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建立900年 特別展「中尊寺金色堂」:2 /東京国立博物館
(承前)
金色堂の内部に3つある須弥壇のうち、中央に安置される11体の仏像が、上野にやってきている。
かつて世田谷美術館などで開催された「平泉―みちのくの浄土」展(2009年)では、向かって右の西北壇の像を公開。中央壇の像がそろって寺外で公開されるのは、今回が初の機会となる。
中尊寺に行かれたことのある方はご存知のように、金色堂の手前には大きなガラス壁が設けられている。建物の全体はよくみえるけれど、堂内の細部は確認しがたい。
本展の会場では、像と像の間隔が大きく開いており、どれも間近で、360度からじっくり拝見できる。諸像を取り囲む4本の柱には、螺鈿細工が施された実際の柱の写真が巻かれている。行灯ケースは須弥壇の高さと同じというこだわりぶり。
中尊《阿弥陀如来坐像》の前に立っていると、金色堂の真ん中にいるような感覚になった。まさか、東京でこんな体験ができるとは!
配置を比べると、以下のようになる。
【中尊寺金色堂・中央壇の配置】
地 阿 地
地 勢 観 地
地 増 持 地
【東博・本展会場の配置】
勢 阿 観
地地地 地地地
増 持
※阿=阿弥陀如来像、勢=勢至菩薩像、観=観世音菩薩像、地=地蔵菩薩像、持=持国天像、増=増長天像
※下方向が正面
阿弥陀三尊は、創建当初からこの位置にあったもの。他の像は、のちになんらかの理由で西北壇の同じ像と交換された。個々の像の作風・材の相違を検討し、現在はこのように考えられているのだという。
展示室では中央壇での現在の配置を活かしつつ、各像を観やすいよう、レイアウトが調整・工夫されている。
地蔵菩薩像は、縦並びよりも横並びのほうが、たしかに見較べやすい。顎の上げ具合など、それぞれに少しずつ変えてあることが、この配置によってよく理解できた。
各像のサイズ感についても、現地では把握が難しいけれど、目の前で観ると、みな幼稚園児くらいの背丈だった。
このサイズ感だけでもうかわいらしいのだが、加えて、ふっくらとした丸顔。少年のような、みずみずしいお像である。
本展では他にも、中央壇に納められた奥州藤原氏初代・清衡の金色の棺や、諸仏の当初の光背、金色堂の部材ではと近年考えられている羽目板なども出品。
コンパクトな展示でありながら、出し惜しみなく、非常に凝縮された内容で満足度が高い。本展の会場を出る頃には、誰もが平泉へ巡拝したくなっていることだろう。
筆者は岩手の隣県の出で、中尊寺へは幼少時より何度もうかがっているが、かなりご無沙汰ではある。
その間に、京都・奈良はじめ全国の古社寺をさんざんまわってきたわけで、いま改めて行ったらどのように感じるのか、興味があったりもする。
コロナ禍で延期になった秘仏《一字金輪仏頂尊》の御開帳に合わせたいところだが、今年はどうだろう。行きたいところが、どんどん増えていく……
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※毎度充実、東博ブログ。