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ちょっと胸が苦しかった話

とある週末、コロナ禍でずっともうどこも行けず長く塞ぎがちの遠く離れて暮らす70代の母が珍しく嬉しそうにLINEして来た。
どうやら父と二人きりでドライブに行って来たそうだ。

え?夫婦でドライブ?そんな事?と思われるかもしれないけど
うちの場合のそれは奇跡に近く、そう、両親は私が幼少期から仲が良い方ではなく、それが長らく私の人生最大の悩みでもあったほどだ。

だから私としては青天の霹靂だったのだが更に話にはまだ続きがあって。

母曰く、そのドライブで父が車を止めて突然道端を撮影し始めたと。
私にも送られて来たそのなんてこたない道端の写真は
どうやら17年前に死んだ我が家の愛犬の「お散歩おしっこスポット」だったらしい。
「お父さんはあの道もこの道も〇〇ちゃんのおしっこスポットだったよと、ほんとよぉ覚えとるばい。」と母。


そもそもうちの父は、感情表現が不器用な九州男児だけど動物と子供には鼻の下が10メートルくらい伸びる典型的タイプで、そんな父が嗚咽を漏らして泣いた姿を見たのは後にも先にも17年前の愛犬が死んだ時だけだ。
そして今回の奇跡的夫婦ドライブも母が「〇〇ちゃん(死んだ愛犬)を拾った海に行きたい(愛犬は捨て犬だった)」のような話をポロリと父へしたことがきっかけとなったらしい。





思い出の海には行けなかったけど、多分父が母の気持ちを汲んで「おしっこ街道巡り」に母を連れて繰り出したかと思うと、胸の奥の方がギュッと締め付けられた。
しかも、私だって今でも思い出したら秒で泣いてしまう溺愛した愛犬との思い出の場所をめぐるドライブだなんて。

行きたいと行った母の気持ちを想うと、それに応えた父の気持ちを想うと、あの頃二人の激しい喧嘩の仲裁に入っていた死んだ愛犬を想うと、先日の母からのとても嬉しそうな報告LINEを読みながら、韓ドラ「愛の不時着」ばりに人知れず号泣してしまった。





愛犬が繋いでくれた夫婦や家族の絆に胸熱なのは当然のこと
夫婦ってのはほんと外からは全くわからんもんだ。

あんだけ罵り合っても憎しみ合っても最後はお互い「苦行僧の日々」と冗談を飛ばす日がまーさーかー来るなんて・・・

繊細な私は、日々ちゃぶ台がひっくり返される激し目な夫婦喧嘩が本当に辛すぎて悲し過ぎて小学生ながらに心療内科でカウンセリングを受けるほどだったのに
あれマジなんだったのよ(笑)どんな社会勉強だよ!(笑)


まぁ、でも愛の形は本当にそれぞれで、愛おしいってことを身をもって知れたことに今では感謝するし、それ自体を理解できる自分が嬉しい。
そして愛犬○○ちゃん、我が家に出会ってくれてありがとう。

最後に、両親が刺し殺し合わずに(笑)何十年の時を経て心を寄せ合う日が訪れた奇跡が何より嬉しい。

人生は到底解せぬがなかなか面白い。

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