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続「日本医師会が反対したこと」
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今回は前回調べ切れていなかった日本医師会が反対したことについて引き続きソースを調べたのでその結果をご紹介する。
なお、日本医師会は開業医約8万3千人、勤務医約9万1千人(令和4年12月1日現在)から構成される団体であることを申し添える。
患者へのカルテ開示
2003年の記事であるが、厚生労働省の検討会で委員の過半数が賛成にも関わらずカルテ開示の法制化が医師会が反対したことで実施できなかったことがわかる。
同年に厚生労働省医政局医事課が発令した「診療情報の提供等に関する指針」で、「医療従事者等は、患者等が患者の診療記録の開示を求めた場合には、原則としてこれに応じなければならない」とされているため現在ではカルテ開示を拒否する病院自体は少ないものと思われる。
今回の検討会でも、委員の過半数が法制化に賛成だったというが、「全員一致」を求める医師会の要求によって、またも先送りになってしまった。全員一致を必要条件とするなら、カルテ開示の法制化は永遠に不可能だろう。
no.18: また見送られたカルテ開示法制化 - 誰のための個人情報保護法か
https://www.rieti.go.jp/users/it/column/column030611.html
職種別給与の報告義務・看護師給与の見える化
これは日本医師会だけでなく複数の病院団体から反発されて未だ導入されていない。3番目の参考資料に示すような「他職種の給与を不当に低く抑えて経営者である医師が自らの資産を増やしている」というようなことが明るみに出ないよう阻止したと疑われても仕方ないだろう。
岸田政権は、全国の病院や診療所の経営情報の「見える化」を進めている。看護師など医療従事者の給与実態を把握して、賃金改善に必要な支援を実施することが目的の一つだった。ところが、医療業界の反対で、職種別給与の報告義務の導入は見送られてしまった。
医療界が反発 看護師給与「見える化」 病院が明かしたくない事情とは
https://mainichi.jp/articles/20230408/k00/00m/020/104000c#:~:text=%E6%94%BF%E5%BA%9C%E3%81%AF%E5%8C%BB%E7%99%82%E6%B3%95%E3%81%AA%E3%81%A9,%E3%80%8C%E4%BB%BB%E6%84%8F%E3%80%8D%E3%81%A8%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%9F%E3%80%82
全日病会長(日本医師会副会長)の猪口雄二委員は、「職種別の給与費のデータを作成している医療法人は少ない。これまでも求められてこなかった。今回の対応では、現状で出せるもの以外のデータは『任意』にしてほしい」と念押しした。
医療従事者の職種ごとの給与額を把握することには、他にも、特に病院団体の委員から、さまざまな懸念が示された。
https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20221201/news03.html
これらのデータを「現場で働く方々に医療費財源が広く行き渡るようになっているのか」という視点で単純に組み合わせ、例えば「一般診療所では看護職員の給与を低く抑え、資産確保に充てている(蓄財している)」などの結論が出せるのでしょうか?
医療経済実態調査を用いて「医師の給与、看護職員の給与」状況などをどこまで可視化できるか—中医協総会
https://gemmed.ghc-j.com/?p=50322
かかりつけ医制度
ニッセイ基礎研究所のレポートによればそもそも「かかりつけ医」という単語自体がイギリスのような「家庭医」制度を日本に持ち込もうとした時に日本医師会の強い反発で妥協的に導入された単語である。日本医師会はさらにその制度化にも反対しフリーアクセス制と出来高払いによる利益を手放そうとしない。
かかりつけ医について、「あくまで国民が選ぶものであり、国民にかかりつけ医をもつことを義務付けたり、割り当てたりするものではない」と強調。更に、診療科別や専門性の観点から複数のかかりつけ医をもつことが自然であるとした他、いわゆる「登録制」についても、医療へのアクセス権や医師を選ぶ権利を阻害する提案であり、「人頭払」についても、現代の複雑かつ高度な医療においては現実的な提案ではないと指摘し、改めて反対する姿勢を示した。
https://www.med.or.jp/nichiionline/article/011041.html
しかし、日医は「イギリスのような国家統制の強い仕組みに変えるのではないか」「診療報酬制度の変更を通じて、医療費適正化の手段に使われるのではないか」などと反発。厚生省が実施しようとしていたモデル事業にも非協力の構えを見せた。
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=75533?pno=3&site=nli
生活習慣病薬の市販薬販売
以下は中性脂肪異常改善薬「エパデールT」が要指導医薬品から一般医薬品に移行する時の医師会理事のコメントである。この薬品だけでなく生活習慣病に関する医薬品全般のスイッチOTC化を強く牽制する内容である。生活習慣病によるサブスク受診は開業内科医にとって安定収益の源であり、どうしてもそれを失いたくないのであろう。
同常任理事は、まず、「今回の決定は日医として納得のいくものではない」とするとともに、「長期間の服用と全身管理が必要となる可能性のある生活習慣病こそ、かかりつけ医の診断と治療が不可欠であり、その治療薬はスイッチOTC化になじむものではない」と指摘。
https://www.med.or.jp/nichiionline/article/008546.html
フォーミュラリー(使用ガイド付きの医薬品集)の設定
まず初めに「フォーミュラリー」とは、有効性や安全性、費用対効果などを踏まえ処⽅できる医薬品を 「第一選択薬」、「第二選択薬」として標準化した院内の投与指針です。つまり予め使える薬を限定しておき医療を標準化するという手法で欧米諸国では一般的に行われています。しかし日本医師会はこれに対して「処方権の侵害になる」など様々な理由を並べて反対を表明。実際にフォーミュラリーを設定するとなれば薬剤師の関与が大きくなることが予想され、「医師の権限が薬剤師に侵害される」と猛反発した形だ。
中医協総会(会長:田辺国昭・東京大学大学院法学政治学研究科教授)に対し、特定機能病院の入院患者の薬剤適正使用の推進に向け、「使用ガイド付きの医薬品集」の作成・維持を行う体制を評価する方針を提示したが、日本医師会の委員は反対、
https://www.m3.com/news/open/iryoishin/716607
マイナンバー保険証
2015年の日本医師会の石川広己・常任理事はロイターのインタビュー記事で「人権侵害への懸念」という強い言葉を使ってマイナンバーへの拒否感を示している。
「マイナンバー制度を医療分野に持ち込むことには反対だ。」
「1枚のカード情報で、病気の履歴や個人情報が全てわかってしまうというのは可としない。」
https://jp.reuters.com/article/interview-mynumber-idJPKCN0S107A20151007
混合診療
日本医師会平成三十年の歩みの中から2002年の部分を見ると「自己負担を増やすことは皆保険破壊である」という現代Xにおいても良く見られる論理の飛躍を医師会が昔から用いてきたものであることがわかる。そして混合診療への反対姿勢はその後も一貫しており保険診療による7割引き~9割引きの恩恵を手放す気はない。
共同声明は、被用者保険 3 割自己負担の凍結のほか、高齢者の自己負担軽減、医療への株式会社参入阻止、混合診療の導入反対を掲げ、「これらの政策は国民の健康に対する国の責任を放棄し、国民皆保険制度を根底から崩壊させるものである」として、四師会揃って国民運動を展開する方針を打ち出した。
https://www.med.or.jp/jma/about/30th/pdf/30th03.pdf
更に、「有効性・安全性が認められた医薬品が、必要な患者に保険診療として提供されることを最大限に求めていかなければならない。従って、混合診療を拡大するような方向に議論を誘導すべきではない」と述べた上で、適切な薬事承認、適正な薬価を決定する仕組みの構築に全力で取り組み、厚生労働省に強く働き掛けていく決意を示した。
https://www.med.or.jp/nichiionline/article/004551.html
新型コロナ治療薬の公金負担解除
厚生労働大臣に要望書を提出するというのはそう簡単できることではないでしょう。そこまでしてでも治療費の無償化(=税金負担によるバラマキ)を維持しようとしていたのは恐るべきことです。
加藤勝信厚生労働大臣へ要望書を提出し、たとえば「10月以降、急に新型コロナの治療薬の自己負担が高額になり、治療にたどり着けないということがないよう、配慮を求めた」と強調。
https://www.med.or.jp/nichiionline/article/011267.html
幽霊病床という視界に都合の悪い新語の使用
自分たちに悪いイメージが付きかねない単語を行政文書から消させることは言論弾圧にも近い行為であり、その成果を誇るというのは医師会の性質が独裁者に近いことが示唆される。
「全体像」の骨格がまとめられた際、使われていた「幽霊病床」という表現が、日本医師会が病院団体と共に要望した結果、削除されたことは、「風評被害や感染リスクを乗り越えて頑張っている医療現場への配慮である」と評価した。
https://www.med.or.jp/nichiionline/article/010345.html
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