【エッセイ】嵐に限りなく近いが、嵐ではないナニカ
<10年前>
小学生の夢・第一位が「ユウチューバー」ではなく、「プロ野球選手」頃、平成21年の初夏の話です。
駆け出しのYOUTUBERというわけでもなく、ただ漠然と過ぎていく高校生活の暇つぶしでした。
ガラパゴス携帯で撮影した一つの動画をYOUTUBEというプラットフォームに載せて、世に放つ時がきたのです。
我ら3人は、普段の3倍、「お前らそんな顔つきできた?」と、尋ねたくほどの真面目な顔で会議に挑みました。
「動画はアップして終わりじゃない。
再生回数が増えてこそや」
「10、は欲しいよな」
「10回は余裕やって~」と、安堵の声がありましたが、
「いや、`10万`は欲しい」という返しには、安定の絶句。
さらには「10万は目標が低い、最低でも1億や」と、高すぎる目標を掲げる者もいます。
むちゃくちゃな目標を掲げている高校生達ですが、顔は至って真剣です。
「けど、1億再生されるには、俺たちの力だけじゃ足りん。
動画のタイトルを工夫せなあかん」
「なら、`嵐`の力を借りようぜ?
タイトルに、`嵐`をつけたらええねん」
「せや。人気絶頂のアイドルに乗っかろう」
「`嵐`っていう言葉をタイトルにつけることで、嵐目当てのユーザーを俺たちの動画に連れ込むってことか!」
「せっせ、せいや。」
「じゃあ、動画のタイトルは、`嵐`?」
「いや、それは直接パクりすぎや。何の動画かわかれへん。
「やや嵐、は?」
「それは`はねるの扉`で登場してたよ」
「わかった!わかった!!
動画の主役は、男なんやから、`嵐のような男`ってのはどうや?」
「`のような`?
そのニュアンス解釈が難しいなあ。
嵐に限りなく近いが、嵐ではないナニカ、って意味か?」
「そうともとれる。
ただ、この`のような`はこういう意味や。
全世界を若い男女、年老いた男女の4つにわけて、
嵐を若い男に分類する。
この動画のようなは、その分類上の嵐、に似ているってことやな」
「憲法解釈みたいなこじつけやな」
「まあ、気にするな。
`のような`でいこうや。
嵐に似てるけど、嵐じゃない」
「これで、嵐目当てのユーザーがホイホイと俺たちの動画を観にくるぞ~」
「でもさ。
そのユーザーは嵐の動画を見ようとしてるわけやん?
嵐かなって動画を観て、全く嵐じゃ無かったら、相当ショックやで?」
「たしかにな。
じゃあまず、この動画の登場人物を確認するか。」
「登場人物の1人目は、男子高校生や」
「性別と、年齢は、まあ嵐っぽいよな。
顔は麒麟の田村やけど、そこは画像が粗いからごまかせる」
「2人目は、通りすがりのおっさん警備員」
「その人は男?」
「おっさんやからな、男や」
「年齢はさておき、性別は、嵐と同じやから、まあ嵐のようなもんや…」
「ラスト一人、3人目は。
通りすがりの、おばあちゃん」
「あかん。人数も性別も、全く`嵐`じゃない」
「……….」
SEOのSも知らない、15歳の浅知恵とはこのことです。
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<13年前>
「らぶそーすうぃーとはさ、至高よ」
「まーきの」
「頭上に悠然とはためく、漠然とした夢を掲げ…!」
「それ、サクラップやん!!」
「感謝感激??」
「雨、嵐!」
中学生男女は、嵐に夢中でした。
そんな嵐も、2020年には活動を休止します。
長い間、ご苦労様でした!
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