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新聞社で使われる〝業界用語〟とは…

 こんちにはド・ローカルです。

 今回は趣向を変え、われわれ新聞社で使っている「業界用語」について書いてみたいと思います。〝隠語〟とでも置き換えた方が分かりやすいでしょうか? 警察、消防、役所など取材先の担当者が仕事で引用している言葉が、いつのまにか、新聞業界でも当たり前のように使われるようになりました。今回は警察取材で使われる用語を中心にご紹介したいと思います。

 新聞紙面の見出しや記事上には登場しませんが、ごくたま~に、事件原稿の容疑者の供述などに引用されることがあります。刑事ドラマで使われることがあるため、聞き覚えのある方は多いかと思いますが…
 それでは、まずは初級編から。

      警察=サツ   刑事=デカ   犯人=ホシ、マルヒ  

 さらにレベルを上げます。

      手錠=ワッパ  自宅=ヤサ   暴走族=マルソー

 それではここで一つ問題です。下記の新聞記事をご覧ください。

5億円事件
1994年8月6日付夕刊1面

 1994年8月6日午前、神戸市中央区の福徳銀行(当時)で現金5億4100万円が強奪される事件が発生しました。私は入社間もない駆け出しのサツ(警察)回り記者でした。兵庫県警本部を担当する先輩記者から社会部(現・報道部)に第1報(連絡)がありました。

  「神戸市中央区の福徳銀行でタタキチャカを所持。マルヒは2人」

 第1報に出てくるタタキは強盗、チャカは拳銃(短銃)、マルヒは犯人・容疑者です。こうした警察用語はサツ回りの先輩記者から引き継いだり、警察官から教えてもらったりして身につけていきます。

               ◆

 下記の写真は今年5月に発覚した尼崎市の汚職事件です。写真と記事を読んでどの言葉に警察用語が使われるのか見ていきましょう。

尼崎市職員贈収賄事件 市役所を県警が捜索

尼崎市 汚職

 尼崎市発注の水道事業を巡る贈収賄事件で、兵庫県警に収賄容疑で逮捕されたA容疑者=神戸市=が、尼崎市の水道建設課に配属された2018年以降に、贈賄側の土木工事会社(尼崎市)が同課発注の工事を計4件落札していることが、同市への取材で分かった。
 A容疑者は入札の前に、贈賄容疑で逮捕された業者側に設計金額を漏らした疑いがあり、県警はこれら4件の入札の経緯も調べる。
 尼崎市などによると、同社は18年以降、市発注の工事を6件受注。うち4件が配水管の敷設工事や応急給水管設置工事などで、A容疑者が同課に配属されてからの工事だった。A容疑者は工事の使用材料や積算金額などを検算する同課の技術職で、設計金額を含めて入札に関わる全ての数字を把握できる立場にあったという。
 県警は、A容疑者が勤務していた尼崎市上下水道庁舎と、市本庁舎を捜索。またA容疑者と、贈賄容疑で逮捕した同社社長ら2人を送検した。
 3人の送検容疑は、同市が2020年12月に行った「応急給水栓設置工事」の一般競争入札で、事前に設計金額などを同社に教えた見返りに、ルイ・ヴィトン製の高級財布2個(計26万4千円相当)を授受した疑い。

(2021年5月14日付夕刊)

  分かりましたでしょうか? この記事には2つの警察用語があります。まず一つ目は贈収賄事件=汚職事件です。汚職事件のことを「汚」の「さんずいへん」から「さんずい」と呼びます。
 もう一つは警察が行う家宅捜索です。上記写真は兵庫県警が尼崎市の水道建設課に入るところを撮影した写真です。警察用語では家宅捜索のことを「ガサ」と言います。

 一方、薬物捜査の際にも業界用語はよく使われます。

覚醒剤密売団 数十人を逮捕 容疑で兵庫県警 神戸拠点、中心人物も

 覚醒剤を所持したなどとして、兵庫県警が覚醒剤取締法違反の疑いで、住所不定の無職の男(45)を逮捕していたことが捜査関係者への取材で分かった。男は神戸市を拠点とする大規模な覚醒剤密売グループの中心人物とみられるという。県警はこれまでにグループのメンバーや仕入れ先、客ら数十人を逮捕しており、組織の実態解明に向け、詰めの捜査を進めている。

▼県内最大規模、暴力団が関与

 ある捜査員は、男らのグループについて「県内の密売グループでは、最大級ではないか」と指摘。近年、急速に勢力を伸ばし、県警が数年がかりで捜査していた。東京などの大都市から薬物を仕入れ、兵庫を中心に全国の客へ売っていたとみられるという。
 捜査関係者によると、県警は今年1月、男を神戸市内で職務質問し、覚醒剤を所持していたとして覚醒剤取締法違反容疑で逮捕。覚醒剤のほか大麻入り植物片、モルヒネを含む錠剤の所持も確認したという。
 県警の裏付け捜査を受け、神戸地検は男が違法薬物の密売で生計を立てていたなどとして、今年9月、より罰則の重い麻薬特例法違反容疑で起訴した。
 起訴状によると、男は2017年7月~20年1月、兵庫、岡山県内で覚醒剤や大麻を多人数に売り渡すなど、薬物の密売をなりわいにしていたとされる。18年6月に札幌市内の人物に覚醒剤約45グラムを45万円で販売するなどした疑いもある。
 捜査関係者によると、暴力団の関与も明らかになっている。県警は今年5月、覚醒剤取締法違反の疑いで、住所不定の暴力団関係者の男(60)を逮捕。岡山県内の組事務所も捜索した。暴力団関係者者の男は、無職の男が逮捕される直前、覚醒剤約14グラムを譲り渡していたなどとして、同法違反罪で起訴され、神戸地裁で懲役3年6月の有罪判決を受けている。

<2020年10月29日付朝刊>
 

 これはみなさんご存じだと思います。そう「覚醒剤=シャブ」です。また、記事では暴力団と書きますが、我々は「マル暴」と呼んでいます。
 ただ、薬物犯罪は、時代を重ねるごとに変化していきます。次の記事をご覧ください。

2ちゃんねる 違法情報放置 覚せい剤は「白」、大麻は「野菜」… 薬物取引で隠語使う

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(2012年5月10日付夕刊から)

 覚せい剤は「白」、大麻は「野菜」。違法情報の書き込みの多くが放置されていたインターネット掲示板サイト「2ちゃんねる」。隠語を使って書き込みし、実際に覚せい剤を売買していたケースも相次いで発覚している。
 昨年5月には京都府警が「白専門店」などの表現で覚せい剤購入を持ち掛ける文章を書き込んだとして覚せい剤取締法違反(広告の制限など)の疑いで男を逮捕。実際に7人に売り付けていたことを確認した。
 2011年11月には神奈川、香川両県警が同法違反(営利目的所持)の疑いで男女11人を現行犯逮捕。顧客を募る手段として書き込みを使い、2011年5月からの約半年間で延べ約千人に覚せい剤を売りさばき、約4千万円を売り上げたとみられる。
 2ちゃんねるも削除のガイドラインを設けており、著名人ではない個人を特定する誹謗(ひぼう)中傷や裁判所が削除するべきだと判断した場合などは削除するとしている。しかし、違法薬物に関する書き込みについては基準を明らかにしていない。
 2ちゃんねるのサイトによると、同サイト内で削除する権限を持つのは「削除人」と呼ばれるボランティアスタッフ。削除依頼を受け付ける窓口はサイト内の専用コーナーに書き込むかメールを送る方法しか明示されていない。
 警察庁の担当者は「そもそも削除依頼のシステムが生きているのかどうかも分からない」と指摘する。

 いかがでしょうか? 覚醒剤は「白」。大麻は「野菜」 ネット社会になり、隠語は広がりを見せつつあるように感じます。

 最後に新聞業界で使われている警察用語の一部をおさらいしましょう。

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 <ド・ローカル>1993年入社。警察署を振り出しに兵庫県警本部担当、警察担当デスクなどサツ回り歴は10年以上です。駆け出しのころは、飛び交う隠語にチンプンカンでした(笑)。警察現場を離れて久しいので、今でも取材現場で頻繁に使われているのか? 分かりませんが…

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