自分をいじめる癖

私には、幸い、心を許せる友人が少しだけいる。
その中に、私の精神の病を知る人もいる。

彼女たちは、私を責めることはない。
どちらかというと、なぜそんなに自分を責めるのか
真面目をやめようよ、もっと自分を大切にして
優しくして、サボって、と
神様か仏様のようなアドバイスをくれる。

私は、ありがたい、と思いながらも
それを自分に許すことはなかったように思う。

誰にでも、癖、というものがある。

例えば、食べるときに、くちゃくちゃと音を出す癖
貧乏ゆすりする癖
話し方や座り方、歩き方、笑い方、
何にでも、誰にでも癖ってある。

癖は、治すのが難しい。
無意識レベルで染み付いているものは特に。
長年やってきたのならば尚更だ。

私にとって、
真面目すぎる癖、は、何十年と染み付いたものだと自覚している、
の割に私生活の中では随分だらしないところもある。
何ヶ月も同じシーツで寝たり、大掃除もしないから
冷蔵庫の中も汚れたり、トースターなんてパン屑だらけ。

私の真面目、は、主に
社会に出た時の仕事や人間関係の中で現れる。

真面目。だね。と何度言われてきただろう。
でも、これはもう性分というか、性癖のレベルで
治るものじゃなく、自動的に真面目にならざるを得ない。
覚えが悪いから、自宅でも仕事の予習復習をする。
それがまるで自分への義務のように、する。
そうやってやっと人並みになるのだからと思っていたから。

で。

そういうのを、いっぺん
かなぐり捨ててみようと、思ったのだ。

自分から、真面目、を取り除く。
適当、不真面目、いい加減、そんなものを
身につけていこうと。

そう思って
朝は寝坊しても、
いつもならば
「働いている人たちは、もっと早く起きて出かけて
大変な思いをしているのに私はこんなに自堕落で・・・」
で始まっていた朝の気持ちを
無理やり矯正してみる。

「ああ、日差しが明るいと気持ちがいいなぁ。
寝坊って最高」
という感じに。

朝は、トーストと紅茶、が定番なんだけれど
それも、何もつけないトーストで、おかずもなく、食べていたのは
自分にはそういう粗食こそふさわしいと思っていたから。

どんだけマゾなんだ。
と
意識を変えようとして改めて痛感した。

私は、私をいじめることが日常になっていたことに
今更ながら気づいた。
自分をいじめることでそれがすべきことだと
そしてそこから憂鬱へ落ちていくのが
自分の当然の姿なのだと
思っていた。

いやいや。違うだろう、私。
自分をいじめて鬱になることで
誰のためになってる？？？？？

誰のためにもなっていない。

ただ自己満足していただけだ。

家族にも迷惑かけるだけじゃあないか。

それならば、
金銭が稼げなくても、特に生産的な社会的な仕事をしなくても
日々ご機嫌で、笑顔で、明るく
家事をこなす専業主婦でいることの方が
どれだけ家族のためになるか。

愚かなことに、私は何十年と
そんなことにも気付かずに生きてきた。

自分いじめが癖で
自分いじめが趣味でもあったのだ。

どんだけドMなんだろうか。

で。

自分を愛そう、許そう、と思ったら
なんとそれの難しいことか！

私の認知は、歪むだけ歪み、縺れるだけ縺れ
こじらせるだけこじらせるところまで来てしまっている。

ここから、この癖を治せるのかどうか。
半世紀生きてきて、はじめて挑戦する。

私が、私を好きになることに。
自分をいじめるのをやめることに。
責めることをやめることに。

そうして過ごそうとした1日目。

おっと。
やることがない。

自分いじめの思考が出たらストップをかけて
憂鬱が出てきそうになったら、ストップをかける。

その時、無性に
細かい掃除をしたくなった。

私は風呂場へ向かった。

風呂は、入る前に浴槽を掃除はしている。
簡単に洗剤をかけてこするだけの掃除。

でも、壁や蓋の中にこびりついた水垢
シャンプーが乗った台
そういうのは洗っていなかった。

自分の心の穴を埋めたり
仕事することやそのために考えることばかりに
気をとられる毎日の中で

全部を後回しにして
気がついたら何年も、ちゃんと掃除などしてなかった。

私は、歯ブラシを右手に
風呂場に行き
蓋の隙間全部を、洗剤をつけて、丁寧に擦った。

水垢が、少しずつ取れる。
何年もかけて溜まった水垢が、黒い埃が、汚れが
取れていく。

私は今まで
何に時間を使ってきたんだろう？？？

自分の心のあれこれにかまけて
やった方がいいことをぜんぶ横に置いて
何か、取るに足らない無駄なことに
ずっと時間を使ってきたような気がしながら
私は１時間近く、風呂掃除をしていた。

うつ病。

確かにしんどいんだけれど

それと、
それに伴って身についてしまった自分をいじめる癖は
別物じゃないんだろうか。

自分をいじめるのは
自虐的でありながら、私にとっては
楽な手段だったのではないだろうか。
自分を責めていれば、反省しているのと同じなんだと。
辛さを引き受けることなんだと。

これって
大いなる間違いじゃないのか？？？

自傷行為も、それに似たメカニズムじゃないだろうか。

自分に優しくなること。
明るくいることの方が、よっぽどエネルギーが要るのだ。

今日1日、自分いじめをやめようと思ったが
半分くらいは、その時間になってしまった気がする。

私は、ここからはじめないといけないんだな。

自分をいじめるのをやめること。

こっから、まずはじめるんだ。