
【秋田の大学生が発信!R6.Vol.1】「大曲の花火」で秋田を盛り上げる!
私たち秋田大学地域連携ゼミの実習生が、ゼミ活動の一環として、学生の視点で気になる秋田の人やスポットなどを取材し、秋田暮らしの魅力について情報発信していきます!
令和6年度に入り、今回からは新しいゼミ生が記事を担当します。よろしくお願いします。
R6年度の第1回目は、「大曲の花火」に注目!
大仙市は「毎月花火が打ち上がるまち」として年中花火を楽しむことができますが、今回はその中でも秋田県民にとって夏の風物詩である全国花火競技大会「大曲の花火」を取材しました。この記事を通じて秋田県の魅力を再発見してもらえたら嬉しいです!
取材にご協力いただいたのは、大仙市で花火の製造、販売を行っている株式会社小松煙火工業の5代目社長・小松忠信(こまつ ただのぶ)さんです。
海外の夜空にも「大曲の花火」

小松さんは、カナダ・モントリオール国際花火競技大会(※)に出場するため、2日後に日本を出発するというタイトなスケジュールの中で取材をお受けいただきました。ありがとうございます!
※モントリオール国際花火競技大会:毎年6月下旬から8月にかけてカナダで開催される世界最高峰の大会。世界各国から集まった花火師が1か国30分程度の作品を披露し、世界一を決める。
-今回海外の花火競技大会に出場されるということですが、日本と海外では花火にどのような違いがあるのでしょうか?
まず文化が違います。
海外では短時間でたくさんの花火を連続して打ち上げるのに対し、日本の花火は間隔を空けながらひとつひとつを数時間かけて打ち上げるので、一発への拘りが違います。
今回出場する花火大会は、1日1か国ずつ打ち上げるため、その日によって気象条件などが同じではありません。大曲の花火協同組合はトップバッターを飾ります。
-日本代表として「大曲の花火」がカナダの夜空に打ち上がるのが楽しみです!
-花火師として海を越えて活躍されている小松さんですが、学生時代から家業を継がれることを決めていたのでしょうか。
実は、若い頃はまったく家業に興味がありませんでした。しかし、大学4年の夏、アメリカの独立記念日に打ち上げられる花火玉の輸送に同行しました。その時に、海外の人が全身で喜びを表現する姿に感銘を受け、花火づくりに携わろうと決意しました。
-アメリカでの体験が小松さんの人生の転機になったのですね!

花火づくりについて
-続いて、花火づくりについて教えてください。小松煙火工業では花火づくりに携わる方は何人いるのですか?
花火制作に携わるのは40人程度です。
打ち上げは社員では賄いきれないので、イベント時は臨時的に打ち上げ従事者として100人近くの人員を確保しています。
-たくさんの人が花火づくりに携わっているのですね。ちなみに小松煙火工業で1番若い花火師さんは何歳ですか?
22歳です。去年入社しました。
-私たちと同世代の花火師さんもいるんですか!では、1人前の花火師になるにはどのくらいかかりますか?
制作から打ち上げまでの工程は専門性が高いので、一人で行わず分担制にしています。まず、一つの工程作業に慣れるまでに4~5年かかりますので、複数の工程で全て一人前になるには10年以上かかります。
-作業に慣れるまで数年とはそれだけ専門性が高いということですね。次に色について教えてください!花火で表現できる色は何色ですか?
可視光線の範囲の色はほぼ出すことができます。
例えば、明るい赤もあれば暗い赤もあるので、原材料の種類や配合によって濃い、薄いなどの違いを出しています。
しかし、「明るい青色」は今の原材料では出すことができません。マグネシウムを入れると明るくなりますが、温度が上がると青みが白く変化してしまうため、単体で明るい青色を出すのはすごく難しいのです。
-花火は理系の知識が必要ですね…!
私は文系ですよ。ということは、理系じゃなくても花火づくりができるんですよ。
-少し話は変わりますが、私は時間差でキラキラする花火が好きなのですが、小松さんのお好みの花火などはあるのですか?
私は花火玉が割れてから、上空から光が落ちてくる「柳」の金色が好きでよく最後に入れます。ちなみに、時間差花火(※)を最初に考案したのは私なんですよ。しかし、初めて打ち上げた翌年には他社も制作し時間差花火があっという間に広まりました。
新しいものを考えるとすぐにそれを凌駕するものを他社が作ってくるので、花火の進化は止まらないです。
※時間差花火:時差式花火、グラデーション花火とも言われる。光跡の変化が従来の花火とは違いイルミネーションの様に複雑に変化する。
-これからも花火は進化し続けるのですね!では、花火にもトレンドがあるのでしょうか?
もちろんあります。
それでいうと「大曲の花火」はトレンド発信所のようなもので、競技の結果が通信簿のような形で来るので、それをもとに来年のために研究を重ねます。しかし、トレンドに乗りすぎても自分の作品が埋もれてしまうので注意が必要です。
-花火のトレンドは大曲から発信されるんですね!
全国に花火業者は400社以上ありますが、「大曲の花火」に出場できるのは、わずか28社です。大会成績によって5年ごとに出場業者の入れ替えが行われるため、毎年出場できるという保証はありません。全国の花火業者にとって、内閣総理大臣賞がある「大曲の花火」は特別な存在です。
花火伝統文化継承資料館「はなび・アム」
—花火業者にとっても特別な存在の「大曲の花火」ですが、大仙市大曲にある花火文化の歴史と魅力を伝える施設の設立に小松さんも関わったと記事で読みました。どのような思いで設立されたのでしょうか?
大仙市をどうやって盛り立てていくかと考えた時に、一番影響のある「花火」の歴史を残したいという思い、設立に携わりました。
-花火の歴史を継承していくための施設ですね。小松さんの中での「はなび・アム」のおすすめポイントはありますか?
”はなび創作工房”がおすすめです。花火の”星”(※)を並べて、打ち上げる体験ができます。花火玉を作る感覚と似ていて、より身近に感じられると思います。
※花火の”星”:色とりどりの火や煙を出しながら燃える火薬の粒

花火を知り、学び、体験できる「はなび・アム」
小松さんのお話を聞き、早速取材後、ゼミ生で「はなび・アム」を見学してきました!


とても盛り上がりました🔥
「はなび・アム」は入館料無料で、子供も大人も楽しめる施設です。まだ行ったことのない方は、ぜひ一度訪れてみてほしいです!
小松さんからのメッセージ
-小松さんが花火づくりで大切にしていることはなんですか?
まずは「安全」です。花火は多くの火薬を使うので、常に危険を伴います。これまでの経験から安全だと思っていても、どこが危険の境目なのかは分からない。簡単なようで難しいです。常に疑問を持ち続けることが大切だと思っています。
そして、モノづくりはしっかりとしたものを作らないと信頼されません。花火を作る工程は、機械化できていないところも多く、量産しにくいものですが、短い期間で多くの花火を作らなければならない場合もあります。その様な時にも品質を保ちながら「花火を楽しんでもらいたい」という気持ちを突き詰め、より確実に良いモノづくりを続けたいと思っています。
-最後に、若者に向けてメッセージをお願いします!
若い世代が、これから様々な分野で活躍することを我々世代は待っています。たくさんの知識を学び、ぜひ世のために能力を発揮してください。楽しみにしています!
-小松さん、ありがとうございました!
取材を通して感じたこと
今回の取材で、花火にはたくさんの人の努力や想いが詰まっているのだと感じ、これから花火を見るのがますます楽しみになりました。
今年は8月31日(土)に第96回全国花火競技大会「大曲の花火」が開催されます!
一発に込めた花火師の情熱とプライドを感じることができる「大曲の花火」。小松さんによるとサプライズも準備しているそうです😮
皆さんぜひ会場で見てみませんか?
★編集後記
モントリオール国際花火競技大会の結果が発表され、「大曲の花火」は見事銅賞に輝きました!日本勢では30年ぶり3度目の入賞だそうです!
「大曲の花火」が世界に大きな印象を残したことは、秋田県民としてとても誇りに思います!!おめでとうございます!🎊
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