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なら瑠璃絵 ~南都の「青い夜」

 奈良公園周辺で催される、冬のイルミネーション・イベント「なら瑠璃絵(るりえ)」。今年は2月8日(土)から14日(金)まで——まさにいま、開催中だ。
 祝日やバレンタインデーを含む期間とあって、奈良の年間行事のなかではめずらしく、若者に門戸が開かれた感が強めのイベントである。

 メインの会場・奈良春日野国際フォーラム  甍(いらか)の日本庭園は、一面がブルー。見わたすかぎり、どこの芝生も、青かった。

 冷えっ冷えの奈良を、よりによって寒色で照らしつくすとは……とも思われるけれど、仏教の瑠璃光浄土だとか、正倉院宝物の《瑠璃坏(るりのつき)》などのイメージを重ねているらしい。そういわれると、LEDの光も温かく見えてくる……かもしれない。

 わたしにとってのメインはというと、あくまで東大寺、興福寺、春日大社のライトアップのほう。きらっきらなイルミネーションは、若者や家族連れに、完全におまかせである。餅は餅屋。

近鉄奈良駅から、ひがしむきの商店街を抜け、興福寺の境内へ。中金堂が夜間開館中
てくてく歩き、東大寺大仏殿前に到着。中門越しに、大仏殿がライトアップされていた。門の内側には入れない
元朝参りやお盆に開扉される「観相窓」は、瑠璃絵でもオープン。大仏さまが窓から顔を覗かせるさまは、この3つの機会にしかみられない
闇に浮かび上がる、東大寺南大門。力強く、とてもすきな建築
月とともに
運慶《金剛力士像》(鎌倉時代  国宝)。提灯を手にしたツアー客たちが見上げる
阿形像。明るいうちは手前の柵が目についてなかなか見えづらく、このようなライトアップの状態のほうがよりしっかり観ることができる

 
 春日大社では、先週から引き続いて「節分万燈籠」が開かれている。
 夜の参道を歩いていると、12月の若宮おん祭・遷幸の儀での鮮烈な体験がよぎるけれど、雅楽器の音色も、神職たちの警蹕(みさき)の声も、今宵は聞こえてこない。道沿いを燈籠の火が照らす、ただ静かな夜である。

 

春日大社の創建神話を表した、切り絵風の燈籠
参道の各所に、サイネージやプロジェクション・マッピングが
内外で3,000基ともいわれる燈籠のひとつひとつに、火が灯されている。デジタルの光を交えたコラボも、たまにゃいい
夜の御本殿を特別参拝。こちらには、デジタル要素は皆無
燈籠には、寄進された年代、寄進者の名前、そして願いが透かし彫りされており、昼間にもましてくっきりと浮かび上がっていた
それぞれが、先人の願い・祈りの結晶
元和2年(1616)銘。柳宗悦のいう「工藝的文字」とは、このような文字のことだろう
御本殿の前には、とりわけ古い寄進銘の燈籠が並ぶ。慶長期の銘すら珍しくはない
連なる願い
最も燈籠が密集するあたり。圧巻である

  
 春日大社を出て参道を北に行き、メイン会場の前へ。ここでは、奈良の人気店が出店するマルシェが開かれている。
 あたたかい、おいしいものが出そろうなか、牛乳たっぷりの「飛鳥鍋」と「しあわせココア」をいただいた。

会場で人気の「しあわせココア」。吉野葛がブレンドされており、舌ざわりにもったり感がプラスされ、温かさが長く持続!

 身も心もあたたまったところで、帰宅の途につくのであった。
 
 
 

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