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【信州コンシェルジュ体験記⑧】北八ヶ岳エリア/赤岳鉱泉山岳診療所

こんにちは!工房信州の家です。
この記事は、フォレストコーポレーションが4年前から実施している「信州コンシェルジュ」の体験レポート第8弾。
今回は、国際山岳医の資格を持ち、登山者のための登山者検診も行っている市川さんのお話を聞きに行きました。

信州コンシェルジュって?

信州コンシェルジュとは、
『信州で「信州らしい暮らし」を提案している私たちが、信州のことを誰よりも知っていたい。信州のプロフェッショナル、信州のコンシェルジュになろう。』そんな想いから始まったプログラム。
信州らしいアクティビティを体験しに行ったり、信州に根差し、信州を楽しんでいるプロに会いに行きます。


工房信州の家オーナー・市川 智英さん

今回「信州コンシェルジュ」の活動にご協力いただいたのは、市川智英さん。市川さんは工房信州の家に住んで4年目になるオーナーさんです。

経歴

愛知県出身。富山大学を卒業し、現在は長野県松本市にある松本協立病院の循環器内科に勤務する総合内科専門医。
国際山岳医の資格ももち、登山者のための登山者検診も行っている。
自身も山好きで四季を通じて登山や沢登りを楽しんでいる。

登山者検診

市川さんが携わられている、赤岳鉱泉山岳診療所に行く前に、松本協立病院にて登山者検診を受けに行きました。

写真右側が市川さん。

心肺機能を数値としてみることができるので、普段では気が付かない自分の体力の変化を知ることができ、登山中も「これ以上は無理しない」とペースを自分で調整できたので、事前に自分の体調を把握する大切さがわかりました。

いざ登山

赤岳鉱泉山岳診療所にて、市川さんのお話を聞くために赤岳に登りました。

出発前の1枚
後列中央が市川さん。

事業への想い

赤岳鉱泉に山岳診療所ができた秘話、市川さんが登山を好きになったきっかけをお聞きしました。

①赤岳鉱泉に山岳診療所ができた経緯

富士山といった有名な山にはたくさん診療所がありますが、北アルプスや八ヶ岳には非常に少ないです。でも長野県は関東からのアクセスも良いので非常に登山者が多いです。
そんな中で、診療所をつくるきっかけになったのはコロナの流行でした。
(赤岳鉱泉の)オーナーが今後の運営を考えた際にもっと山岳医療に力を入れなければと思い赤岳鉱泉にも診療所の設置が決まりました。
始めは客間のような場所で試験的に診療所を開いていたのですが、恒常的に医療を提供するための拠点として赤岳鉱泉診療所ができました。

②どのくらいの人が診療所を利用するのか

2023年の7月の受診者は14人ほどでした。シーズンになって登山者が増えたり、連休の天気の悪い日は少し無理をしてくる方も多いので、事故が起こりやすいですね。
最近は診療所のネット環境も整備されたので、搬送先の病院へ患者さんの様子を写真で共有するなどして連携して診療を行っています。

③登山が楽しくなった瞬間

大学生の時、山岳部の友人と初めて登山に行ったときはハマりませんでした(笑)
友人が山に詳しかったので、ただただ後をついていくだけだったんです。
私が山にハマったのは、社会人になってからでした。
山を全然知らない先輩に誘われたので、とにかくいっぱい調べて登頂の計画を立てました。当日は大雨だったのですが、何も見えない中歩いたり、山頂でカップラーメンを食べたりしたのがすごく楽しかったです。
自分自身で登る山やルートを決めて、その為に必要なものを考えたり、どこが危険かを調べた上で登頂することが登山の醍醐味だと思います。
よく「山のどんなところが好きなんですか?」と聞かれますが、私は「非日常を楽しめるところ」と答えています。大の大人が雨に打たれながらわざわざ山に登ったり、カップラーメン食べたり…そんな日常とは違う時間が面白いです。
ちなみに私の持論ですが「山で雨に打たれても楽しい」と言っている人は山にハマりますね。(笑)
山の晴れはご褒美なので、ご褒美がもらえるかはいつもわからなくて、もらえたらラッキー。だからこそ晴れた時には「また行こう」と思えます。

④今後の山岳医療はどうあるべきか

山岳医療の地位の向上を目指しています。
昔、ある山で体調が悪かったが診察を受けず、登山中に高山病で亡くなってしまった方がいました。その方は診察が有料だから受けなかったというわけではなかったのですが、「無料ならかかってくれていたかもしれない」という医師の思いがきっかけで無償での診療が増えていきました。
その先生の思いもとてもよくわかります。しかし、無償で続けるとなると給料や施設を整える資金がなく、持続性が失われてしまいます。だからこそ診察を有償化することは山岳医療を進歩させるには重要なことだと考えます。
街の医療と同じくらい、看護師さんや医師が山岳診療所でしっかりと働ける環境の実現を目指しています。

⑤私たちにできる登山の心得

私が登山に行く際には、絆創膏や最低限の薬を持っていきます。
あとペットボトルのフタに穴をあけたものは傷口を洗う時に水の消費量も抑えられて、水圧も確保できるので便利です。
ただ一番大事なのは、怪我をしないようにすることです。
日頃のトレーニングや、自分の体力にあったペース配分、水分補給をしっかりとすることで転んだりするリスクを減らすことができますし、事前に登山者検診を受けるのも予防の一つです。 
日本は検診文化が少ないのですが、海外はトラベルメディスンと言って旅行前に診察を受ける文化があります。外的要因に備えるのはもちろん、自身の体の状態を知り、身体的に危険がないかを知るのが大切なのです。
擦り傷であればファーストキットで治療ができますが、骨折は治せません。
なのでみなさんにはぜひ、怪我を予防する工夫をしていただきたいと思います。

信州コンシェルジュ体験記はシリーズ企画。今後も信州に根付き、信州を楽しんでいる方にインタビューを行い、発信していきます!