隠された存在:2 秘仏ご開帳
(承前)
ゆえあって非公開とされている仏像を「秘仏」という。
秘仏であっても、そのお姿を衆目にさらす機会がときおり訪れる。ふだん、秘仏と参拝者の中間にあって視界を遮断している「扉」や「帳(とばり)」を「開」くことから、これを「ご開扉」「ご開帳」などと呼ぶ。現地を離れてのご開帳は「出開帳(でがいちょう)」という。
ご開帳のタイミングは毎月の縁日であったり、織姫と彦星のように年に1度であったり、干支の巡りに従って12年に1度、さらには33年に1度というケースもちらほら見受けられる。
このような定期的な公開とは別に、展覧会への特別な借用、宗祖の節目の遠忌などなんらかの周年事業や、御即位記念といった契機もありうる。寺の施設を新築・修築するための「勧進(かんじん)」が目的となっている場合も。
東京国立博物館の今春の目玉企画は「空也上人と六波羅蜜寺」展であった。六波羅蜜寺の収蔵庫で拝観できた内容とほぼ同じで、その収蔵庫は改築工事中。会期の終了後まもなく、昨月末に新収蔵庫「令和館」が開館した。この展覧会もまた、勧進を背景とした出開帳の一種ということになろうか。
わたしはこの展示をスルーしてしまったが、その理由としては、単にチケットがとれなかったという以外に、じつはもうひとつある。
本展の開催が明るみになった際、期待したのは、かの有名な《空也上人立像》でも《伝平清盛坐像》でもなく、六波羅蜜寺のご本尊・国宝《十一面観音立像》がもしかしたら拝観できるのでは、ということだったのだ。
このお像は通常は12年に1度、辰年にのみ公開される。しかも、その際もお像までの距離が近くはなく、全体はよく見えないのだと聞いていた。
そのような秘仏であっても、寺名を冠した国立博物館の企画ということならば展示の機会があるのではないか。東博の展示室で、全体をしっかり観ることができるのではないか……その期待がからくも消えてしまって、少ししょんぼりしてしまったのだ。
どんなお像かご紹介しようと思い、お寺のホームページを開いてみたら……ウェブ上でも、お厨子の扉は固く閉じられていた。
とはいえ、次回の辰年は2024年。そう先の話でもない。
あと2年、待ちわびるとしますか……(つづく)
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