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新兵庫〝珍百景〟Ver.3

 「何だ!」。上記のような光景を目にすると無視して通り過ぎることができないのが新聞記者の性(さが)なのです。だれが、何のために、こんなものを作ったのか? 知りたくて、知りたくて、知りたくて… 
 お馴染みのコーナーとなった新兵庫〝珍百景〟の第3弾。今回はまちを歩いて見つけた奇妙な「オブジェ」「洋館」「駅」「展望台」を、ド・ローカルが一挙に紹介します。

一生懸メェ~見守ってます 小児科の〝ヒツジ〟


 神戸電鉄道場南口駅(神戸市北区道場町日下部)前で、建物の中をのぞき込む怪しげな〝動物〟が! 近づいてみると、ヒツジが前足を窓にかけ、後ろ足を必死に伸ばして立っている。餌を探して都会に迷い込んだのでは―。
 ヒツジの視線の先は、小児科医院の待合室。院長は「子どもが病院を怖がらないようにしたくて」とオブジェを置いた理由を明かす。このほか、キリンやパンダの像もあり、まるで動物園さながらの光景が広がる。
 窓に一生懸命寄りかかるヒツジの後ろ姿が何ともけなげだ。「みんなと会えるのメェ~っちゃ楽しみ」。そんな声が聞こえた気がした。

(2019年11月7日神戸新聞朝刊)

街に溶け込む 奇妙な洋風窓 実は変電所

関西電力の変電所

 通り過ぎた後、どうも気になり振り返って凝視した。神戸市長田区の地下鉄西神・山手線上沢駅近く、囲いの奥に見えるクリーム色の建物。一見、洋風窓に見えたのだが…。
 建物は関西電力の会陽(かいよう)変電所。広報室によると、阪神・淡路大震災後の区画整理の際、「周辺の住宅街に溶け込むようなデザインに」と1996年に改修。変電所の多くは設計上ほぼ窓がないが、無機質さを少しでも和らげようと、窓を描いたという。
 「レトロ調で水平垂直かつ自然な色合い」(同社)。だまし絵なのに実直すぎるデザインがかえって存在感を発揮していた。

(2017年1月11日神戸新聞朝刊)

阪急? 阪神? どっちやねん 西宮「国道駅」

阪急電鉄の阪神国道駅

 うん? 西宮市内の国道2号を車で走っていると、目が点になった。国道を南北にまたぐ線路の高架橋に「阪急 阪神国道駅」の文字が。「阪急なんか阪神なんか、どっちやねん!」と、通るたびに突っ込みを入れてしまう。
 答えは「阪急電鉄」の今津線にある「阪神国道駅」。ややこしい。それなら駅名の「阪神」は阪神電車ではなく、西宮市を含む阪神地域の意味か…と勝手に想像したが、残念ながらアタリのようでハズレだった。
 阪急電鉄によると、駅は1927(昭和2)年に開設された。実は駅前の国道2号が「阪神国道」と呼ばれ、それを駅名に取ったというのだ。知らなかった…。当時社内でどんなやりとりがあったかは分からないらしいが、おかげでスッキリしました。

(2022年1月20日神戸新聞朝刊)

日本で2番目の逆さの世界とは 洲本

洲本市五色町下堺

 「日本で2番目の逆さの世界のぞき台」という名の展望台が、洲本市五色町下堺の公園にある。どうやら股(また)のぞき台のようだ。
 周囲はのどかな田園地帯。何が見えるのか。「2番目」とは大きく出たような、控えめなような。「2位じゃだめなんですか」なんて政治家の言葉もあったけど。
 住民団体役員の藤野文一さんに聞けば、設置して約10年になるそう。「股のぞきで有名な京都の天橋立に次ぐ景色だぞという遊び心」と笑う。「地元の美しい風景をいろんな角度から楽しんでほしい」とも。春には、菜の花畑とサクラ並木にこいのぼりを連ねる人たちの郷土愛だった。
 天橋立は逆さにすると竜が天に昇るように見えるとか。さて、ここでは―。一つ試してみよう。想像力のままに。

(2021年9月16日神戸新聞朝刊)

<ド・ローカル>
 1993年入社。今回紹介した4本は神戸新聞地域版で30年以上続くロングセラーコーナー「まちをあるけば」からです。速報でも、特ダネでもありませんが、記者たちが自分の足で街を歩き回り見つけた秀逸なネタです。落ちがあるもの、ないものありますが、そのあたりは温かく見守ってください。

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