大和の風:3 国宝 聖林寺十一面観音 /東京国立博物館
(承前)
美術館に通いつづけていると、かつて相まみえた作品との、ふたたびみたびの邂逅を果たす機会に恵まれることがある。
前に立つだけで時間が逆戻りし、過去の自分に立ち返る。馴れ初めはいつの季節、どこの館、どの展覧会で、どんな展示室だったか。そのとき自分は何歳でなにをしていたのか、隣には誰がいたかといった些事までが勝手に湧いて、霧のようにわたしをつつみこむのだ。
昔なじみとは、「もの」であれ「人」であれ、そういった作用をもたらす存在ではないだろうか。
殊に「もの」にか