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小さきものは:1 千の葉の芸術祭・CHIBA FOTO /千葉市美術館

 なかば唐突に数年前の楽しかった朝ドラの話をはじめるほど、わたしは疲れているのだろうか……
 『ひよっこ』のことを書いた頃は、たしかに消耗の気がみられた。状況は違えどここ最近も似たような、けれどもおかげさまでずいぶんとはましな毎日ではあるのだが、当の放送中の朝ドラにも遠因はある。どうしてこう、そんな…………ま、まあ、ここではやめておこうか。

 『ひよっこ』回顧の直接の原因としては、本城直季さんの写真展を観たことが大きかった。
 先日、千葉市美術館のレビューを立て続けに上げたが、千葉市美ではさらにもう1本展示を観ていて、それが「千の葉の芸術祭」の一企画「CHIBA FOTO」の本城さんの展示だったのだ(PHOTOでなくFOTO)。
 
 本城さんは、まるでミニチュアのように見える特殊な撮影手法で、俯瞰的な角度からの風景を写す作家だ。そのキャッチーさから広告や書籍の装幀にしばしば採用されるので、作品を見れば見覚えがあるかもしれない。

(本城さんの作品ページをご紹介)

 わたしが本城さんを知ったのは、新聞に載っていた写真集『small planet』の書評記事だった。その後、書店で現物を確かめ、魅せられるものがあった。このときから、動向を注目していきたい写真家のひとりに本城さんが加わった。
 調べると、この写真集の出版は2006年。同年に木村伊兵衛賞も受賞されている。ちょうど10年後に出た写真集『京都』もよかった(今度は、奈良を写してほしいなあ)。

 またまた自分語りで恐縮だが、図体の大きさに反して、小さなものがすきである……とかいうと、どこか犯罪的な香りがしてしまうが、そうではない。
 寸法の小さなつつましいものを観ると愛おしく、気になって気になってしかたないのである。
 古美術の世界には、わたしのような「小品」を愛好する嗜好の人は一定数いる。掌にのせて指でつついたり、包み込んでみたりしてひとり愉しむ。造作の細かさ、手先の行き届かぬ稚拙さすら、賞翫の対象として憚らないのである。酒器の愛好も、つまるところはそのお仲間といって的外れではないだろう。清少納言もこう言った。「小さきものは、みなうつくし」。
 こういった傾向は珍奇なものでもなく、大なり小なり誰でも持っているだろう。ガチャガチャは大人になった今でも楽しいし、博物館の展示に街並みを縮小したジオラマを発見すれば、つい足を止めて見入ってしまうではないか。
 本城さんの写真を観ていると、つい「精巧」という表現を使いたくなるのだが、実際の風景をカメラで写していることに変わりはないのだから、精巧で当たり前ではある。それでも、間違いを承知でそう形容したくなるくらいのミニチュアぶりで、愛おしい。作品が多くの人の興味をひき、好まれる所以であろう。(つづく



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