【リーダーのための類人猿分類】 部下を叱る時のポイント
リーダーの皆さんから、「部下をうまく叱れない」という悩みをよく聞きます。
確かに最近は「褒めて伸ばす」とか「叱っても人は成長しない」などという風潮もあって、叱ることに消極的なリーダーも増えているようです。
しかし、ミスや未熟をそのままにしていては、将来のマイナスになることも多々あります。放置することで本人だけならいざ知らず、チーム全体に迷惑が及ぶことも多いと思います。
ですので、ビジネスにおいては「叱らなくてはならない場面は多い」と考えた方が良いと思います。
では、どのような叱り方が良いのでしょうか。
相手を叱る上で最も効果を左右するのが「相手との信頼関係はあるか」ということです。極端に言ってしまうと、信頼関係のない相手には、いくら叱ってもまったく響かないこともあるかもしれません。
皆さんも、そのような上司からいくら叱られても心から考え方や行動を変えようという気持ちにはならないと思います。
このような場合、上司として明確な事実だけを指摘し、感情を挟まずに箇条書きのように注意事項を挙げる方が、結果として相手の行動を変えることになるかもしれません。
信頼関係については、今後のコラムでも紹介していきますが、一朝一夕で築けるものではありませんので、こちらは今回のテーマとは別に、コツコツと積み上げていってください。
以上を踏まえて、下記内容が参考になれば幸いです。
◆叱る時に気を付けたい5つの事
①叱ると怒るを区別する
まず重要なのは叱ると怒るを区別することです。
ご存じの方も多いと思いますが、ビジネスや教育の場面では「怒る」と「叱る」は、それぞれ下記のような解釈をすることが一般的になっています。
※国語辞典では同義という表記もありますので、便宜上の使い分けと考えて下さい。
「叱る」言って聞かせる。教え諭す⇒本人のために(苦言も含め)助言する
「怒る」自分の感情を相手にぶつける⇒自分がすっきるするために行う行為
叱るが口偏なのに対して、怒るには心(したごころ)がついています。
漢字を見るだけでも、叱るが「口で言って聞かせる」ことを目的としているのに対して、怒るは「ただただ感情をぶつけること」と解釈できるのではないでしょうか。
叱ることは相手のためであり、チームのためになることです。
必要とあらば、自信をもって叱るようにしましょう。
②対処する場面と叱る場面を分ける
もし、上司であるあなたが、部下のミスが発覚し、対処している瞬間に出くわしたのであれば、叱ることよりも一緒に対処することに注力しましょう。
この時点で「なんでそんなやり方をしたんだ?」「なんで事前に確認をとらなかったのか?」などと問いかけても、部下の頭の中はこの状況をリカバリすることで一杯ですので、何も入ってきません。
対処する場面と叱る場面は明確に分けましょう。
また、あなたが対処の場におらず、報告を受けるだけの状況であれば、「対処の方法・内容」「どれくらい(時間や量や金額など)マイナスがあったのか」「お詫びに対する相手のリアクション」といった事実関係は叱る前に確認しておきましょう。
いざ叱るという場面で、報告とごちゃまぜになってしまうと、相手に教え諭すという本来の目的が薄まってしまうからです。
③皆の前で叱らない
これも一般的になっていますが、叱る時は皆の前で叱らずに1対1で叱ることが重要です。
皆の前で叱られることで「恥をかかされている」「私をいじめたいだけなのでは?」という余計な感情が湧き、あなたの言葉を素直に受け止められなくなる恐れがあるからです。
④すぐに叱る
上記②で対処と叱る場面を分けると記載しましたが、できるだけ早く叱ることも重要です。
「冷静になってから」と言って時間を空けるリーダーもいますが、時間が経てば経つほど、記憶は薄れていきます。
上記のように「対処」を分けるため、対処が終わった時点でかなり冷静になっている筈ですし、対処が終わったことで急激に失敗に対する熱が冷めていきます。
特にチンパンジータイプやオランウータンタイプは、良い意味で、気持ちを切り替えて先に進もうとしますので、同じ失敗を繰り返すこともしばしばです。
失敗の原因を探る上でも、この失敗を今後に生かすためにも、できるだけ記憶が新鮮なうちに叱ってください。
⑤耳を傾ける状態にする
ここが類人猿分類をうまく活用できるポイントであり、多くのリーダーが見落としがちな重要なポイントです。
いざ、叱ろうとする時、「相手が叱られる心構えになっているのか?」というのは非常に重要です。
いくらこちらが熱を持って叱っても、相手に響かなければ何の意味もありません。相手がこちらの言うことを真摯に受け止める状態を作りましょう。
そのために、タイプごとに下記のような点を気を付けてみて下さい。
チンパンジータイプ
チンパンジータイプは、上司からの評価を気にしますので「この失敗がどのように評価されるか」というのは大きな関心ごとになります。
ですので、まず「期待していたのに残念だという気持ち」を伝えてください。
一方で、チンパンジータイプは失敗からの立ち直りも早いため、自分の判断で「大した問題じゃない」と考えてしまうと、もう次のこと(この失敗を取り返すこと)に考えを向けることもあります。
そのため「上司であるあなたがこの問題を軽く見ていない」「今から言うことをしっかりと聞くように」という意味を込めて、「残念だ」という表現をつかってみてください。
ボノボタイプ
人の気持ちに敏感なボノボタイプだけに、チンパンジータイプと同じく「残念だ」という表現は効果があります。
ただ、チンパンジータイプと違うのは「上司である私が、もっとあなたに細かい指示をしておけばよかった」「私が事前の確認をしておくべきだった」というようにベクトルを自分に向けることです。
そうすることで、自分のことよりも相手の気持ちを大切に思うボノボタイプは、自分自身はこの失敗を大事と受け止めていなくても、上司であるあなたを通して、自分事として受け止めるようになると思います。
オランウータンタイプ
一番叱っても響かないのがオランウータンタイプだと思います。
これは、失敗を反省していないのではなく、早い段階で自分なりの結論を出し、自分のなかではすでに決着しているからです。
こうしたオランウータンタイプに対しては、その心の内を聞くことから始めるとおいと思います。
「どこが失敗したポイントだと思うか」「次からどうやって防止する?」といったことを問い、発言させたうえで、上司である私の意見を伝えることで、自分の結論の再検証が始まり、上司であるあなたの考えを受け入れる状態になります。
ゴリラタイプ
ゴリラタイプは、ミスが起きた瞬間からずっと反省をしています。
「申し訳ないな」「いろんな人に迷惑かけちゃったな」と、ずっとくよくよしているので、そのままの状態で追い打ちをかけるように叱っても、むしろ頭に入ってきません。
ですので、一度頭の中をリセットしてあげる必要があります。
「失敗したことは仕方ないことだから、今はこれからのことを考えよう」という表現で、なるべく相手の気持ちを楽にしてあげましょう。
以上、リーダーが部下を叱る時に気を付けたいことでした。