【卒業生ストーリー vol.1】農村との接点をつくる農家カフェを開業|稲垣 将幸/クリスさん(3期生)
地域:神戸市 西区 平野町
事業:有機農家 / 有機野菜レストラン「C-farm」
これまでの歩み
〈学生時代〉神戸の野球強豪高校で野球部に所属
千葉の中央学院大学の野球部に所属
2015-2019 四国のプロ野球独立リーグで選手としてプレー(香川→愛媛)
2019.10 起業を志し、神戸へUターン。様々な職業を経験
2020.11 西区「ナチュラリズムファーム」で就農研修開始
2021.9-2022.3 神戸農村スタートッププログラム受講
2022.11 農家として独立し、農家カフェ「C-farm」をオープン
2023.9 子ども向け食育交流プログラムを初めて受入れ
2023.10 子ども食堂をスタート
有機農家として農家カフェを経営
有機農業をしながら、西区の平野町で農家カフェ「C-farm」を経営しています。開業から2年ほど経ち、現在は農業で2名、カフェ事業で11名の従業員にパートタイムで働いてもらっています。自分自身は週3日程度カフェに立ち、残りで農業や他の仕事をしています。カフェの方はランチがメインですが、おかげさまで営業日には店内席はほぼ埋まるようになってきたので、最近増設したテラス席の方にもお客さんが来てくれるようになればいいですね。
また、プログラムで同期だった倉内さん(倉内敏章さん|3期生)の都市型菜園事業「そらばたけ」で連携して、街のビルの屋上などに設置しているプランター式菜園のサポート農家などもしています。
ビジネスチャンスを感じた農業で起業すると決めた
プログラム参加の直接のきっかけは、農業研修先だったナチュラリズムファームの大皿さん(大皿一寿さん)がプログラムの運営に関わっており、「カフェをやるなら行った方がよい」と勧められたことです。
元々、独立リーグにいた20代前半の頃から自分で起業してビジネスをしたいと思っていたので、26歳のときに野球をやめて神戸に帰ってきました。最初は、起業をするなら何がいいだろう、とバーテンダーやフィットネスジム、建築現場とか、色んなバイトをしたんです。その中で一番ビジネスチャンスを感じたのが、衰退してきている「農業」でした。独立リーグ時代に地域貢献活動として田植えの手伝いに行ったりして、農業をいいなと思っていたこともありましたね。
そこからバーテンダー時代のつながりで大皿さんに出会い、「農家カフェをやりたい」と伝えたとき、「難しいよ」と言われました。(笑) でもその後もやり取りが続き、農家カフェをするには農家になるための研修から始めないといけない(*)と知り、大皿さんの下で研修を始めました。並行してプログラムにも参加しながら開業準備を進めて、無事研修を終えた2022年10月30日の翌日11月1日にC-farmをオープンしました。
*神戸市では、農地の権利取得を希望する新規就農者等は、まずは行政又はそれに準ずる機関の就農研修等を原則1年間以上(1,200時間以上)受講する必要がある。
プログラム参加が 開業手続きの際の名刺代わりに
僕の場合は「農家カフェをやる」と決まっていたので、プログラムは事業プランや手続きなどを改めて整理する場になりました。印象に残っているのは、北区・道場町の「東馬場農園」さん(テクノロジーを活用した大規模なトマト農園)を見に行ったことです。自分のスタイルとは違う農業で、個人ではなかなか見学する機会もないので、衝撃を受けたし勉強になりました。
あと、実際に開業手続きをするときに4カ所くらい色んな機関に行かないといけないのですが、プログラムに参加していたことで相手が自分を知ってくれていたりして、話がしやすかったです。行く先々でパンフレットを名刺代わりに使っていました。具体的には、神戸市の経済観光局農水産課や神戸市産業振興センターなどです。
また、受講生とか運営メンバーとのつながりも活きています。例えばデザイナーさんに発注するにしても、もともとつながりがなければひとりの客と業者さんという関係になるけど、プログラムで出会ったメンバーであれば農業のこともある程度知ってくれていたりする。普段ずっと一緒に活動しているわけじゃなくても、何かあったときに頼ろうかな、っていう顔がたくさん浮かんでくるというのはありますね。
「人にいいこと」「環境にいいこと」を軸に事業を拡大していく
「人にいいこと」「環境にいいこと」を軸に事業を展開していきたいです。カフェ事業の中では、昨年から子ども食堂を始めたり、子ども連れの団体の農業体験の受入れを実施したりしています。「農業する人を増やしたい」という思いがあるので、将来のある子どもにとって、農業が憧れの対象になってくれたらと。収穫体験だけじゃなくて食べるところまでがワンセットなので、農業とカフェがつながっています。
この先もまだまだやりたいことや構想があります。カフェもいずれは人に任せて、自分は農業に軸足を置いて、その農業が安定したらまた次の事業をやって・・・。ベースにあるのは、そこにあるものを使いたいという気持ちですね。だからカフェも元々倉庫だったところをリノベーションしました。「人にいいこと」「環境にいいこと」をやっていくのは、今後の事業でも変わりません。
■インタビュアーPICK UP!
取材日は「そらばたけ」の活動の合間に、倉内さんも同席で取材させていただいた。「子どもや農への考え方が共通するところを感じるから一緒にやってる、普段話さないけどね。」と少しはにかみながら話してくれたおふたり。農村をベースに活動するクリスさんと、都市をベースに活動する倉内さん。このようなコラボが生まれやすいのも「都市と農村が近い」神戸ならではと言えるかもしれない。ここでは詳細を書くのは控えたが、新しい事業も着々と準備していると話してくれたクリスさんの顔は、まさに経営者そのもの。「農業はビジネスチャンス」と語り、着実に前進するクリスさんの今後は、神戸だけでなく日本の地方部の課題に明るい可能性を感じさせてくれる。
◆2024年9月~の神戸農村スタートアッププログラムの詳細はこちらのWEBサイトよりご覧ください。
文:臼井 綾香(コーディネーター)
写真:山田 真輝(コーディネーター)
〈取材日:2024年6月〉
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