【最終回】運転免許証が失効した人間の記録【免許センター編】
あらすじ
2023年の年末、ひょんなことから免許の有効期限が切れていたことに気づき、仮免からやり直すことになった。教習所ではキラキラ学生青春オーラでメンタルを焼かれ、少ない自由時間を勉強に費やす毎日。教習原簿のスタンプラリーを終え、無事に卒業した私が向かうはラストダンジョン。果たして奪還できるのか。
教習所卒業後
教習所を卒業したあと、引越しや仕事で2ヶ月ほど時間が空いてしまった。免許の有効期限に近づいてきたので、急いで免許試験の予約を申し込んだ。
試験予約はネットでの予約になっていた。土日はほぼ埋まっていて、取れたのが3週間後。ここで落ちると次の予約までさらに時間を要してしまう。そのまま有効期限が切れたら、0からやり直しだ。
絶対に負けられない闘いが、そこにはある。
試験日まで、貴重な自由時間を全て勉強に費やした。(n回目)
試験当日、そして「裏校」潜入
そしていよいよ試験当日。
私は朝4時に起き、試験開始時間よりだいぶ早く二俣川駅に到着した。ある場所へ潜入するために・・・。
試験会場に行く道の途中、いかちい兄ちゃんが道のど真ん中に立っていた。
「あざます!!免許の試験ですか?!」
彼はナンパ目的ではなく、これから本免試験を受ける人たちへ裏校の勧誘をしているお兄さんなのだ。
私は聞こえないフリをして通過した。勧誘されなくても行くつもりだったからだ。陰キャは急に話しかけられても、ビビって何も反応ができないからだ。
試験会場の近くにあるという「裏校」。その存在は知っていたものの、怪しすぎて行くことはなかった。しかし今回、どうしても気になったので潜入することにした。
建物の前にはやる気のない金髪のバイトくんが立っていて、建物の中に案内された。
室内は異様な空気感だった。建物は古く、ボロボロの黒いベンチが並べられていて、みな座って何かを読んでいる。受付で3000円を支払うと、会員カードを渡された。2回目は無料になるようだ。そしてベンチに座るよう指示される。
その後、注意事項について淡々と説明される。渡されたのは分厚い黒いファイル。その中には試験に出やすい問題がびっしりと入っていた。試験問題には出題パターンがあるそうで、計95問×約10パターンが入っていた。それを試験前に目を通して確認できるのだ。
私語やメモを取ったりスマホで写真を撮ることはできず、ただひたすらと、淡々と問題集を眺める。すべての問題を解いていると時間が足りないので、間違えやすい箇所を重点的に確認した。
試験会場の受付時間30分前。ちらほらと出ていく人が増えてきて、裏校も朝の部の受付を締め切ろうとした時、一人の女性が入ってきた。
お、おまえ・・・残り15分に3000円かけて・・・何ができると・・・?
そう思いながら私はその女性を背にして裏校から試験会場に向かった。
本免試験開始
試験会場は言うまでもないが、免許の更新手続きと同じ場所だ。
会場入り口についた私はさながら、ポケモンジムのバッヂを全て集めて、またマサラタウンにもどってきた気持ちだ。
ほんとうは、ほんとうなら、このまま更新手続きの列に並んでいたはずなのに・・・。そう思いながら、私は本免試験の受付に向かった。
試験会場はかなり広く、100人くらいが入れる部屋が3~4室ほどあり、試験番号ごとに入る部屋が決まっていた。
「これから皆様にはデスゲームをしてもらいます」とでも言われそうな空間に緊張が走る。
部屋で待っていると試験官から説明があり、マークシートが配られる。
始まる。
いや、これで終わる・・・!
覚悟は決まった。あとはやるだけ。
待ってろよ、私の普通免許・・・・!!
そう思った矢先、遅れて部屋に入ってきた人がいた。
あの女だ。
女はキョロキョロと自分の受験番号が書かれた席を探し、席についた。
とても嫌な予感がする。そんな気がした。
本免試験開始
試験は以前と変わらず90分。問題が書かれた冊子を読み、マークシートに書き込む。静寂の中、ひたすら問題を解く。
「30分経過しました。」試験官が告げる。
このスピードなら、間に合う。
ただ、できれば早めに終わらせて見直す時間を作りたい・・・。
そんなことを考えているうちに、
「終了です」
あっという間に試験時間が終わった。
「お疲れ様でした。合格発表はここで行います。それまでは移動は自由です。」
合格発表は60分後。特にやることもなかったので、ちょっと寝た。
合格発表、そして・・・
受験者が全員席につき、合格発表が始まった。以前は電光掲示板に受験番号が出たが、今は室内に設置されたモニターに番号が表示されるらしい。
試験官「はい、合格発表いたします。モニターに表示される受験番号を確認してください。」
…
…
あった。
まあ、その・・・なんだ。そうだよな。
2回目だもんな。
試験官「不合格だった方は、このあと再試験の案内がありますので部屋の外で待機してください。」
不合格者が立ち上がる。椅子を動かす「ズズッ」という音が室内に響き渡る。それを見送る合格者たち。とても気まずい。
そして
あの女も立ち上がった。
ちなみに裏校で見た問題はあまり出なかった。(参考にはなったYO☆)
免許奪還~夢は見れたかよ?~
不合格者の退場を見守ったのち、合格者の案内が始まった。このまま免許の写真撮影が始まるらしい。私は事前に「奇跡の一枚」を用意していたのだが、持ってきた写真を使う場合は後日交付になるらしい。
免許を取りに行く為だけにわざわざ来るのは面倒すぎる・・・。できれば、更新の日以外に行きたくない。
しかし、朝一起きて化粧もろくにしていない顔で免許の写真を撮るのもいやだ。
私の天秤は大きくぐらついた。
最終的に天秤は「時間」「メンタル」「労力」に傾き、会場内で証明写真を撮った。証明写真を撮ってからはサクサク進み、無事当日に免許証を受け取ることができた。
がんばったねえ・・・。たった5ヶ月されど5ヶ月。
免許証を手に取った瞬間、失ったものを取り返す難しさと重みを感じたのであった。
エピローグ
早い事で、免許失効に気づいた頃からもう1年経とうとしている。
ふだん普通に運転しているが、私は来年の4月までは初心者マーク🔰を付けて運転しなければいけない。
今ではあの時間も無駄ではなかったと思っている。忘れかけていた交通ルールや新しい規則なども学ぶことができたし、安全運転を今一度心に刻んで運転できている。
だが教習と試験はもう二度としたくない。
みなさんもこれを機に、カレンダーに更新日を入れておきましょう。過ぎても半年、最悪1年未満ならまだ間に合う。
そこから1日でも過ぎたら全てを失う。
社会人になってから普通免許を取り直すのはとてもじゃないけど時間と金とメンタルがやられる。
ただ、忘れなければ失うことは無いのだ。
この記録を読んで、みなさんが良き免許ライフ(?)を送れることを願っています。
最後までお読みいただきありがとうございました。