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割に合わなくても飲食店経営を続けるのはなぜなのか

会社のアトツギをサポートするメディア「ツギノジダイ」に、先日こんな記事がアップされていました。

内容は、公認会計士でラーメン店主でもある石動龍さんが、行列のできる店をわずか2年1ヶ月で辞めることにした背景を綴ったもの。そこには多くの飲食店が抱える悩みや課題がしたためられていました。

たとえば値上げできない問題

材料費高騰のお知らせが業者から届くも、小さなお店では交渉力が弱いため、一方的に飲まざるを得ないと石動さん。固定費を下げることも容易ではない。しかし値上がりしたコストを価格に転嫁すれば客離れが起こることは必至だと考え、結局一部のメニューを除いて値上げはできなかったと言います。

あるいは人手不足

少子化で働き手が少なく、採用してもとつぜん音信不通になるなどシフト管理には苦労したそう。営業以外にも細々とした雑務が多いので、仕事がなかなか終わらず長時間労働に。

あとこれはならではの現象かもしれませんが、働き手と同様に食べに来るお客さんのパイも減っている状態なので、たとえ東京に引けを取らない料理を作ったとしても行列ができることなどほとんどなく、安定的に収入を得ることが難しいと話します。

ネットの口コミも頭を悩ませた問題です。最終的な評価は星4つと好成績でしたが、反論できないネガティブな口コミには心を痛めたこともあったようで。口コミの掲載元に削除要請をするも、受け付けられることはほとんどなかったと言います。

う〜ん、まさしく飲食店の悩みや困りごとがギュッと詰まった記事。筆者の石動さんは、総じてこんなふうに言っています。

私はサラリーマンや士業経験がありますが、同じ程度の年収を得るよりも、飲食店で同じ金額を稼ぐ方が、圧倒的に難しく、肉体的に大変で、精神的に疲れると感じました。誤解を恐れずに言えば、つまり、「割に合わない」という一言になります。


割に合わないと言われるのは致し方ない事実

「割に合わない」の一言は、実際に飲食店経営をやってきた身としてグサッときました。そりゃ、公認会計士さんから見たらそうでしょう。

総務省統計局のデータを見てみると、一人当たりの労働生産性は公認会計士が属する「学術研究,専門・技術サービス業」は上から2番手。一方で飲食サービス業は最下位。天と地ほどの差があります。「割に合わない」と感じるのは当然です。

ちなみに記事の中で、「1ヶ月の売上は約240万円ほどで、手元に残るのは60万。だいぶ少なくなった印象」と語っていますが、飲食店で、人も雇って利益率が25%って、なかなか驚異的な数字ですよ。そこはさすが、公認会計士さんだからこそなせる業なのでしょう。ただそれでも「少ない」と思うんですから、まぁ、やってられんわ!と思うのも無理はないと思います。

でも不思議ですよね。こんなに生産性が低いのにも関わらず、頑張って続けている飲食店って全国にたくさんあります。朝から晩まで汗水流し、人手不足に悩まされ、集客に四苦八苦し、理不尽なクレームや口コミに疲弊する。それでもやめることなく、愚直に努力を続ける。一体なぜなんでしょう。

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