ショートショート5



帰り道の歩き方

タクシーやバスに乗る時、スマホを見るだけでは勿体無いので窓から外を眺めては、ただ歩いているだけの人を見ていた

自転車に乗っていない、バス停に座ったりしていない、仕事中ではない、ただ歩いているだけの人を眺める

実は、嬉しそうに見える歩き方や、ハキハキした歩き方、疲れていそうな歩き方など様々存在する

あの人はどこへ向かって歩いているのだろうか?
目的や、目的地があり、そこへ向かっている途中なのだろうか

それとも、全ての予定が終了し家に帰る途中なのか

そういう事を想像しては勝手に当てはめて、適当に忘れたりする


ばあちゃんのピザ

昔の小学生は土曜日も授業があった
3時間目で授業が終わり、家に帰って昼食をとる
私の家は共働きで、昼間は祖父母だけ家にいた

土曜日の昼食は簡単な物が多く、その中でたまに冷凍ピザが出る事があった

直径20cmほど、薄いビニールで個包装されているピザからは、人をなめているとしか思えない味と香りがする

しかし私はそのピザが好きだった

そんな事をふと思い出し、スーパーの冷凍食品コーナーを探すも同じ商品は販売されていない

最近の冷凍ピザはパッケージから見た目も良く、イケイケなものが並んでいる

私が探しているピザは、なんだかもっとダサかった
やたらアメリカンなパッケージだった気がするのに…

仕方なく、あの頃食べていたペラペラのピザに一番近い雰囲気の冷凍ピザを購入し、あの頃と同じようにアルミホイルを下敷きにしてオーブントースターで焼いてみる

一応期待して食べたが、美味すぎて期待外れだった


たまごパンきゅうり

ゆで卵とマヨネーズを、塩コショウを加えて混ぜる
きゅうりを薄切りにする
食パンを焼いてバターを塗り、それらを挟んで作るサンドイッチ

こういうのをたまに食べたくなるけど、どうもきゅうりが余り過ぎる

食パンは2枚、卵も2個ほど使う
それに比べてきゅうりは薄切り5枚ほどなので、1本買ってしまってはどうしようもなく多く余る

余ったきゅうりは別の料理に、とかそういう話をしてないんですよ私は

私はきゅうりが食べたいんじゃなくて、サンドイッチにきゅうりが必要なだけで、余ったでっけぇきゅうりは今いらないの!と思いながら断面が斜めになったきゅうりを眺めて、結局また仕方なく同じサンドイッチを作る

食パンなんて最悪冷凍庫で凍らせておろし金ですり下ろせばパン粉になる
卵なんて毎日使うから腐る事は無い


きゅうり、君はどうなんだよ
変な量が余る、ほぼ水で栄養は薄い、日が立てば明らかに不味くなる、ポテトサラダに入れるなら塩をふり水抜きが必要、冷凍保存も出来ない…
なっさけない…

という事でいつもきゅうりを買わない
それゆえ私はサンドイッチが食べたくなったら(自作する方が相当安いのに)パン屋で買ったりする

明らかに勿体ないと分かるが、きゅうりを無下にするストレスを考えると、こちらの方が安上がりだったりするのだ


とって

人間と動物の違いはたくさんある
ふと、「取っ手」という文化に感動してしまった

自然界に取っ手は存在しない

自然界にコンピューターが存在しないのは分かる
人間に近い霊長類、オランウータンやボノボにコンピューターは作れるか?絶対に作れない

でも、取っ手くらいなら・・・と期待してしまう
しかし作れない
いや、知能・技術的には作れるかもしれないが、「あれば便利」とかいう思考回路では作らない

その辺に転がる手頃な石に木の枝をあてがって、ロープで縛れば取っ手付きの石斧になるが、動物にそれは出来ない
現代社会においてもそんな動物がいたらニュースになるだろう

逆に人間は動物のように、火も使わず、道具も使わず生きていく事は最早出来ない

私は動物が好きだが、取っ手ひとつで人間と動物にはこんなにも距離があるのだと考えると、心を通わせる事は非常に難しく思える

しかし、ペットや野生動物としっかり意思疎通を図る人間が少なくない所を見るに、真の信頼関係というのは効率や利害を越えた場所にあると思えて嬉しくなる



猫の腕組み

天竺鼠という漫才師の川原氏はいつも耳の話をする
どうやら「マスクをつけて、眼鏡をかけて、イヤホンをつけて、耳に働かせすぎている」という考えがあるそうだ

耳側としても「聞くだけで良いと聞いていたんですけども」って思っていますよ

宇宙人が人間を見たら「耳使いすぎやろ」と思うで

などなど
彼はそんな耳を讃えて耳グッドというギャグをする


そんな彼に影響されてか、私は近頃腕組みが気になり始めた

ものすごく「収納」って感じがする…と

加えて、あぐら
あれも「収納」って感じがする
あぐらかいて腕組んでるおじさん、めちゃくちゃに収納されてる事になる

いや、自分で自分を収納しているのか

あぐらかいて腕組んで土下座したら折り紙みたいになるよね

もうこの話は終わりです


厨二病みたい

最近、「分断」を意味する言葉がやけに格好良く聞こえてしまう

もう「分断」すら格好良い
今の私にとっての分断三傑を紹介しよう

境界線(きょうかいせん)
分断代表と言っても良いのではないだろうか
シンプルゆえの格好良さがある
ゆずの曲でも「境界線」があるし、歌詞も良い

境界線を超える時 僕は鳥にでもなるんだろう
そこは誰にも邪魔されない「自由」と「優しさ」の世界
境界線を追い越す時 それは多分きっと
新しい朝の訪れ

境界線 / ゆず

格好良いやんかいさ…

喫水線(きっすいせん)
「喫」という文字がなんとも言えない
喫水線の意味としては、静水面に船が浮いている時の、水面と船体が交わる部分の事

水を貯める施設において、いつも水面がキープされている部分の事を喫水面と呼んだりもするらしい(水によって壁の色が変わっている部分とか)

歴史を感じる分断、これもまた素晴らしい

分水嶺(ぶんすいれい)
本来は、水が分かれる場所にある山などを指す

この山を境に、北にいく水は〇〇川を通っていずれは日本海へ、南にいく水は××川を通って瀬戸内海に、という具合に水を分断する山

転じて、人生の別れ道や、大きな分岐点を意味する

おい格好良すぎるやろ

私はこの言葉を漫画「BLACK LAGOON」で学んだ

そう、確かに正しいさ、でも
分水嶺はもっと先。
激突の瞬間に見る分水嶺は、もっと先だ。

BLACK LAGOON 7巻

引いても状況は戻らない、ただ悪くなっていくだけだ。
ここが分水嶺、ダッチにはここで引き返せと・・・
繰り返し言われた。
ガルシア君。決めるのは、君だ。
君が結末を見たいというのなら
僕は最後まで付き合う。

BLACK LAGOON 8巻


読んだ事ない方にはさっぱりかと思いますが、BLACK LAGOONはとても素晴らしい漫画であるとともに、「分断」を意味する言葉も、分断的な状況もたくさん出てくる作品なので是非見ていただきたい

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