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生駒・宝山寺の「大根炊き」

 昨日は、1月1日の暗峠越えについての投稿だった。
 たまたまなのだが、そういえば、ちょうどぴったり1か月前の12月1日にも、わたしは生駒市内にいたのだった。生駒山中腹の宝山寺でこの日に開かれていた「大根炊き」に行くためである。
 宝山寺は、修験の行場に立つ山岳寺院。商売繁盛のご利益で名高く、「聖天(しょうでん)さん」の愛称で広く親しまれている。境内の庶民的な雰囲気からしても、地理的にも、大阪寄りのお寺といった感じ。松坂慶子・助演の映画『男はつらいよ  浪花の恋の寅次郎』(1981年)の主要なロケ地でもある(奈良だけど)。

 近鉄の生駒駅からケーブルカーに乗り継いで、中腹まで。山上には遊園地があるため、車体はメルヘン仕様である。

犬・猫2種類のうち、猫の車体「ミケ」に当たった。猫好きとしては幸先がよい
ザ・昭和の観光地
山麓から、長い石段が続いている。ケーブルカーを使えば大半がショートカット可能だが、それでも多少の登りは必要
旅館に土産物店、易者などの看板が並ぶ。今は営業していない店も多い
振り返ると、眼下には奈良盆地
灯籠には、大阪はじめ各地の個人や著名企業の名が。夫婦と間違えられた寅さんとマドンナ(松坂慶子)が、他の参拝客から写真を頼まれるシーンもこのあたり
線香の煙たちこめる境内。まずは本堂にお参り

  「大根炊き」は京都のお寺のものが有名で、メディアにもよく取り上げられる。12月中に催す寺が多いようだが、大原の三千院は2月の初午だとか(こちらにも行ってみたい)。いずれにせよ、寒い時期にほくほくの大根を食べて健康に、といった意味が込められているのだろう。
 奈良・生駒の宝山寺では、大根炊きはさらに特別な意味をもつ。この寺のご本尊・歓喜天には、大根をお供えするならわしがあるのだ。東京の待乳山聖天のように、参拝者がこぞって大根を仏前に積んでいく光景はみられないものの、大根の意匠は寺のそこかしこにみられる。
 12月1日の午前零時から昼過ぎまで大根1,000本が炊かれ、参拝者に無料で振る舞われる。これを食することで厄や毒が払われ、平穏無事に年を越せるのだという。昼前とあって、境内は大根をほおばる善男善女で賑わいをみせていた。
 特製の甘じょっぱい宝山寺味噌と一緒に、いただきます。

ほくほく
みんなで、ほくほく

 本堂の後方に写っている巨大な岩壁は、役行者や弘法大師の伝説が残る聖地「般若窟」。登ることはできないが、観音堂の裏手・真下から見上げることならできる。

般若窟

 以前ここに来たとき、祠のお世話をしにきたおばあさんと立ち話に花が咲き、お供えするつもりだったというお餅のおすそ分けにあずかった。おばあさん、この日も宝山寺にいらしていただろうか……
 わたしが宝山寺へ来たのはその1度きりで、奥の院へは行かず、観音堂で引き返していた。この日は、果敢に奥まで。

奥の院へ向かう途中の大師堂では、水子供養がおこなわれている。そのため、道沿いにはお地蔵さまがずらり、並んでいる……
奥の院大黒堂からの眺め。懸造りで、見晴らしがよい
奥の院に棲息する猫。かなり人馴れしている。上がってきた甲斐があった

 帰りは……ケーブルカーに乗らずに、石段を下ってみることにした。この日のわたし、なかなかアクティブである。

石段に沿って観光旅館が立ち並ぶが、多くは閉まっている。この旅館も、やっていなかった
現況。寂しいかぎりである
中央が、映画『男はつらいよ  浪花の恋の寅次郎』で寅さんとマドンナが食事をする場面の撮影がおこなわれた食堂。内部は当時のまま残っていて、ときおり営業しているらしい。いずれ来てみたい
石段が延々と。ここで暮らすのは、なかなかたいへんだろう
坂の街には、猫が似合う。こんにちは

 

 ——大根炊きの大根のおかげか、あれから風邪にもインフルにもコロナにも罹らず、達者でいる。みなさんもご無事で。

おみくじを購入。素焼きに加彩の施された、宝袋形のかわいい容器がもれなくついてきた。この宝袋、そして大根が、宝山寺のシンボルだ

 


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