中川政七びいき:2
(承前)
花ふきんは、蚊帳用の布をふきんサイズにカットしたもの。袋を開けた状態では糊がついていてごわりと硬い。なにも知らない当初こそ「本当に使い物になるのか」と心配になったものだが、説明書のとおり、ぬるま湯で湯がき、さらして使っていくうちに、ふんわりと化けていった。
わが家にはいつも、花ふきんが掛けてある。
花ふきんは水をよく吸って、すぐ乾く。使い古すと毛羽立ってきて細かな繊維がついてしまうため、食器を拭くのには使っていないが、台所やお手洗いで手を拭くぶんにはちょうどいい。
奈良で蚊帳織のふきんを扱う業者はほかにもあり、類似の商品も複数出ている。しかしながら、わたしの考える中川政七商店の「花ふきん」の魅力は、その奥ゆかしい色合いにある。こればかりは、替えがきかない。
いま家にある2枚の花ふきんは、藤色と若草色。どちらも淡い色調で、ぶらさがっているのを見るだけで心地がよい。
わが家の台所は窓に面しており、西日がたっぷりと差し込む。陽の光を透かした花ふきんは、やわらかで美しい。乾いているときも、濡らして水を切り干したときも、どちらにもよさが感じられる。
花ふきんには相当な数のカラーバリエーションがあるので、コレクション気分で買い足すのも楽しい。
いつか、さまざまな色の花ふきんを取り合わせ、シェーカー家具のタオルラックに、誰が袖屏風のように掛けてみたいと思っている。開け放った窓のそばにラックを置いて、色とりどりのふきんがそよ風にたゆたうさまをながめながら、ぼんやりとする時間を過ごしてみたいのだ。
そのなかにはあの、店舗限定の抹茶色の花ふきんもぜひ加えたいもの。
お濃茶をイメージした、あのねっとりとした深緑は、室内のよきアクセントとなってくれるはず。次の奈良行の買い物が、ひとつ決まった。