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不思議なできごと2

父が亡くなったのは、10月だった。
今思うと、あのときは不思議なことが続いた。

胃がんで半年ほど入院していた父。
がんがみつかったとき、すでに医師から余命を告げられていたけど、
本人には伝えていなかった。

仕事の合間を縫って、東京から何度か帰省して顔を見に行った。
最後に会ったとき、よく寝ているからと、あいさつをせずに病室を出たのだが、それをとても怒っていたと、母から聞いた。

父の容体がもうよくないから、帰ってきてほしいと妹から電話があった日。
頑張れば最終便に間に合ったはずなのに、私はぐずぐずしてそれを逃した。

現実に向き合うのが怖かったのだと思う。

翌朝の飛行機を予約してベッドに入った後、部屋ががたがたっと、つよく揺れた。
後で調べたけど地震ではなかった。
父が怒って来ていたんだなと思った。

お通夜では、母や妹や、遠方から帰って来てくれたいとこと一緒にお酒をたくさん飲んだ。にぎやかな方が、父も寂しくないだろうと思って。

そうしたら、おしっこが出なくなった。

父と同じ症状だ。
前立腺にも転移していたのだろう。最後のほうで「おしっこがしたいのに出ない」といって苦しんでいた。

おしっこが出ないから、酔いが覚めない。
ザルと言われて、酔っぱらうことすら稀だったのに、
私はトイレで何度も吐いた。

お葬式のあいだは、今まで経験のないものすごい二日酔いだった。
お昼に出たお膳にも、まったく箸をつけられなかった。

父の葬式で二日酔い…。
本当に締まらない話だ。

全て終わって、夕方、お寺の近くの仕出し屋で食事をとった。
仕出し屋まで歩く間、晴れていた空が急に曇って、一瞬ぱらっと雨が降った。
「お父さんの涙雨やなあ」と伯母ちゃんが言った。

あれから17年経った。
今はゆっくり眠ってくれているだろう。
いろいろごめんね、お父さん。


見出し画像はみんなのフォトギャラリーよりお借りしています。
ワダシノブさん、ありがとうございます。

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