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「おでん」をなぜ関西では「関東煮」と呼ぶのか

 だし汁が染みた大根やがんも、卵。ごぼ天や厚揚げ、ちくわといった練り物が存在感を放ちます。まぎれもなく「おでん」ですよね。いやちょっと待ってください。兵庫県北部出身の私、ド・ローカルは、今でこそ「おでん」と言いますが、子どもの頃、祖母や母は「かんとうだき」と呼んでいた記憶が鮮明に残ります。関西出身の同僚や知人に尋ねてみても、大半が「関東煮って言う、言う」と口をそろえます。なぜ関西ではおでんのことを関東煮と呼ぶようになったのでしょうか? その由来を調べてみました。

創業100年の老舗かまぼこ店が「関東煮酒場」オープン

自家製の練り物を素材にした関東煮=「関東煮酒場 くろかま」

 創業100年を迎える老舗「黒田かまぼこ商店」(神戸市須磨区飛松町2)が、自家製の練り物を素材にした「かんとうだき酒場 くろかま」を板宿西部市場にある本店近くにオープンした。20種類の具材に加え、そのだしを使ったラーメンなどが人気を集めている。
 同商店は、関東大震災の翌日の1923(大正12)年9月2日に創業。蒲鉾やさつま揚げ、練り製品の製造・販売を手がけ、板宿西部市場本店のほか、JR新長田駅前などに店舗を展開する。
 今年、創業100年の節目を迎えるのに合わせ、本店2棟隣の元焼き鳥店を改装し、以前から計画していた関東煮専門店を5月にオープンした。
 神戸は練り物発祥の地とされ、約1800年前、生田の森に立ち寄ったじんぐう皇后が魚肉のすり身を矛の先に塗りつけ、焼いて食べた、とされる碑文が生田神社に残る。
 「関東煮」としているのは、関西では昔、田楽を「おでん」と呼んでいた文化があったことや、関東大震災をきっかけに関西に移住した関東人が、関西の薄口しょうゆを使って作った練り物の煮物を「関東煮」と呼ぶようになり、その名が神戸でも定着したという。
 くろかまの看板メニューはもちろん、自家製の20種類の練り物だが、常連客の人気を集めているのが、「おでんラーメン」。関東煮のだし汁が麺とからみ合いしめにぴったり。また、市場内の豆腐店の豆腐料理や八百屋さんのトマト、和菓子店のスイーツなどの食材も魅力の一つだ。県内外の地酒も数多く取りそろえている。
 同商店4代目の黒田浩之さん(49)は「地域を元気にする。そして神戸発祥の練り物文化を守っていくために始めました。多くの人に味わってほしい」とPRする。不定休。午後5~11時。予約・問い合わせはTEL080・4823・1923

(2023年7月4日付神戸新聞朝刊)

 店内を見渡しながら、ユニークな張り紙を見つけました。関東煮の呼び方の由来が書かれているではないですか。記事にも、下の写真の記述にもありますが、関西では昔、「田楽」を「おでん」と読んでいたことに驚きました。こんにゃくという共通素材はありますが、まったく似ていない食べ物なのですが…

諸説ある関東煮の由来

 「関東煮」と呼ぶようになった由来は、諸説あるようです。
   ①「関東から伝わった煮物」という意味でこの名がついたという説
   ②関東大震災をきっかけに関西に移住した関東人が広めたという説
   ③江戸時代に関西を訪れた中国人が「かんとん」として広めたという説
 「関東煮酒場 くろかまで」は②の説を伝えています。

味付けに違いも

 関東の「おでん」と関西の「関東煮」。最も大きな違いは、濃い目にしっかりと味を染み込ませる「おでん」に対し、「関東煮」は関西特有の薄口しょうゆを使った甘めの味付けになっているところだと言われています。

はんぺん、ちくわぶを知らない関西人

 おでんの中身も関東と関西では異なります。関西では「クジラ肉」を素材にしている店舗のほか、「牛スジ」は欠かさず入れるお店があります。一方、関東では「はんぺん」や「ちくわぶ」が入っています。「ちくわぶ」を知らない関西人も多いのではないでしょうか。ちなみに私は学生時代に東京で暮らし、初めて出合いました!

【番外編】神戸が練り物の発祥の地!!

特大かまぼこを奉納するてっちゃん

 「かまぼこの日」とされる11月15日、練り物メーカーのカネテツデリカフーズ(神戸市東灘区)が、同市中央区の生田神社に特大のかまぼこを奉納した。
 かまぼこが初めて文献に登場したのは、平安時代の1115年。関白藤原ただざねの転宅祝いの宴に出されたとあり、業界団体が11月15日をかまぼこの日に定めている。
 来年が最古の記録から900年となるため、業界の飛躍を願って初の奉納を決めた。同社の村上健社長や役員、キャラクターの「てっちゃん」が参列した。
 生田神社は「かまぼこ発祥の地」ともいわれる。約1800年前、生田の森に立ち寄ったじんぐう皇后がすりつぶした魚肉を矛の先につけて焼いて食べたとの伝説がある。村上社長は「神戸が発祥の地とされることに深い縁を感じる。900年へ向けて盛り上げていきたい」と話した。

(2014年11月16日付神戸新聞朝刊)

<ド・ローカル>
 1993年入社。私の好きな食べ物のベスト5に、練り物は入ってきます。6月下旬、「関東煮酒場 くろかま」にお邪魔し、さっそくいただきました。これまで食べた練り物の中でも、かなり上位にくるおいしさです。その秘密は秘伝の製法にあるようです。一度、みなさんも味わってみてはどうでしょうか?