加してみたいプロジェクトになってくれたら嬉しいなと思ってます。
——建設手法にデジタルテクノロジーを活用されているとのことですが、具体的に教えて頂けますか?
「町の木で、みんなで作ろう」というコンセプトを実装する上で、使えるデジタルテクノロジーはどんどん使っていきたいと考えていました。今回「デジタルファブリケーション(※)」と言って、設計データをパソコンで作り、それを小さな機械で出力すると、自動で木材が加工されます。
今回は地域の森林資源を、デジタルファブリケーションでみんなで加工して建てるということを手法として、実際建築しているという形ですね。新しいテクノロジーを使うことで、子供達や町の人たちも、地域の里山の木を切り出して加工して家を作る、ということが原体験として残り、同じような建築物を建てるなんてことも将来起こるかもしれません。
——森山ビレッジがあることで、どのような未来を描いてますか?
今の5棟の中で、一番小さい家だと1階の床面積9坪程度です。田舎の家って大きな家が多いと思いますが、そういう視点から見るとすごく小さい建築物です。何故そうしたかというと、住まいに必要なものを住まいの中だけで完結せずに、町全体で住まえたらいいなと。
例えば、お風呂は「湯の越温泉」という温泉に、子供部屋は商店街にある「ただのあそび場」へ。オフィスは「BABAME BASE」という廃校のシェアオフィスで。住宅はかなりコンパクトにしつつ、地域全体で住まうことで“ネオ集落”が実現できたらいいなと思っています。
今回の取り組みを参考に、秋田ないし、その地域の里山を住まいと繋げていくというチャレンジをしてくださる方がいたら、山にもっと関わって山で遊ぶという暮らしが日本中で起きていくんじゃないかなと思っていて、そのきっかけになったらいいなと思ってます。
「秋田の余白をどれだけ遊べるか」
——就職活動中の学生に向けて、“秋田に住まう”という側面からメッセージをお願いします。
必ずしも秋田に残るとか、秋田に戻ってくるという事を全員にお勧めするつもりは毛頭なくて、東京や海外へ行っても、個人的にはどこでもいいと思っています。その上で秋田で暮らす、働くという話をすると、余白だらけでめちゃくちゃ楽しいんですよ。
例えば、この森山ビレッジは2,000平米の山間の土地で建設していますが、都心部で2,000平米の土地を買ったらいくらするんだ?みたいな話ですし、商店街に「ただのあそび場」を作る際も、建物1棟をもう本当にタダに近い形で貸して頂ける事で、振り切ったプロジェクトが作れたりします。資金を持っていなくてもいくらでもチャレンジできるというのが、秋田に実際に移り住んで感じていることですね。
地域の資源もコミュニティもすごく豊かに残っているし、その余白をどれだけ遊べるか。自分個人で実現出来そうも無い事は“共助の力”で再生出来ますし、秋田や田舎にいてもやれる事は沢山あります。
あとは田舎であっても突き抜けて尖った事をやると、今だとSNSもあるので、地球の反対側ぐらいまで情報が突き抜けていき、東京をすっ飛ばして海外と繋がるプロジェクトも結構生まれるんですよ。僕も先週は台湾、その前はベトナムやフィンランドに行ったり、ローカルに住みながらも世界を旅したり、プロジェクトを作ったりという事も、これからの時代もっともっと生まれていくと思います。そういうスケール感で秋田を眺めると、また違った表情が見えてくるんじゃないかな。
——地域で暮らす人々を巻き込み、地元の様々な未活用資源を生かす。丑田さんを一言で表すなら「台風の目」。住まいを地域内に広げ、そこにある資源を皆で回していく取り組みは、秋田及び日本が今後、持続可能な社会を築いていく上で重要な鍵になる、という実感が湧きました。地域に目を向ければ、魅力的な人も資源も文化も豊富にあります。秋田だからこそ出来る取り組みを体現されている丑田さんと、それに呼応し集う人々。五城目町の未来が楽しみです。
◯取材・文・写真/KocchAke!(こっちゃけ)」編集部