見出し画像

秋夜の奈良旅2024 唐招提寺

 11月3日「文化の日」の夜、唐招提寺の夜間拝観に行ってきた。自宅から、はるばる自転車を飛ばすこと……3分で。

 秋の夜長のキャンペーン「秋夜の奈良旅2024」の一環として、世界遺産の春日大社、興福寺、元興寺、唐招提寺、薬師寺では、ライトアップが開催されている。
 厳密には、春日大社が11月の金・土曜、興福寺と元興寺が土曜の開催で、かろうじて現在も開催中なのだが、少し離れた西ノ京の唐招提寺と薬師寺は11月2日・3日のみだった。それゆえか、唐招提寺の境内はなかなかの人だかり。多くの人が、薬師寺と一緒に巡礼したことだろう。

唐招提寺南大門。出入りする人が絶えない
南大門を入ると、昼間はこんなふうに、金堂が見えるが……
夜はこんな感じ。肉眼ではもっと薄暗かった


 じつのところ、わたしはふだん、ライトアップだとかイルミネーションの類には、まったくといっていいほど興味を示さない。プロジェクションマッピングなぞという代物はもってのほか、わたしのなかでは門前払いである。
 今回の唐招提寺のライトアップに関しては、昨年の写真をみて、演出感が薄めの自然な照明ぶりに好感をいだいた。東京の半蔵門ミュージアムで拝見した飛鳥園の小川光三による写真《唐招提寺金堂  外観》も、印象深く残っていた。

 なにより、近場でもある……
 そういうわけで「どれ、行ってみようかな」と思い立ったのだ。

 現地で観た夜の唐招提寺金堂は、昨年の写真よりもさらに薄暗く、幽玄な佇まい。明らかに、昼間とは違った雰囲気。
 それは金堂の内陣に居並ぶみほとけも同じで、むしろ、暗闇と内部の照明の対比によって建物の存在が薄まり、お像の表面に施された金の輝きが深められていた。
 これによって、金堂があくまで仏を主として構成された空間であることを、改めて強く意識させられるのであった。


 ——「秋夜の奈良旅」は、今年で5年めを数える。このキャンペーンのように、近年の奈良市は、夜のイベントに力を入れている感がある。
 それは、奈良観光の長年の課題である「宿泊者が少なく、日帰りが大半を占める」状況の打開をめざしていることを意味するのだろう。
 奈良で素敵な夜を過ごせるのならば、大阪や京都に移動してしまうのではなく、そのまま奈良に泊まっていこうという人が増える。そうすれば、夕食や朝食を奈良でとることになる。おみやげもよく売れる。お金が落ちる。
 けっこうなことだけれど、できるならば唐招提寺のライトアップのように、奈良らしい節度と品格をもったアプローチで施策を講じていってほしいなと、一市民・奈良ファンとしては願わずにはいられない。
 京都や大阪、東京とはまた違ったよさが、奈良にはたくさんあるのだから。




いいなと思ったら応援しよう!