かわいい「ざんまいず」 奈良博三昧:1 /奈良国立博物館
2月4日。北京五輪の開会式の中継を、かつてない既視感をもって視聴した。
東京五輪の開会式がおこなわれたのは、昨年の7月23日のこと。その間、わずか191日――半年ちょっとで次の五輪がやってきた、稀有な状況。「最近観たよな」という気分になるのも無理はない。わたしにかぎらず、世界じゅうの観衆がそうだったろうと思う。
東京五輪が開会された晩、じつは、奈良にいた。
それにはいくつか理由があったのだが、ひとつに、奈良国立博物館の館蔵名品展「奈良博三昧」があった。
奈良国立博物館は土地柄、仏教美術専門の館となっている。「奈良博三昧」の展示品も、ほぼすべてがお寺や神社に関わるものだ。すきな人はすきだが、そうでもない人には敷居が高く、地味なものに感じられるだろう。
そんな先入観を逆手にとってか、「奈良博三昧」のビジュアル展開は、えらくぶっ飛んでいた。仏像はちょっと……という人も、もののためしに本展の特設サイトを開いてみてほしい。
ポスターやリーフレットも、これと同様のキッチュなアメコミ風だった。ここまではっちゃけたものであれば、博物館や美術館には縁がない若者の興味もひくことができそうだ。
図録の表紙もすごい。テクノっぽい。みうらじゅん的でもある(中身は打って変わって正統派の図録)。
さらに、すべて館蔵品ゆえ、全展示品の写真撮影が自由に可能。SNSでどんどん広めてね、というわけ。
ミュージアムでの撮影に関する是非・私見は別稿に譲るとして、ともかくもこういった点は、若者の集客にあたっては非常に有効なアピールポイントとして作用するものだ。
よく考えれば、もともと仏教美術に興味津々だという人は「奈良博の名品展」というだけで、ほうっておいても自然に集まってくる。
内容の質は保てる。あとは、外っ面をいかに巧みに構築して、新規開拓をはかっていくか……「奈良博三昧」の宣伝戦略は、そういった点で非常にうまいなと思った。
「うまさ」は、「かわいさ」へのアプローチにもみられた。
かわいいものは、美術のあちこちに潜んでいる。本来、美術と「かわいさ」の相性はよい。理屈抜きで「かわいさ」を前面に押し出していけば、若者や女性はもちろん、子どもからの受けも良好だ。カップルや親子連れの集客を狙うには、もってこいの切り口といえよう。
そのような重大なミッションを一身に担ったのが、この「奈良博三昧」展でめでたく公式デビューを果たした奈良博の公式キャラクター……その名も「ざんまいず」の面々である。(つづく)
※日数の算出には、こんな便利なサイトがある