見出し画像

【秋田の旬スポットvol.2】“ハードサイダー”に地域の想いを乗せて。|「株式会社杢(もく)」インタビュー


こんにちは!「KocchAke!(こっちゃけ)」編集部です。

▼これまでのこっちゃけ編集部の記事はこちらから!
URL:https://note.com/kocchake_akita/m/m927f7c4e5dc7

秋田県内の「新しいスポットや話題の情報」第2回目をお届けします!

今回インタビューに伺ったのは、「株式会社杢(もく)」。
2017年横手市十文字町にてゲストハウス「Hostel&Bar CAMOSIBA(ホステルアンドバー カモシバ)」を開業。2020年にハードサイダーブランド「OK,ADAM(オーケーアダム)」を立ち上げ、これまで20種類以上の商品を販売。そして2023年4月にはタップルーム(立ち飲みができるカウンターとテーブル席)併設の自社醸造所を新設。同時に、サウナ付きの一棟貸切宿「MUSIRO SAUNA」も併せてオープンしました!

横手市十文字町を舞台に、続々と新展開を広げる株式会社杢の皆さんにお話を伺ってきました!

▼インタビューに答えてくれた方
・阿部円香さん|株式会社杢 代表取締役
・倉田健太郎さん|「タップルーム併設のハードサイダー醸造所」運営担当(2020年入社)
・飛内淳哉さん|「Hostel&Bar CAMOSIBA」「MUSIRO SAUNA」運営担当(2020年入社)


「“醸し場”をつくり、人とまちを醸す。」

──代表の阿部さん、はじめに貴社の事業紹介をお願いします。

株式会社杢代表取締役の阿部円香と申します。事業の内容としては主に「OK,ADAM(オーケーアダム)」というブランド名で展開しているハードサイダーの製造と、2023年4月からその醸造所に併設する形で、サウナ付きの一棟貸宿「MUSIRO SAUNA」の提供を開始しました。また、2017年に開業した「Hostel&Bar CAMOSIBA(カモシバ)」というバー併設のゲストハウスも同時に運営しております。

株式会社杢 代表の阿部円香さん
「Hostel&Bar CAMOSIBA」(外観)
「Hostel&Bar CAMOSIBA」(内観)

──そもそも「ハードサイダー」とはどのような飲み物なのでしょうか?

ハードサイダーは簡単に言うと、アメリカでは“りんごの発泡酒”のことです。日本だとシードルという名称の方が馴染みがあると思いますが、シードルはフランス語圏のりんごのお酒のことです。我々が作っているハードサイダーは、よりアメリカの文化に近いもので、例えばクラフトビールのような、造り手による個性ある味を自由につくり、味わえるものであると思っています。

秋田県横手市産のりんご「やたか」を100%使用した「ORIGIN」

──「OK,ADAM(オーケーアダム)」を立ち上げたきっかけを教えてください。

私は元々ビールが好きで、ビールの原料であるホップが地元横手市で作られていることを知ってから、「地元のホップを使ったビールを作る。」というのが目標の1つでした。「Hostel&Bar CAMOSIBA」という場所を始めてから、近隣の果樹農家さんがお客さんとしてバーに訪れてくださることが多くなり、その農家さんの果汁を活かせる飲み物が作れないかなと考えるようになりました。その時に、ハードサイダーに出会い、このお酒なら、より横手の魅力を詰め込めるなと思いました。

──ビール好きな阿部さんの熱意と、りんご栽培が盛んな横手市の強みをミックスさせた結果、ハードサイダーという製品に着地した訳ですね!運命を感じます..!次に、2023年に自社醸造所を新設するまでのプロセスを教えてください。

2019年に、近隣の醸造所のタンクを借りて製造をするところから始めました。その後、2020年にアメリカのポートランドで研修してから正式に「OK,ADAM(オーケーアダム)」という名前で製品をリリースしました。自分の町で、自分の醸造所を作りたいという気持ちは当初からあったので、自然な流れで醸造所の新設に着手しました。当時はコロナ禍だったこともあり、なかなか前に進めないことが多く大変ではありましたが、周囲の人の手を借りながら2023年4月、今の場所に作ることができました。

──横手という地域でお酒を造る優位性や差別化ポイントはありますか?

横手は日本一広い盆地とも言われており、果物が美味しく育つ環境です。生食用のりんご以外にも、お酒造りに向いている加工用のりんごを作っている農家さんもたくさんいらっしゃいます。その県産のりんごを使用しているのが当社の製品ならではの特徴です。また、りんご以外の果物もこの横手エリアでたくさん作っており、それらを組み合わせてハードサイダーを作れるのは、我々の一番の強みであると思います。

──醸造所新設後、地域の皆さんの反応はいかがでしょうか?

今まで私がやってきた「Hostel&Bar CAMOSIBA」のすぐ近くに醸造所を構えたので、そこを行き来するようなお客さんであったり、地域の人であったり、回遊性が生まれて人が賑わっている様子が感じられます。“醸し場”を創っていく過程において、たくさんの地域の人々に手伝って頂いたことに対して感謝しております。

──今後、「OK,ADAM」をどのようなブランドに育てていきたいですか?

今までは「Hostel&Bar CAMOSIBA」という空間に来てもらうことで、お客さんに楽しんで頂くのが基本でしたが、ハードサイダーという商品を作ることによって、私たちの想いを乗せたものを「外」に届けることが出来るようになりました。実際に手に取ってもらうことで、秋田や横手という地域、または我々を思い浮かべてもらえるような商品にしたいと思っています。そういった面で私たちが提供できるサービスの種類が増えたことは、事業をやっている上でもすごく楽しいことだなと思います。

「OK,ADAM(オーケーアダム)って?」

次に、秋田県出身で2020年入社の4年目「OK,ADAM(オーケーアダム)」の醸造長を務める倉田健太郎さんにお話を伺いました!

「OK,ADAM(オーケーアダム)」醸造長・倉田健太郎さん

──現在の業務内容を教えてください。

ハードサイダーの醸造業務とタップルーム(立ち飲みができるカウンターとテーブル席)の運営を行っております。

空き店舗を活用した、タップルーム併設の自社醸造所(外観)
自社製造のものに加え、各地から厳選したハードサイダーが並ぶ

──「OK,ADAM」が作るハードサイダーの特徴を教えてください。

そもそもハードサイダーは、りんごを原料に他の果物やスパイス、ハーブなどを組み合わせて作るお酒ですが、「OK,ADAM」は秋田県産(横手もしくは湯沢)のりんごを原料に使用しており、副原料もほとんど横手市産のものを使用しています。まだまだ試験を重ねている段階ですが、今後はいろいろな果物、ホップ、ハーブなどの副原料を使用したいと思っています。自由に組み合わせてりんごの良さも出しつつ、副原料の良さも同時に出せるようなお酒を作れたらなと思っています。

秋田県横手市産のりんご「やたか」を100%使用した「ORIGIN」
樽から注ぐ新鮮なハードサイダー

──醸造過程でのこだわりはありますか?

りんごは発酵が難しく、発酵中に他のお酒では出ないようなちょっと嫌な香りが出ることがあります。それをいかに綺麗に取り除くか、酵母にいかに綺麗に発酵してもらうか、といったところを考えて、発酵醸造作業を行っております。

大型タンクが3台並ぶ醸造所内
真剣な眼差しでハードサイダーと向き合う倉田さん

──現在の仕事の魅力を教えてください。

魅力はやはり、お酒を醸造するところから携わり、それをお客様が飲んでくださるところを目の前(醸造所併設のタップルーム)で見届けられる所ですね。他の仕事だと、生産から消費の現場までは遠いとは思いますが、作ったものをその場で飲んで喜んでもらえる環境で仕事ができるということが、すごく魅力だと感じています。

──「株式会社杢」への入社理由を教えてください。

元々新卒で入社したのは、東京のWEB広告のベンチャー企業でした。ただ、実はそこに入社する直前あたりからお酒関連の仕事がしたいと思っており..。その時運良く代表の阿部から、ハードサイダーを作りませんか?と声をかけて頂きました。ちょうどハードサイダーを調べており、面白いなと思い始めていたタイミングだったので、これは運命と思い、入社を決意しました。

前職のベンチャー企業も、風通しが良く若い人が多かったのですが、弊社も意見が言いやすい環境にあり、自分の裁量で仕事を任せてもらえる部分が多いです。自分で頑張って事業を伸ばしていきたい方にお勧めできる会社です。

「むしろ、筵、MUSIRO SAUNA。」


次に千葉県出身で2020年入社の4年目、飛内淳也さんにお話を伺いました!

宿泊事業担当の飛内淳哉さん

──「サウナ付き一棟貸し宿」について教えてください。

元々、蔵だった場所を改装して、サウナ付きの一棟貸宿を2023年4月から提供しております。趣のある蔵でしたので、和の雰囲気は崩さないようこだわった内装デザインがポイントです。また、「MUSIRO SAUNA(むしろさうな)」の名称の由来ですが、“莚(むしろ)”とは藁などを編んで作った敷物のことです。昔から農業にも使われていますが、人が集まっておしゃべりをしたり、お酒を飲んだりするところという意味があり、そのような気の許せる人とゆったりのんびりできる場所になれば良いな、という意味を込めました。


「MUSIRO SAUNA」(外観)

──御社ではゲストハウス「Hostel&Bar CAMOSIBA」を元々運営されていますが、なぜまた新たな宿を始められたのでしょうか?

コロナ禍によって、Hostel&Bar CAMOSIBAの集客が難しい状況となりました。そこで、よりプライベート感を持って過ごせる一棟貸宿の新設を考えました。サウナを楽しめるスペースを併設したのはスタッフ全員がサウナ好きだったからです。サウナの内部は80℃前後の低温高湿で初心者も気軽に楽しむことができますし、水風呂には阿部麹店の味噌樽を使用したりと、サウナ好きのアイデアが詰まった空間となっています。また、サウナ付きの一棟貸宿は秋田県内でも数える程しかないので、そこは凄く魅力を感じて頂いております。

「MUSIRO SAUNA」(内観)
5名はゆったりと座れるサウナ室内
セルフロウリュも可能
阿部麹店の味噌樽が水風呂

──運営される中で印象に残っているエピソードはありますか?

アメリカからお越し頂いたお客さまが8日間連泊されたことが特に印象に残ってます。連日のコミュニケーションを通して、お客さまとスタッフという垣根を超えた関係を築けたような気がして、最後のお別れは寂しく感じました。そういう感覚は今までなかったので、特に印象に残っています。

2階のリビング空間
床の間は柔らかな陽射しが窓から差し込む

──「株式会社杢」への入社理由を教えてください。

元々ゲストハウスに興味があり、中でも地域に根差した運営を行っているゲストハウスで働きたいという気持ちがありました。Hostel&Bar CAMOSIBAはゲストをはじめ、地域の人との交流というものがコンセプトにあったので、そこに魅力を感じて入社しました。

──就職活動をする上での軸はありましたか?

自分のスキルを活かしたい、という軸はありました。僕は小さい頃からずっと語学を勉強してきて、大学ではスペイン語を学びました。スペイン語を扱った仕事がしたいのと、自分でいつか宿を経営したいという目標があったので、その2点を軸に就職活動を行いました。

──千葉県から秋田県に移住されたようですが、ハードルはなかったですか?

とにかくHostel&Bar CAMOSIBAで働きたくて、それがたまたま秋田という場所にあったので移住しました。もう気付けば、秋田での生活は今年で4年目になります。移住前は千葉市に住んでいたので都会寄りの生活でしたが、秋田は人との距離が密接で、自然も豊かで、そういう生活が自分に結構合っているのかなと思います。

「Hostel&Bar CAMOSIBA」(内観)

──今回、3名へのインタビューを通して視えた共通のキーワードは日々の業務の
  「自分ごと化」。あくまで「自分がやりたい、自分だからやれる」。という
  仕事に向き合う熱意をひしひしと感じました。“好きこそ物の上手なれ”
  という諺の通り、それぞれの得意分野で加速度的に成長と挑戦を続ける姿は
  勇ましかったです。株式会社杢の皆さんは個性溢れるキャラクターが
  多いので(笑)、是非気軽に会いに行ってみてくださいね!

◯取材・文・写真/KocchAke!(こっちゃけ)」編集部


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?