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干支にまつわるエトセトラ

 2023(令和5)年が明けました。明けましておめでとうございます。神戸新聞を長年ご覧いただいている読者のみなさんはお気付きですが、毎年正月三が日は、その年の干支(えと)特集が掲載されています。県内各地から干支にまつわるさまざまな記事が紙面を飾ります。
 今年の干支は卯(ウサギ)です。新型コロナウイルスの猛威はまだ収まりません。世界中で争いは絶えず、物価高で足元の暮らしも厳しさを増すばかりです。だからこそ、その愛らしい姿に癒やされ、飛躍するイメージにあやかりたいものですね。ド・ローカルがウサギにまつわるエトセトラをお届けします。

仲良く並んでサルが「卯」を描く

 洲本市畑田組の淡路島モンキーセンターで餌付けされているニホンザルが、今年の干え支と「卯う」の文字の形に並ぶ「サル文字」を披露した=冒頭の写真。
 群れの中の序列に関係なく隣り合って餌を食べることを許す洲本のサルならではの優しさ」の成せる芸。広場で延原利和センター長が餌の麦をまき始めると、一目散に駆け寄り餌をほおばるサルたち。体を寄せ合い、瞬く間に描き出された。
 同センターは、野生のサル約350匹を餌付けしている。サル文字は約40年前、延原さんが仲良く隣り合って餌を食べるサルが多いことに気付いて描かせ始め、年末恒例になった。毎年練習が必要といい、昨年月初旬から約回練習したという。延原さんは「回数を重ねるとサルたちもだんだん思い出すみたい。卯は1画目の払いの位置が難しかったが、きれいに描けた」と話した。サル文字の様子はホームページで公開中。

(2023年1月1日神戸新聞朝刊)

癒やし求めファン続々 ラビットカフェ

ラビットカフェ=神戸市東灘区

 マンションが立ち並ぶ神戸・六甲アイランドの一角に、「ラビットカフェ  リン&マーシー」はある。メーカーなどを退職した伊藤圭さん=神戸市東灘区=が昨年4月に開いた。
 クリーニング店併設の店内でウサギを眺めながらコーヒーなどを楽しめるほか、ガラスで仕切られた触れ合いスペースも。伊藤さんが1匹ずつ芝生の上に放し、それぞれの性格や触り方を教えてくれる。ソファに腰かけていると、垂れた耳が特徴の品種「ロップイヤー」で、ふわふわな毛並みのシームちゃん(11カ月)が膝に跳び乗ってきた。
 乾燥させた牧草やリンゴの皮を手に声をかけると、ぴょんぴょん近づき、
もぐもぐ。立ち耳の「ネザーランドドワーフ」のアルレシャ君(2歳)は好
奇心旺盛で、前足をそろえて立つ姿はピーターラビットにそっくりだ。と
もに生後2カ月の子ウサギ、はく君、てまりちゃんも最近仲間入り。あられ君(11カ月)はシームちゃんに恋しているんだそう。
 22年前、「娘のために」と足を運んだペットショップで、子ウサギのリン君とマーシー君に出合った伊藤さん。以来、25匹を家に迎え、繊細で寂
しがり屋なウサギたちに愛情を注いできた。店には関西一円からファンが癒
やしを求めに来る。伊藤さんは「お世話をしても余りある楽しさをくれる。
せっかくの卯(う)年。ぜひ触れ合って魅力を知って」。正午〜午後6時。
火曜と水曜、第1、3金曜定休。

(2023年1月1日神戸新聞朝刊)

幸運もたらす四つ葉探して

白いウサギを描いた巨大絵馬=西宮市大社町

 西宮市大社町の広田神社では、2匹の白いウサギを描いた縦1・8㍍、横2・8㍍の大絵馬が拝殿前に飾られている。年末まで見られる。市内に住む墨絵日本画家の武井香璋(こうしょう)さん(62)が原画を手がけ、昨年月下旬に奉納した。
 鳥居の向こうに輝く夕日と、神社に伝わる宝物の水晶「剣珠(けんじゅ)」を重ねて描き、鳥居前にたたずむウサギを神々しい光が包む構図になっている。ウサギの足元にある草むらには、幸運をもたらすという四つ葉のクローバーを4本だけ潜ませた。卯(う)年の「う」にかけて「願う」「かなう」「整う」「祝う」という四つの幸せが成就するように―との思いを込めたという。武井さんは「ぜひ参拝して絵馬を眺め、幸せの四つ葉を探してみてほしい」。広田神社への絵馬奉納は、父で墨彩画家の故・武井泰道さんが2013年の巳(み)年から始め、年の戌(いぬ)年から長女の武井さんが引き継いだ。来年の辰(たつ)年を描けば親子で干支(えと)が一巡する。

(2023年1月1日神戸新聞朝刊)

 日本では室町時代、オランダ人が、アナウサギを家畜化したイエウエサギ(カイウサギ)を持ち込み、ウサギの飼育が始まったとされています。広まったのは明治以後といい、食肉用や毛皮として利用されました。最近は、ペットとして人気を集めます。県内の動物園などでも、いろいろな種類を見学したり触れ合ったりすることができる一方、人に飼いならされたイエウエサギとは別に、野生のノウサギも、兵庫の野山に生息しています。
 12年前のウサギの干支特集から抜粋しました。どうぞ。

ノウサギは 国内に4種 その生態は

県立人と自然の博物館=三田市

 動物園などで飼育されているウサギや、家庭のペットとは別に、兵庫の野山には野生のノウサギがすむ。その生態について、県立人と自然の博物館(三田市)の研究員で、卯(う)年生まれの北村俊平さん=植物生態学=に聞いた。
 ノウサギはニホンノウサギともいい、ウサギ目ウサギ科。ノウサギ属は、改良されペットとして飼育されるアナウサギ属とは異なる。国内には、野生化したアナウサギを除き、北海道のエゾユキウサギや、原始的なアマミノクロウサギなど4種類が生息する。
 体長は50センチ前後で、体重は2・5キロほど。全国の野山にすみ、寒冷地のウサギは冬になると毛が白くなる。県内でも、市街地を除くほぼ全域で見られる。
 樹木の皮や若芽、草などを食べ、農業被害を引き起こすことも。警戒心が強く、人の目に直接触れる機会は少ない。巣穴は作らず、草地のくぼみなどで、通常2匹の子どもを産む。
 ちなみにウサギを「1羽、2羽」と数えることがある理由は、獣を食べることが禁じられた時代に鳥として数えたため―など諸説があるという。

(2011年1月3日神戸新聞朝刊)

体重3トン 姫路・安志稲荷神社のわらウサギ


安志稲荷神社のわらうさぎ=姫路市安富町

 朱色の台に鎮座するのは、稲わらでできた巨大なウサギ。姫路市安富町の安志稲(いな)荷(り)神社(安志加茂神社)では毎年、干支にちなんだ巨大な飾り物が参拝客を迎える。
 人を楽しませるのが好きだった2代前の宮司が発案し、巳年の1977(昭和52)年に始まった。今回も地元工務店が1カ月半かけ、大小2基を作った。
 神社前には、中国自動車道をまたぐ朱色の橋がある。1年目は蛇が橋に絡み付く格好だったため「各方面から『ドライバーが驚いて危ない』と注意されたそうです」。
 大きい方は高さ8メートル、幅5メートル。〝体重〟約3トンと重いが、宮司は「ウサギにあやかり飛躍の年に」。

(2011年1月1日神戸新聞朝刊)

ピカピカの白映える出石焼のウサギ

純白色が映える出石焼の置物=豊岡市出石町

 おっとりとした表情が見る者の心を和ませる白ウサギの置物。国指定伝統工芸品の出石焼(やき)が誇る「純白色」が映え、澄み切った1年の始まりを予感させる。
 18世紀末に豊岡市出石町で良質の陶石鉱が見つかって以来、県内では珍しい白磁器として重宝されてきた出石焼。同町内町の製陶所では毎年、縁起物として干支の置物を作り、北は北海道から南は沖縄まで、全国から発注を受ける。昨年も約900を焼いた。
 石こうの型に、砕いた陶石を流し込んで乾燥させた後、素焼きし、上薬を塗って1300度で本焼き。厚さ3ミリほどに仕上がる。ピカピカに輝くウサギを前に、同製陶所代表は「今年は安定、安泰の年になるよう願いました」と話した。

(2011年1月1日神戸新聞朝刊)

400年のいぶし瓦に元気なウサギ

ウサギを描いた干支瓦=南あわじ市

 400年の歴史を持ついぶし瓦の産地、南あわじ市津井の瓦製造業「ミハラ」が、子どもを守ろう―と力強く飛び跳ねるウサギを描いた「干支瓦」を制作した。
 直径12センチ、重さ400グラム。鬼瓦にはめ込む「家紋瓦」の工法を生かした干支瓦づくりは16年目で、ウサギは2回目の登場になる。前回の1999年は前年に開通した明石海峡大橋をバツクに盛り込んだ。
 今年の作品に社長は「ウサギのように元気で、いぶし瓦のようにきらりと輝く1年に」との願いを込めた。

(2011年1月1日神戸新聞朝刊)

 最後はウサギにまつわる昔話です。

退治された兎を祭る塚 香美町の昔話

兎の塚古墳。兎の霊を祭ったとの昔話が残る=香美町村岡区福岡

 鉢伏山の北東に広がる香美町村岡区の「兎塚(うづか)」は、スキー場などで知られる雪深い地域。1955(昭和30)年まで兎塚村だった。地名の由来となった昔話が残る。
 森の奥の大きな池に大蛇がすみ、人や牛、馬を襲って、恐れられていた。時の天皇から討伐の命が下され、大蛇は、大蛇の味方をした年老いた3匹のウサギとともに成敗された。ところが兎がお化けになって暴れ、人々を困らせたため、3基の塚を築いて祭ったという。同区福岡の2基と八井谷の1基がその塚とされる。
 地域の歴史に詳しい同区福岡の森清さんは近所の塚について「昭和の初めごろまで、地域の住民が集まってお祭りをしていたらしい」と話す。塚は現在は空き家となっている個人の土地にあり、「かつてその家の住人から『ウサギを飼うとすぐ死ぬし、食べるとあたった』と聞かされた」と森さんはいう。
 福岡のもう1基の塚は「兎の塚古墳」。詳細は不明だが、内部に横穴式の石室がある。「兎は大和朝廷に討たれた土地の豪族だったのではないか」。そう話す住民もいる。

(2011年1月4日神戸新聞朝刊)


<ド・ローカル>
 1993年入社。毎年正月三が日に紙面を飾る干支特集は、一体いつから始まったのか調べてみました。スタートは2002年1月1日の紙面でした。以来21年の「定番企画」となっています。各支社総局が毎年、四苦八苦しながら見つけてくる干支特集。その苦労あってお正月紙面ができ、多くの同人がお正月休みをとれるのです。感謝、感謝です。

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